幸福の訪れを
最後に見たのは、青い空だった。
目が覚めたら、自分の姿も見えない闇の中をただひたすら彷徨っていた。
時折声がして、“何をしているの?”と聞かれる。
その度に「光を探しているんだ」と答える。
すると、クスクスっと笑い声がして、“光なら目の前にあるよ”と言われる。
しかし辺りを見渡しても見えるのは闇ばかり、
「どこにあるんだよ!」と聞き返すと、“貴方には見えないの?可愛そうに”と言われる。
その後はまた静寂が訪れる。
そんなことを忘れるくらい繰り返した。
そんな時、いつもと違う問が聞こえてきた。
“いつまでこんな所にいるつもりなの?”
「光が見つからないんだ。」
“君の目の前にある、君が光から目を背けているだけだよ”
「背けてなんかない!」強く言い返す。
“強すぎる光は濃い影を生む、光を見つけたいのなら手を伸ばしてみるといい。”
言われたとおり手を伸ばして見た。すると何かに手をつかまれ、引っ張られた。
そして、つかまれていた手が離れた。
“振り返ってごらん。”
さっきまで居たところに光が見えた。
「あんなに近くにあったなんて、何で気がつかなかったんだろう。」
光に向かって走り出そうとすると、体中に痛みが走った。
「なんで、さっきまではなんとも無かったのに・・・」
“君は、何でこんな所に居るの?”
「なんでって、何でだろう?」
自分がなぜこんな闇の中に居るのか理由がわからない。
なのに、光を見つけなきゃという想いだけはあった。
“君は真実を受け止められるかい?”
静かにうなずいた。
“ならば光に向かって進めばいい、何があっても歩みを止めてはいけないよ。”
「わかった」
光に向かって歩きだした。だけど痛みが体中を襲う。
「この痛みは何なんだ!教えてくれ」
痛みに耐えながら、歩きながら問う。
“その痛みは・・・・・・・・だよ”
肝心な部分が聞こえない。
“君が自分で確かめなければならない、ほら、光は待っててはくれないよ”
そういわれて気がついた。光が弱くなっているのだ。
“あの光が消える前にたどり着かないと・・・・・・・よ”
まただ、肝心なところだけが聞こえない。
「消える前にたどり着かないとどうなるんだ!」
“これ以上は、無理みたいだ。がんばって、・・・・・・で待ってるよ。”
それだけ言うと、声はなくなってしまった。
一歩進むごとに、増す痛みに耐えながら走る。
光が消える前にたどり着くために。
光に近づくにつれ、だんだんと思い出せることが増えてゆくのがわかった。
友達、兄弟、親、学校、好きな子、嫌いな奴、自分の名前、そして、
どうしてこうなったのか。
「そうだ、好きな子に告白して、振られて自暴自棄になって
たところにトラックが突っ込んできたんだ。」
光の前まで来たとき、光の中に1つの絵が見えた。
仲のいい友達や、家族、担任の先生が集まった学校を背景にした絵。
また声がした。
“よく、がんばったね。君があのままだったら、死んでいたんだよ。”
「死んで・・・・・いた。どういうこと?」
“君が今触れているその光は君の心、魂と言ってもいい。”
「たましい・・・・・これが、こころ?」
“そう、こころを持たない体は動かなくなるから”
“そろそろ、お別れだね。君は目覚めなければならない。”
「そんな・・・・・助けてもらったのに・・・お礼も出来ないなんて。」
“っ!君は優しいんだね、お礼は、君の笑顔が見たいな。”
「わかった最後に名前だけでも教えて欲しい・・・・」
そのとき、触れていた光が弾けた。
そして、意識が薄れていく。その薄れていく意識の中で最後に聞いた言葉は
“スズラン”
次に目を覚ましたとき、目に入ったのは白い天井だった。
近くにいた看護婦さんが先生を呼びに部屋を飛び出していった。
辺りを見渡すと、小さな植木鉢に植えられた白い小さな花を見つけた。
植木鉢に貼ってあるビニールテープにマジックで[スズランの花]と書かれていた。
そのスズランの花向かって微笑んだ。
「ただいま、そしてありがとう。」そう一言いって窓から見える青空を見上げた。
これからの幸福の訪れを願って。
この度はこの小説を読んで頂ありがとうございます。
初めての小説であまり自信が無いのですがいかがだったでしょうか?
もっと良い小説を書けるようにしていきたいので、厳しく評価していただきたいです。