窓際は猫の秘密の通り道。
なーんにもやることがなくて、なーんにもする気が起きない、そんな日ってないかな。
そんな日は、窓の外を眺めてみてください。
案外面白いものが、見つかるかもしれません。
窓際は猫の秘密の通り道。
コウジくんの家は平屋建ての一軒家で、お父さんとお母さん、弟のカケルくん、そして犬のラッシュと仲良く暮らしていました。
コウジくんとカケルくんは別々のお部屋をもっていましたが、コウジくんはちょっと不満。
なぜかというと、お家の隣は公園で、コウジくんのお部屋の窓の外は、ちょうどフェンスがその間を遮ってしまうのです。
弟のカケルくんのお部屋は木や草が生えていて虫がとれるのに、僕の窓は何にも採れない。
コウジくんはそう残念がりました。
そんなある日のことです。コウジくんがお部屋で遊んでいると、窓がドン、ドン、と叩かれました。
なんだろう、とコウジくんが窓の外を見ると、大きな三毛猫がフェンスに乗ったまま、両足を窓にくっつけていました。
コウジくんはこんなに間近に猫を見たことがなかったので、ちょっとびっくりしました。
三毛猫はとっても太っていました。ただじいっとコウジくんを見つめます。
暫く見つめ合ったあと、三毛猫はま「ぶなぁ~」と鳴いて、去って行きました。
コウジくんが慌てて窓を開けると、フェンスを器用に歩いていく三毛猫が見えました。
ここって猫の通り道なんだ、コウジくんはそんな風に思いました。
次の日のことです。
コウジくんが学校から帰ると、ちょうど黒猫が通り道を歩いていました。
コウジくんがアッと声をあげると、黒猫はちらっとこちらを向いて、通り過ぎて行きました。
その日の夜、コウジくんが眠りに入ろうとすると、たたっと勢いよく通り道を走っていく白猫がいました。
すごい速さだなあ、とコウジくんが感心していると、反対側からまた同じように走って行きました。
一体何をそんなに急いでいるのでしょう。
あまりに必死な猫の動きに、くすりと笑ってしまうコウジくんでした。
しばらくそんな日々を送っていると、見慣れない灰色の猫がやってきました。
新参者だろうか、とコウジくんが眺めていると、飼い主らしき女の子が「こんなところにいた!だめよ、お家から出ちゃ」と猫を抱き上げていきました。
その猫の憮然とした顔を面白いな、と思ったコウジくんは、猫図鑑を作り始めました。
らくがき帳に今まで見てきた猫を書くのです。
おにちゃんがお絵かきをしているのを見つけて、カケルくんが隣に座ります。
「何かいてるの?」
「ねこだよ」
「ねこ?」
「ここを通るんだよ」
「ええっほんとう?」
コウジくんはカケルくんに今までのことをおしえてあげました。
きらきらと目を輝かせる弟を見て、コウジくんは嬉しくなりました。
「お兄ちゃん、僕もここで見ていい?」
「いいよ」
二人は手を繋いで窓の前に座ります。
犬のラッシュもやってきて、フェンスを見つめる二人に首を傾げて、一緒に待ちました。
今日は、どんな猫たちが通るのでしょうか。