遊神論
なにやら戦争の本のようだった。
しばらく読み終わったその本を眺めて、ナナはばたりとベッドに倒れこんだ。そして小さくひとりごちた。
「神様ってなんなんだろう」
携帯を充電器からとって、アドレス帳を開く。
あの先輩に、メールを送るようだ。親指を驚くべき遅さで動かし、文字を打ち込んでいく。
『神様って、どんな人だと思いますか』
ぱたん、と携帯を閉じ、ベッドの上に一緒になって転がる。携帯ストラップを指で弄びながら、返信を待つ。
余談だが、ビジネストークのメールで、返信が早い人ほど自分に自信を持っている人が多いのだそうだ。まあそれは状況によってあるていど左右されるものだが。
「You’ve got mail!」
ナナは起き上がってから携帯を拾い、ぱかっ、と開いた。1分で返信するなんて、先輩の指の構造が見たいとか暇人とかなんとかぶつぶついいつつメールを見た。
『全てを創造し、全てを凌駕し、全てを愛する人。運命も何もかもを決めることができる存在』
即座に、と言っても遅々とした指使いでだが、それに返信する。
『いるんですか、そんな人。というより、神様って人なんですか』
『それができるから神様なんだよ。いや、逆だね。神様だからそれができるんだよ。神様は自分に似せて人を作ったから、まあ人とは似た形の存在なんだろうね』
ナナはそれを見てちょっと顔をしかめる。それから迷うようになんども打ち直しながら返信した。