これから始まる悪夢の予兆
抱きしめたまま、僕は泣きながら君をみていた。
君はとても温かくて君の温もりが僕の心を落ち着かせてくれた。
トクン…トクン…。ゆっくりと心音が聞こえる。
君はまだ生きているんだ。
一生懸命頑張って今生きているんだ。
どんなに辛い思いをしても生きようとする。
そんな未来を僕は羨ましくおもった。
僕は寝ている君にこんなことを呟く。
「僕なんて平凡な日々を過ごしていただけで死にたいと思ってたのに…君は強いね」
僕が言いたくても言えない本心だ。
彼女の前では少し強がっていたけど、僕は本当は弱い人間なんだ…。
僕は君の頭を撫でた。
やっぱりとてもサラサラしていた。
髪と目の色は元に戻っていた。
服を着ずに抱きついてしまった僕はちょっとやばかったかも知れない。
未来が今目の前で裸で寝ているのだから。
肌の色はさっきと変わらない。
けど何故か幸せそうに眠る彼女をみてさっき見た未来だとは思えなかった。
僕は未来を起さないように服を着せた。
ピクッ…。
少し未来が動いた。
けど、また僕に寄り添ってねてしまった。
君の寝顔はとても可愛かった。
君の頬に僕は優しくキスをした。
(おやすみ。未来。)
心の中で未来に告げた。
未来に布団を掛け、僕は頭を撫でた。
さっきまで聞こえなかった寝息が僕の耳にまたきこえた。
スヤスヤ…。
その寝息につられて、僕も眠りについてしまった。
きみに抱きつきながら寝てしまっていた。
僕はその日不思議な夢をみた。
それは君が帰ってこなくなる夢だ。
君がまるで別人のようになってしまって、ぼくの手を振り払って何処かへ消えていってしまう夢だ。
なぜか寂しげな顔をしている未来。
そこで一度目が覚めた。
隣では未来がスヤスヤ寝ていた。
きっとそんなことはないだろう。
そう思いながら僕は未来の頭を撫でた。
ピクッ…。
未来が少し動いた。小さく伸びをしてまたねてしまった。
僕は未来を起こさないようにもう一度寝ることにした。
次の日...。
太陽の光に顔がてらされて目が覚めた。
とてもまぶしかった。
僕が起きると隣にはもう彼女は居なかった。
辺りを見回すと数枚の置き手紙があった。
「昨日はごめんなさい。
君に色々迷惑をかけてしまったね。
本当のことを話せたのは君が初めてだよ。
今まで誰にも話さなかった。いや、話せなかったから…。
そばに居てくれてありがとう。
ひとりじゃないんだ。っておもえた。
ずっと独りだって思ってたから…嬉しかった。
あなたと再会出来てよかった!
私はあなたに出会ってなにかまた変われた気がします。
えっと…あと、私はこれからまた人を助けにいってきます。
ちょっとここから離れているので一緒に学校は行けません。
ごめんね…。
星輝くん。
何かあったらまた助けてくれると嬉しいです。
ごめんね。我儘ばっかりで...。
本当にごめんなさい。
いってきます。
…。
また会えるといいなぁ。
きっと帰ってきます。
だから心配しないでね。
帰ってこれたらまた頭を撫でてくれませんか?
P.S.
あなたのお母さんには連絡を入れておきました。
勝手にごめんね。
朝ご飯は冷蔵庫の中に入れておきました。
温めて食べてください。
足りなかったら適当なものを食べてください。
この家から学校まではずいぶん遠いので、机に置いてあるお金
でタクシーかバスに乗って学校にいってください。
タクシーの番号は…○○○-○○○○です。
バスは、家の前から◯◯学校前で降ろして貰えば大丈夫です。
7時半頃に家を出れば間に合うと思います。
机の上に置いてあるお弁当持って行ってください。
えっと…タクシーで行くならみんなにばれないように学校の裏で降ろしてもらってください。
バスに乗るなら◯◯学校前で降りて少し進むと学校が見えてくるので、大丈夫だと思います。
遅刻したら職員室に行くこと!
私が生きていれば今日中に学校にいるとおもいます。
居なくてもきっと帰ってくるんで大丈夫です。
今日もいい1日が送れますように。
では!また!」
手紙を読み終わったころ、時計を見ると時計の針は8時をさしていた。
もう間に合わない。
僕は彼女を探したが何処にもいない。
生きているといいのだが…。
昨日あんなことを言って泣いていた君が人を救っている姿はとても想像できなかった。
改めて彼女のことがすごいなとかんじた。
僕は途中から彼女の字が震えているのに気づいた。
やっぱり不安なのかな…。
僕はちょっと心配になった。
けど心配しているようじゃ彼女が帰ってきた時に笑顔で笑って出迎えられない気がした。
だから少し気をおちつかせよう。
それでは、ご飯食べて学校に遅刻するとするか!
そう決めたからには急いで仕度をしてご飯を温めた。
おかずがとても多い。
しかも、全部手のかかる料理ばかりだ。
短い時間でこんなに作れたのはビックリだ。
いったい何時に起きたのだろう?
そんなことを想いながらご飯をたべる。
彼女の作ったご飯はとても美味しかった。
すべての料理が栄養バランスを考えていて、とても健康にいい食事だ。
僕は食べ始めてから5分で料理をすべて食べ終えた。
いつもならもっと時間がかかるのだけどね。
食器を洗ってていねいに水を拭き取り棚に戻した。
カチャッ…。
最後の1枚のお皿はとても綺麗な柄だった。
よく見ると小さく星が描かれていた。
その星が希望の光をもたらしているように思えた。
一息ついて携帯電話でタクシーを呼んだ。
僕は制服をきて外に出た。
日差しが僕を照らす。
周りを眺めながらタクシーが来るのを待った。
しばらくしてタクシーがきた。
忘れ物がないか確認してタクシーに乗り込む。
僕はのんびりと学校へ向かった。
(タクシーだけどね。)
これから悪夢が始まるとも知らずに...。




