後日談
最終話、先輩視点です
「眠い〜」
幹弘――ナナの先輩――は伸びをしてだらだらと起きあがった。今日は金曜日。学校に行かなくてはならない。
今日は部活があるし、顔出してから帰ろう。先々週と先週は休んだし、空手をやりたいし。なんてぶつぶつ言いながら幹弘は着替える。
「俺はいいけど……あいつ、生きてて楽しいのかな…」
そんな思いをふり払って、鞄を持って…朝食は食べないらしい…家を出た。
*
「中段の蹴り、始め!」
「一!」
構えの姿勢から腿をあげ、すばやく脚を振り切る。脚をつきながら拳を繰り出す。
「らぁっ!」
「二!」
身体を風が抜けるような感覚。何かが流れ落ちるような快感。靄が消え、開ける視界
「ああ、やばい。俺、やっぱ空手好きだ!」
幹弘はそんなことをいいながら練習に励む。空手部には、不審者の卵が多いらしい。
何度も恍惚としたように、架空の相手と対峙する。
「やめーーっ!…構えて。中段の回し蹴り、始め!」
構えから腰をひねり腿を上げ、そのまま脚を解き放つ。脚をつき、拳で風を切る。
「らぁっ!」
と、その時。
あの声が――桜井ナナの、声が――弱々しく、張りのないものになっている。次もその次も。
「桜井……?」
それに気付いた幹弘のつぶやきは、小さく霞むように消えた。
*
練習が終わり、部室でだべっていた。そんななか、何も言わず部屋を出て行くナナ。
練習中も、その後も、自分から幹弘に―――否、誰にも―――話しかけようとはしなかった。
その目は虚ろで、暗い雰囲気だった。まるで、生きていることそのものが辛いかのような。
「何もなかったなんてことは絶対ない。あいつは何でも顔に出すぎなんだ。」
なにがあったんだろう。と、首をひねるが幹弘には皆目わからない。
「なあ…どうしたんだ……なにかあったろ」
「いえ、別に。さよなら」
幹弘が呼び止める間もなく、ナナは出て行った。
なにも信じることができない。なにも肯定できない。果ては神まで自己満足の産物といった少女。
そんな桜井ナナの、成れ果てだった。
ここまで読んでいただけて、感謝感激です!
どうもありがとうございました☆
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これからも執筆を続けていきます。よかったらそちらもお読みください。…宣伝かよ(笑)
最後に、本当にどうもありがとうございました!
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