第八幕:交霊会とシャーロック・ホームズの理性
やあ、君。交霊会についてどう思う?
霊媒師を通じて死んだ人間を呼び出すこと。これって、物語を作る人たちと似たようなものに見える。
もしかしたら、ボクも死者かも知れない。ーー君にとっては。
第七幕では、妖精を信じ、徹底的に破滅へと行進するアーサーをみたね。
さて、アーサーは交霊会を開くことにした。友人のハリー・フーディニを呼んで、改めてアーサーの妻のジーン
イギリスのイースト・サセックス州にあるクロウバラのウィンドルシャム邸。そのリビングルームで、アーサー・コナン・ドイルによって呼び出されたハリー・フーディニはものすごく機嫌が悪かった。ソファにも座らず、舌打ちした。
彼の他にも、著名人たちが呼び出されていた。
中央で、アーサーが両手を広げていた。そこには、円卓の台と椅子が複数置かれてあった。囲むようにして、来客たちを座らせるつもりだった。
「お集まりの皆さん。お待たせしました。交霊会パーティへようこそ。
我が友、ハリー・フーディニの舞台のように、奇術を披露はしませんが、皆さんをこれから、不思議な経験、神秘の旅へお連れしましょう。」とアーサーは前口上を始めた。
彼の妻のジーンが会釈して、席につく。どこか遠いところを見ていた。
来客たちは、交霊会パーティなんてわかってなかった。
フーディニがアーサーを見て舌打ちした。
「さあ、皆さん。特に、エリク。ジーンのとなりに。君がトリックを見られるようにーー」とアーサーはフーディニを手で招いてみせた。
親しげな眼差しの下に狂気の響きがあった。
「ーーその女の隣はイヤだ。ーー俺は君が謝るものだと思ってたーー俺も謝るつもりだったーー」
フーディニは顔を伏せた。
アーサーに言われるがまま、少し離れた席につく。
「君のために、ジーンが準備してくれた。きっと喜ぶーー」それからアーサーは来客たちに握手をしてまわった。
「やあ、ようこそ!君たちは目撃者になる!」
部屋のカーテンが下ろされた。
あたりが薄暗くなる。
円卓の上にはごちゃごちゃした物が置かれて、香が焚かれた。
ジーンは頭からヴェールを被ってて、ブツブツ呟く。皆は両隣りにいる人たちと手を握り合った。
ーー早く帰りたかった。
帰って、この汚らわしい思い出を捨て去りたかった。
アーサーが天に祈るように、ジーンの肩を抱く。
「ああ、天使たちの声がーー聞こえるーー」とアーサーは喚く。
「霊界のメッセージが、我々の暗い時代を照らしてくれるーー」
アーサーは最後まで言えなかった。
突然、ジーンの目が見開かれた。
そして、彼女の口から予想外の言葉がもれた。
「あるーーは、なんでも。ーー僕の鋭い知性がーー役立つならね。ーーただし占いや降霊術、ーー妖精に関する相談は受け付けない。
あれは知性のない遊びだ。ーー夢中になるヤツのーー気が知れない」
その知性あふれる声を聞いて、卓を囲む皆が目を見開いた。
霊媒師ジーンの言葉はだんだんと激しくなった。
「だいたい死んだ人間は、生きた社会で生活してない。そんな奴らの助言なんて聞くに値しない。ーーバカらしい。頭が飾りの連中をだます方便さ。見てろ、ワトソン。全員でおてて繋いで、ブツブツ言い始めるぜ。
アイツら、少しは考えてるのか。おい、あの丸顔の灰色ヒゲ、太ってるぜ。いいもの食ってるんだろうな。おい、トーストとコーヒーを奢らせようーー」それから彼女は静かに語り終えた。
「ああ、アーサー......悪魔が私の口を借りたのよーー」とジーンは言った。
ジーンは改めて、フーディニに語りかけた。まるで、彼の母親のように。
ーーフーディニは目を見開いた。
でも、聴いていくうちに腹がたったのか、急に席を立った。
彼は言った。
「不愉快だーー不愉快だ!!」そして、彼は二度と来なかった。
アーサーは来客たちを見回した。
皆、彼から顔を背けた。
「わからんのか、わからんのか!これは科学なんだーー!」
彼はリビングルームの中、叫んだ。
ホームズが憎かった。
(こうして、第八幕はホームズにより幕を閉じる。)




