エピローグ
私は、大学の門の前に立っている。門の横には、大きな看板が立てられている。大きく、“卒業式”の文字が躍っていた。
そう、今日は、私の卒業式だった。あれから二年ほどたち、サクラが舞う中、立ちすくむ私。
あの夏の日々は、まだ私の中で鮮やかに残っている。
あれから、私は少し遠いが、利用する駅を変えた。いつものあの駅の前には、もう見慣れてしまった警官が、毎日立っていたから。私の知っている背格好で、私の知っている顔かたちで、しかし、いつも見ていたものとは似ても似つかない穏やかな笑顔を向けてくる彼を見ると、もうイズルゥがいないことを思い知らされるような気がして、私は逃げたのだ。
そんな自分の行動が、私がそれなりにイズルゥとの時間を楽しんでいたのだと証明しているようで、少し笑えた。
逆に、頑張ったこともある。
私はこの春から、この街の科学館に就職することが決まっている。そこにはプラネタリウムがある。
あれから、私は、何か宇宙や星に関係する仕事を考えるようになっていた。果てなく広がる宇宙について知れば、少しでも、無限にも似た広大な星々の世界に近付くことが出来ると思ったから。浅はかだとも思ったけれど、特に将来の展望も夢も持っていなかった私には、まさに丁度良い目標が出来たと言えた。
でも、もちろん私に脳味噌はどんなにオーバークロックしてもそんな性能を発揮することは出来ないので、そして昨今の就職難のあおりを一身に受けたりして、一度諦めかけたのだが、根気強く探した結果、小さな科学館が拾ってくれた形だった。キョーコには「神様って実在したんだ…」と良く考えたらかなり失礼なことを言われた。
私は門に背を向け、歩き出す。まだ私は過去に囚われているけれど、いつかは、あの夏を思い出にして、前向きに歩いていけたらいいと思う。もう会えないけれど、あのどこか粗野な笑みを浮かべるおかしな男は、多分、数多の星の海のどこかにいるのだと思うと、何だか少しだけ、面映く感じた。
三年後、おかしな名前の星に住む人々から、突如として地球にメッセージが届くことを、そして洗練された流線型の巨大な宇宙船が太陽系を訪問することを、地球人は、まだ誰も知らない。
それと同時に、見慣れぬ姿かたちの、しかしその顔に見慣れた笑顔を浮かべた異星人が、私の家のチャイムを押すことも、この時の私はまだ、当然知る由も無いのだった。
ぎ、ぎりぎり間に合った…。何というか、またしても変な話です。ごめんなさい。
しかも何だか時間が無くて、随分展開が速くなってしまったような…。そしてこのクォリティ…。それもこれも全て、「8月20日? まだヨユーじゃんww」とかふざけたことを思っていた作者の責任でございます。ごめんなさい。でも締め切り無いと最後まで辿り着けない可能性があったので、これでご勘弁ください。
とにもかくにも、どうにか最後までかけてよかったです。また機会があれば、他の物語でお会いできればと思います。
皆様読了ありがとうございました。