表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

よくある話

作者: 名無しの娘

よくある話なんだけどさぁ、父親が借金残して蒸発。本当によくある話だよね。何も感慨を受けないくらいよくある話。


そして、それに付随してよくある話は、数十年後に帰ってきた父親と感動的な再会。改心した父親を、最初は頑なに許さない娘が、周りの説得で許し【幸せ】に暮らす。


「すまなかったな」

「許すよおとっつあん」


はいはい。なんてふざけた話だろうね。胸糞悪い。


さて、此処で問題です。上記に書かれている【幸せ】とは、誰の幸せでしょうか?


答えは【父親】


よく考えてみて?父親は本当に改心したの?


数十年経った今、残った借金を母親が死ぬような思いをして返して、手間隙も金もかかる娘達は成人した今。厄介事がなくなってから帰ってきて、何も責任を果たさずに、どの口で改心したと言うの?


家族を騙して借金を背負わせたくせに、全ての責任から逃げたくせに……。ねえ、もし私達が成人して、社会的に恵まれた生活をしてなかったら帰ってきた?もし、私が難病になって膨大な治療費が必要だったらどうした?


払う?ああ見栄っ張りな貴方は、私がこう言ったらそうするでしょうね。【借金してまで】払うでしょうね。私が言いたいのは、【私達に会う前に知ってたらどうした?】ということ。私達が貴方が何しているか知らない、無視しても誰も責めない状況だったらどうした?


フフフ……いいよ、別に答えなくても。


とりあえず、時間が経って糞の役にも立たない爺になって、寂しくて金に困ってるからって、私達に迷惑かけないで。


違う?違わないよ。


だからさ父さん?いや、○○さん。もう二度と会わないで。ただ種をまいただけの男の世話なんて、私はしません。は?病気?知るか。あんたに捨てられた時、私達は高校生だった。借金を踏み倒した男の娘が高校生。


この意味分かる?いろんな場所で借りたらしいね?

何その顔。「言ったのか!?」って、まさか母さんが、私達に父さんがどんな場所から借りたか話した事を怒ってんの?


本当に……自分のプライドしか考えていないんだね。


ねえ、毎日、私達の無事を確かめる母さんの気持ち分かる?怪しい人が来たらコレを使いなさいって、防犯ブザーを渡す母さんの気持ち分かる?そんなつもりはない?借金を踏み倒した男が何言ってんの?なら、怪しい店で金を借りるなよボケ。


はいはい、止めて下さい。昔話なんかしても知りません。可愛い赤ん坊だった?はいはい、ありがとう。そんな赤ん坊をあんたは捨てたんだね。凄い鬼畜。


妹や娘に会いたかったら、あの時母さんに残した借金と同じ金額を払うくらいしてよ。あんたが私達を捨てたんだから、何か誠意を見せてよ。ああ、態度はノーカンだから。あんたが自分の為なら、幾らでも嘘を言うか知ってるから。


貴方は母さんに借金を押し付けた。すなわち母さんに借金してるんだから払ってよ。ああ、ちなみに母さんに何か言っても無駄だよ。母さんが一番あんたを憎んでるから。


はあ?信じられない?馬鹿だねぇ、あんたの代わりに親戚連中に罵られて、借金背負わされて憎まれてないって思ってんの?知ってる?母さんはあの後、伯母さん達に土下座したんだよ。ヤクザの事務所に頭を下げて行ったんだよ?


ヤクザだって、フフフ、笑っちゃうね本当に。何かの映画みたいだね。母さんはね、まだ高校一年生の私に、怖いって言って泣いてたんだよ?それは、全部あんたがやらないといけない事だったのに!いつも偉そうにしながら、追い詰められたら母さんに全部擦り付けて逃げやがって!


確かに母さんは優しい人だ。けどね、誰にでも限界はあるの。母さんは毎日言ってたよ、父さんが帰ってきたら逃げて警察を呼びなさい。何をするか 分からないからって。母さんにとっては、あんたはそんな人物なの。ちなみに、私も同じだから。


警察に電話しないのは、せめてもの情けだから。今日の事は忘れてあげるから早く行って。お願いだから、娘に父親を逮捕させないでよ。


家族を捨てた父親が帰ってきて、家族に許される。


よくある人情ドラマみたいな結末なんて存在しない。ドラマにも書いてあるでしょ?この話は全てフィクション。実在の団体や人物とは関係ございませんって。そんな物なの。


幸せな結末はフィクション。あの日々で分かっていたのに、何で涙が出てくるのかな?


父さん、大好きだった。だから、許せない。もし、父さんが改心して一生懸命働いたなら、私は父さんを憎まなかった。どんなに貧乏な生活をしても気にしないし、母さんも私も借金返済の為に働くつもりだった。家族がいれば良かった。けど、貴方は私達を棄てて、自分のプライドを守る事だけを望んだ。たった一千万の金の為に、私達や母さんの未来を棄てて逃げた。


私にこんなことをさせたのも父さんだよ。捨てた物が、いつまでも貴方を見つめてるなんて馬鹿な事を言わないで。これ以上失望させないで。


お願いだから、父親だと言うならば、二度と来ないで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公に思いっきり共感してしまいました。 うちの場合は借金じゃなくて、暴力とか兄弟間での待遇の差でしたけど…。 子供時代に世界で一番危険だった場所が自宅ってね、もうね。 家族が屑だと苦労しま…
[一言] なんと言うか、きつい話ですね。 一昔前のお涙頂戴のバラエティーで似たシチュエーションを見ましたけど、実際その立場になったらこういう対応になりますよね。 テレビで、そういう人を許してる場面を見…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ