彼女の運命
僕は学校に着いた。
時刻は9時半。
だいぶ遅刻している。
僕は今まで遅刻をしたことがなかった。
なので学校に遅刻したのは今回が初めてだった。
僕は学校の裏から歩いて校門へ向かう。
少し冷たい風がほほにあたった。
僕はふと空をみあげた。
その日の空はとても綺麗だった。
あいつ(未来)に見せてやりたいな。
僕はそう思った。
空に月がうっすらみえる。とても綺麗だ。
僕は空の彼方で君が笑っている姿を想像した。
ほとんど違和感がない気がした。
けど、それと同時にふとこんなことが頭によぎった。
彼女は帰ってくるのだろうか?
もうそろそろお昼になっちゃうけど…。
もう学校にいるのかな?
もしいなかったら…
そう考えるととてつもない不安に襲われた。
そろそろ帰ってくるだろう。
そう信じてまた歩き始めた。
昼休みになった。
まだ未来は帰ってきていない。
不安に襲われながら僕はおそるおそる外へ出てみた。
ほんとはあのときみたいに屋上で僕を待っているのではないかと期待していたのだけど…。
外に出るとなにかが僕の前を横切った
姿が見えないくらい速かった。
(あれは何だったんだ?)
頭の中にそれしかない。
彼女も帰ってこないし朝は綺麗だった空も今は暗くなっていた。
なにか嫌な予感がした
背中が凍るような感じに襲われた。
もしかしたら…
未来が…。
その時、なにかが空に飛んでいくような気がした。
一瞬空が黒光りした。
それと同時に
(さがせ)
という本能が騒いだ
誰にもそのことを伝える余裕はなかった。
けど、今は未来のことが最優先だ。
僕は走って学校を出た。
しばらく走るとガラクタだらけの林に出た
前が見えないくらい霧がすごい。
足元もみえないから転びそうだし、地面がみえないからもし地面がなかったら落ちて死んでしまうかもしれない。
何が起こるかわからないという恐怖に襲われながらそこを探してると、見たこともない場所に出てしまった。
そこはさっきまでたちこめていた霧がなくなっていた。
ここはどこだ?
さっきまであった霧はどこへいったんだ?
戻ろうとしても戻れなかった。
先に進むことしかできない
どうやら迷ってしまったようだ。
辺りをみまわすとなにかが動いている様に見える所がある。
それと共にどこかから機械音が聞こえる。
キィーー
ガチャンガチャン…
なにがあるのだろう。
不安になった。
辺りを見渡すと小さな石が落ちていた。
その石はまわりになにもないからかもしれないが、とてもめだっていた。
とても綺麗な紅い石だ。
それをそっと手に持ってみた。
すると…!?
目の前に女の子があらわれた。
僕は目を疑った。
今までいるはずのなかった女の子がいたからだ。
その女の子のそばには小さな鳥がいる。
ちいさくさえずりながら女の子のまわりを優雅に飛ぶ。
「シオンおいで!」
女の子が小さな鳥を呼んだ。
僕はドキドキしながら鳥を目で追いかける。
その鳥はとても綺麗な色をしていた。
今まで見たこともないような綺麗な色だった。
僕が見とれているとその鳥は人の姿に変わって女の子の隣に座った。
僕は驚いてその場に座り込んでしまった。
すると女の子が話しかけてきた。
「驚かせてごめんね。
こんにちは。
私はアレンっていうんだ。
ここの番人をしているの。
あなたはだれ?名前は?
あなたには私が見えるの?」
僕は驚きを隠せずにいた。
彼女にも僕が見えているっぽい。
僕はあわててうなずいた。
すると女の子は
「あの…君?未来ってしってる?」
と聞いてきた。
僕は知ってる。
未来のことをなぜ知っているんだ?
なにか知っているなら教えて欲しいけど…。
けど未来は...。
とても辛い思いをしている。
だから他人から未来のことを聞くのはいやだった。
もし知らなかったらあれだし…。
未来のことを教えていいのだろうか?
教えても傷つかないでいてくれるだろうか…。
ぼくの頭にどんどん疑問がわいてくる。
僕が戸惑っていると、女の子はシオンになにかを伝えた。
するとシオンは鳥になってどこかへ行ってしまった。
ガチャ...。
ピッピッピッピッ...。
また機械音が聞こえた。
...。
機械音が消えるとシオンがなにかを引きずって帰ってきた。
「これ開けて
ぜったい驚かないでね。」
女の子は僕にいった。
ガチャ...。
...!!
僕が小さな箱を開けると中に未来が入っていた。
僕は未来を抱きしめた。
あの時の温もりはなくなっていた。
未来の体には沢山の管が繋がれていた。
その管が繋がる先から機械音がしていたようだ。
慌てて呼吸を確認する。
未来は息をしていない。
「未来!未来!」
何度も彼女の名前を呼んだ。
けど未来は反応しない。
僕は手に持っていた綺麗な石を握りしめた
その石は粉々になってしまった。
女の子は叫んだ
「だめ!それを壊すと...。」
もう遅かった。
既に壊してしまっていたからだ。
未来の小さな命は消えた。
もう守れる人はいない。
頼れる人もいない。
もう死んでしまおうか。
そう思った瞬間未来が苦しみ始めた。
透けた柔らかい体がだんだんかたくなっていく。
「ここは何処…?」
その声には感情がこもっていなかった。
体が機械のようになってしまっていたらしい。
そして、未来はまた動かなくなってしまった。
女の子は黙り込んでいたが、僕のかなしそうな姿を見てこう呟いた。
「さっき粉々にした石はね、その人の大切な人を
苦しめる石なんだ。
大切な人を辛いめにあわせる。
最悪の場合機械に近い体にしてしまうんだ。
そして...
機械に近い体になった人は戦争に使われる。
感情がなくなって使い捨ての兵器になる…
あの子いずれかは戦争に使われる。
実験体にもなる。
その実験は過酷なもので失敗しても何度も再生させられる。
苦痛にもがいても逃げ出そうとしても出来ないんだよ…
そしていずれか私のようになってしまうんだ。
再生が出来なくなる瞬間が出来てくるんだ。
精神的にだめになってしまう。
そうなってしまうともう助けられない。
だんだん透明になってきて見えなくなる。
その人に関する記憶は全て消されてしまう。
だから誰にも見えなくて、けど生きてる。
って存在になるんだ。
誰にもきづいてもらえない存在に...。
もう運命は変えられないよ。
けど、ある人が私にこう言ったんだ。
【自己嫌悪に陥ることも挫折感に浸ることも容易くはあるけれど意味はないんだ。最後まで諦めずに自分を信じて全力をつくせ。
そうすれば運命は変えることができるよ。】と…
彼女を信じれば救われるんじゃない?」
そう言って女の子は消えてしまった。
…。
辺りはとても静かになった。
僕は自分をうらんだ。
意識を無くした未来を抱きかかえて今まで通ってきた道を帰った。
何故かその時は道に迷わなかった。




