ぷろろおぐ そのに
どうなる主人公。
あの日。
あの日の暑さは尋常じゃなかった。
まあ仕方ない、クーラーぶっ壊れるわ、扇風機の羽が取れるわで冷やすものがなかったんだから。
まあそれはいいとして。
とにかく俺は、そんな灼熱地獄の中、デパートの前に並んでいた。
……目的?
そんなもん、新作アクション塗りゲーを買うために決まっている。
というか本体との限定セットだ。
え?あの今人気の某塗りゲー(イカが主役のス…ゴホッ)だよ。
まあそんで、並ぶのはいいが、暑いし、人は多くて………。
まあ、用を済ませに行けない状況だった。
そう、ここでトイレに行けば並び直し。だがもう………!!!!
――結局、顔面を赤くして近くの神社、姫桜神社に駆け込んだ。
そこは家も近く、幼馴染の神社だったためによく知っているし、遊びに行くときはなんとなくしなけりゃいけない気がして、お参りもしていた。
そしてそこには、狛犬の代わりに…。
狐が飾られている。
…………はずだったのだが、その日はなぜか、…突如として消えていた。
もともとは2体あったらしい。
幼馴染と出会う頃には1体は知らぬ間に消えていたという。
そしてその時、狐は台座を残して消えていた。
おかしい…が、もう俺の尿意は限界だったから、すぐ幼馴染………
いや、秋葉に伝え、駆け込んだ。
「悪い、ちょっとトイレ借りる!」
「…え、い、いいけど…」
用を済ませると、秋葉も気づいたらしく、境内の奥の神主、秋葉の父に狐について伝えに行ったみたいだった。
神宮寺秋葉は今年で16の桜京高校1年だ。
俺は2年。
校風も自由で緩い。
その割にワルが居ないのは、少しランクが高めの高校だからだろうか。
まあ平和だ。
俺は学力は普通だが、何か英検2級だからと推薦合格した。
英語だけは取り柄なのだ。
どうやら英語科目が優先扱いされるっぽい感じだ。
幼馴染の秋葉は内気めで、自己主張が少ない。
だが慣れた相手には結構な毒舌を吐くこともあるが、俺には…懐いているような感じなのか。
秋葉は結構可愛い。
ただいつも俯いているからよく分からない。
まあ他の奴らが顔だけで近づくよりマシだ。
んで、秋葉はそんなに頭がいい感じではないが、そこそこだ。
それでも、県14校中6位の桜京に必死に入ってくれた。
いや、家から近いからか…。
………………正直好きだ。
普通な俺にはちょっとハードルが高い。
さて、戻ろうか。
その後、秋葉と俺で改めて神社内、というか狐像の前に来た。
やはり、跡形もなく消えている。
ハンマーなどで砕けば少しは破片が残るはずだが、欠片さえない。
スポッと、狐だけ切り取られたみたいだった。
狐はご丁寧に、赤い羽織と金色の鎖が掛けられて、頭には狐面があった。
狐の横に狐面があってちょっとおかしかった。
その切れもない。
いや…物理的にやばかった。
そして、せめて、とお参りだけすまそうと拝殿の鈴を2人で掴み、鳴らした。
しゃららん、じゃらん。
『どうか、"狐"が帰ってきますように。』
祈り終えたときだった。
――突如として陣が現れた。
そして。
『――さあ、異世界の旅をご希望ですか?望んでいなくても強制的に送ります。どうかご武運を、そして良い旅を――!!』
澄んだ空気と女の声、そして俺達はパカリと口を開いたまま、眩い光に包まれた。
俺は1つだけ思っていた。
――まだゲーム買ってねえじゃねえかよおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!
そして、長い長い旅が、始まったのだ。
が…頑張れ、2人とも……(笑)