プロローグ
tm様主催の「星企画」参加作品です。
詳細については↓をご覧ください。
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「だから、宇宙人が攻めて来るんだ」
目の前の男が言った。
私は「にひゃくじゅうえんのおかえしでーす」とどうにか表情を引き攣らせることなく、お金を差し出すが、男はそんな小銭に存在価値など無いと言わんばかりにきっぱり無視し、私に言い募る。
「何度言えばわかるんだ。来月、ホニャンコロボレ星系のアッポロノンマ星人が攻撃して来るんだよ」
…これ何て罰ゲーム?
やめてくれ。頼むからやめてくれ。他にも客いるから。ガン見してるから。哀れみの視線を向けてきているから。そんな私の声になら無い抗議もさらっと無視してくれるその男。
実はこの男が来るのはこれが初めてではない。今週に入ってから、私がバイトするコンビニに、なぜか私がいる時間に、私がいるレジに並ぶのだ。そして、缶ビールとつまみの裂きイカを差し出し、私が会計を済ませる一瞬を狙って、これである。
しかも、そんな頭のネジが緩んでいるとしか思えないような発言をするその男は、中身に見合った色々残念に緩んだ外見かと思えばそうでもなく、見た目だけならば、身長はそれほどではないにしろ、鍛えているのか体全体に厚みがあり、黒い髪を短く刈り、私服もピシッと着こなし、厳しく実直そうな雰囲気をしているものだから、むしろ違和感ありすぎて余計に目だってしょうがない。
そして私が幾ら相手にしなくても、ともすればすぐ目の前に現れて、同じ行動を繰り返すのだ。だから、相手がそのつもりなら、私もさっくりきっぱり無視し続けることにした。
イイ笑顔で私が無言を通すと、男は悔しそうな表情になり、袋とお金を受け取って店を出て行った。
「ありがとうございました。またおこしくださいませー」
その背に私はお決まりの台詞を投げつけた。内心では『もう来んな』と思いながら。