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極・異常な高校生の筋肉無双烈伝  作者: 喪服.com
第2章 『異常な高校生と元勇者』
16/18

第13話『時をかける筋肉』

 「……さっきは取り乱してすまなかった 」


 コフィンの様子がおかしくなってから5分程経った。

 あの後、なんとかコフィンは正気を取り戻し、ユウイチと真千代と共に街の食堂に来ていた。


 「否ッッッ、ガツガツ、俺は一向に、バクバク、構わんッッッ!!! 」


 「食べながら喋るなよ…… 」


 朝食だというのに、相変わらずありえないほどの量を食べる真千代。厨房の奥から「食材が切れたァァァ!!!! 」という叫びが響く。


 「……この際だから、はっきりと話しておくか……クレイドルと私の事について…… 」


 コフィンは神妙な面持ちで、目を瞑り、過去を振り返る--。






※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 あれは、1年ほど前のことだった。



 「回想が長ぁぁぁぁぁいッッッッッッッッッ!!!!!!」


 「まだ私は何も言ってないだろう!!!!! 」


 突然、真千代が思いっきり叫び、コフィンの語りを強制的に中断させる。

 これにはコフィンも、全力のツッコミをかました。


 「サクサク行きたいんだサクサクッッッ、1分で纏めろッッッ!!! 」「なるほどッッッ」


 「空気読むこと覚えろお前!!……ん?なんか今…… 」


 ユウイチはふと、謎の違和感を感じる。なぜか真千代の声が二重に重なって聞こえたような気がしたのだ。


 「どうしたユウイチッッッ 」


 「……いや、なんでもない……コフィン、話を続けてくれ 」


 幻聴だろう、と違和感を振り払い、ユウイチはコフィンの方へと顔を向ける。


 「あ、ああ……まぁ纏めると、クレイドルと私は昔友達だったはずなんだが、なぜか殺されたという話だ 」


 「そんな重そうな話サクッと纏めてよかったのか…… 」


 ライトノベルにしたら軽く1部分くらいは補えそうなストーリーを、真千代の有無を言わさぬ要望(めいれい)で10秒にまで縮めてしまった。


 「まぁ案ずるな、さっきは取り乱したが、今度会ったら仕返しにぼこぼこのぼこにしてやる覚悟だ 」


 「おお……強いなお前 」


 「……けど奴のこと思い出したら急に寒気がしてきた……少し花を摘んでくる 」


 「今の威勢どこいったよ 」


 魔王なのに随分とオブラートに包んだ表現を口にし、コフィンが席を立ち、トイレへと向かう。


 「ムッ、ウンコかッッッ 」


 「筋肉の前にデリカシー鍛えようなお前な」


 と、そんな最高にデリカシーのない筋肉の塊にユウイチがプチ説教をしていると……


 ギィィィ……



 「……ここよね、反応があるの」



 飯屋の扉が開き、美しい白髪の少女が入店してきた。


 「お、おい見ろよ真千代、すっごい美人だぜ 」


 「知らんッッッ、誰であろうと(こころ)には劣るッッッ 」


 「誰だよ心って……っておい、こっちに…… 」


 店に入るやいなや、白髪の美少女はポニーテールを揺らしながら、座っているユウイチと真千代の元へと歩み寄ってきた。


 「そこのお兄さん方、少しだけいいかしら? 」

 「うん、どうしたんだい? 」


 猫かぶり発動。ユウイチの数少ない特技の一つは、美女の前ならば高速で猫を被れる所である。


 「私、人を探してるんだけど、今から言う特徴に当てはまる人の心当たりがあれば教えてほしいの 」

 「お安い御用さ、僕達でよければ協力するよ 」

 「『達』ッッッ? 」

 「いいじゃないか協力してあげようよ 」

 「ありがとう、え〜っとそれで特徴は……身長3m超えで……」

 「うん………うん? 」


 ユウイチは、違和感を覚える。3mを越える、人間。よくよく考えなくても矛盾しているその存在に、ユウイチは酷く覚えがあった。


 「全身おっそろしいぐらいの筋肉で覆われてて…… 」

 「真千代だそれ」

 「魔王アルバー……だっけ?を倒した噂がある……」

 「真千代だそれ!!! 」


 そうは、その特徴は、完全に真千代と合致するものだった。アキ○イターにでも問うてみたら、1問で看破されてしまうことだろう。


 「マチヨ……? その人が今の条件に該当するの? 」


 「うん、ていうかそこにいる 」


 「え……? 」


 チラリ、と、白髪の少女が真千代の方へ顔を向ける。


 「……………うわぁ本当だ!!!何この筋肉魔人!? 」


 「気づくの遅ぇよ!!! 」


 少女の節穴っぷりに、ユウイチも思わず猫かぶりをやめてツッコミをいれた。


 「えーと……マチヨ、だっけ? 」


 「人に名を尋ねる時はまず自分から名乗るのが礼儀だろうッッッ 」


 (真千代が正論言ってる…明日は槍が降るなあ)


 「ああ、そうよねごめんなさい、自己紹介が遅れたわ 」


 「分かればよいッッッ 」


 「私の名前はクレイドル・フィロス。貴方を探してここまで来たの 」


 「えっ 」


 「俺は真千代だッッッ、して、俺に何用だッッッ!? 」


 「いやいやいやいやいや 」


 少女が名乗ったその名前を完全にスルーする真千代に、ユウイチが思わずずっこけそうになる。


 「ちょ、ちょっとまってくださいねぇ〜……」


 「むっ!? 何をするユウイチッッッ」


 「いいからちょっとこっち来い!! 」


 ユウイチが真千代を席から立たせ、店の外へと連れて行った。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





 「……いきなりどうしたのかしら 」


 店の中に取り残されたクレイドルは、仕方なく空いていた席に座る。

 机に置かれたお冷を飲み、ふぅ、と息を吐く。


 「案外あっさり見つかったわね……」


 『3m超えの筋肉魔人』。

 まさかこんなに早く見つかるとは、クレイドルも思ってもみなかったことだった。というかそんな人間が存在すること自体、クレイドルも信じられないことだったのだ。


 「あの人から感じた凄まじい力……あの力なら、きっと…… 」


 その時、


 「……ん〜? マチヨとユウイチめ、私を置いて一体どこに…… 」


 店の奥から、可愛らしい少女の声が聞こえた。クレイドルは、『マチヨ』という名を口にしたその少女の方へと顔を向ける。


 「……えっ? 」


 そこにいたのは、クレイドルにとって、3m超えの筋肉魔人を発見したことよりも、遥かに驚愕に値する人物だった。


 「こ、こ、……コフィン……!? 」


 「む?……………………ひぃっ!? 」


 少女……コフィンが、自分の名を呼んだ少女へと振り向く。

 その瞬間、一気にコフィンの顔が青ざめる。それは当然の反応である。なぜならそこにいたのは--コフィンにとって、自分の仇だったからだ。


 「く、く、く、く、クレイ、ドル………!? 」


 ガタッ!!!


 コフィンがその名を呼んだ直後、クレイドルが勢いよく席から立ち、コフィンの元へと駆け寄る--!!





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





 「いきなりなんだユウイチッッッ」


 「なんだ、じゃねぇわ!! あいつの名前聞いただろ!? 」


 まさかの名前ガンスルーに、ユウイチはツッコミ力を限界まで振り絞って真千代に怒鳴りつける。


 「む?……確か、ウレイネルだったかッッッ? 」


 「ク、レ、イ、ド、ル!!! さっきコフィンが言ってたあいつだよ!!! 」


 「クレイドル……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あッッッ!!! 大変じゃないかッッッ!!!! 」


 「気づくのおっっっせぇ!!!脳みそ直径何ミリだお前!! 」


 ガムがへばりついてるのかと思うほどの頭の回転の遅さに、ユウイチが辟易する。


 「ならば今クレイドルとコフィンを会わせたら大変な事になるだろうッッッ、急いでクレイドルを連れ出すぞッッッ 」


 「おお……お前にも気遣いが出来たんだな」


 「当然だッッッ、俺は山梨県で一番が空気が読める男と評判だったほどだッッッ!!! 」


 「お前5分前に戻って自分の発言聞いてこい 」


 長くなりそうな回想を『1分で纏めろッッッ!!! 』と言って切り上げた男を、決して空気が読めると言ってはならない。


 「5分前ッッッ!?了解した、羅ァァァァァァァッッッ!!!! 」


 突然、真千代がいつもの気合砲を、空間に向けて放つ。



 ヴォォォン……



 するとそこに、直径5メートル程の大穴が現れた。


 「えっ!? えっ!? 」


 「ちょっと見てくるッッッ 」


 真千代が窮屈そうにしながら、空間の穴の中に入る。

 直後、中から『なるほどッッッッッッ!!!』という声が聞こえ、その後すぐに穴から出てきた。


 「『1分で纏めろッッッ 』と言っていたッッッ 」


 「待て待て何したんだお前 」


 「気合で時空に穴を開けて5分前に戻っただけだッッッ 」


 「はぁ?………あっ!!! さっきお前の声が重なって聞こえたのってもしかして……!! 」


 ユウイチは5分前、真千代の声が二人分聞こえていたような幻聴を聞いた覚えがあった。

 どうやら幻聴ではなく、本当に5分前に戻っていたようだ。


 「……真千代 」


 「なんだッッッ 」


 「お前やべぇやつだな 」


 「今頃気づいたのかッッッ!!! 」


 今更真千代のヤバさがわかった自分も、案外脳が小さいのかもしれない。

 ユウイチがそんなことを考えていると……



 『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!! 』



 店の中から、少女ものと思しき悲鳴が響いた。

 

 「コフィンの声だ……! もしかして

! 」


 「ぬぅッッッ!! ダラダラ喋りすぎたッッッ!!! 」


 最悪の可能性を懸念し、扉を開けて、真千代とユウイチが急いで店の中に入る。

--するとそこには、






 「コフィィィィン!!!よかったぁ!!!また会えたぁ!! よかっ、よかったぁぁぁぁぁ……!! 」


 「はっ、はっ、放せぇぇぇぇ!!!!クレイドル、放せぇぇぇぇ!!!!離れろォォォォォォォォォォ!!! 」


 「嫌よ!!! もう絶対離さないわ!! コフィィィィン……… 」







 「……えぇ……? 」


 「……どういうことだこれッッッ… 」


 そこには、真千代は勿論、ユウイチでさえ到底理解出来ない光景が広がっていた。

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