表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/53

第6話 怪奇妖術

 飛鳥が下へと消えた。いや、落とされた。

 レイは瞬時に理解した。これが今目の前にいる悪霊の「怪奇妖術」なのだと。

 (おそらく、対象が立っている地面の下に穴を作り出し、下に落とす術……と言ったところか……)

 レイは悪霊の術の仕組みを理解した。


 (この感じだと、やっぱりこいつがこの神社で神隠しを引き起こしたと見て間違いなさそうだ。さっきの術でここに来た人たちを暗闇の中へと落としたんだろう。飛鳥がどうなったかは分からんが、死んではないはずだ。微かにだが、地面の下から霊力をいくつか感じる。他の落とされた人たちもおそらく無事だ。まずは、目の前のこいつを祓う。それで術を解かせて、全員救出する)

 レイが考えをまとめていると、またもその黒き悪霊は、右手を上げた。

 それに連動してレイの下に黒い穴があらわれる。だが、レイは霊媒師としての長い経験によって培われた反射神経と身体能力により、それを素早く回避し、その勢いのまま、刀を握りしめながらダッシュで悪霊の目の前へと向かって距離を詰めていく。

 悪霊も両手を交互に操り、とてつもない速さで向かってくるレイの足元に次々と穴を出していくが、レイのあまりの速さに術が追いつかない。

 とうとうレイは悪霊のすぐ目の前まできた。そのまま一秒にも満たない速度で刀を抜き、悪霊目掛けて刃を振るう!!が、


 スッッ

 「!?」

 一瞬にして悪霊は下へと消えた!いや、落ちたのだ!穴の中へ。悪霊は自分の真下に穴を作り出し、そのまま瞬時に下へ落ち、レイの刃をかわしたのだ。

 悪霊はそのまま、レイの背後から五メートル程のところに、穴から飛び出してきた。

 (まさか己を穴に落として攻撃を回避するとはな……。思っていたよりもめんどくさそうだ)

 レイがそう考えていると、またレイの下に穴が出現。

 咄嗟にレイは十五メートル程まで高くジャンプして回避し、上から様子を見ていると、その時、

 

 ジャプーン!!!!


 「なっ!?」

 地面にまた黒い穴が出現したと思えば、その穴から飛び出してきたのは、

 「飛鳥!?」


 タッ!


 飛鳥は穴から飛び出してきた勢いで地に着地する。


 






 



 「はあ、はあ、はあ、」

 周りが真っ暗で何も見えない穴の中で、俺は焦った。本当に焦った。けど、その暗い穴の中はまるで水の中のようだった。なんとも不思議な感覚だった。息はできるけど、真っ暗な穴の中はまるで水の中のように体が重かった。けどこのまとわりついてくるような重さ、常人では這い上がるのは無理だろう。俺は自分の霊力で体を強化して、暗闇で何も見えない中、平泳ぎで感で上まで這い上がった。すると……、


 ジャプーン!!!!

 

 なんとか地上まで戻ることに成功した。


 「ふぅ………」

 俺は安堵のため息を出す。本当に怖かった。息はできたから死ぬことはなさそうだったけど、周りが完全に暗闇のため、恐怖のあまり、本当に精神的にまいった。

 

 (あいつ、自力で戻ってきやがった……。やるな……)

 レイは飛鳥を見て、まさかの出来事に驚きを隠せなかった。

 

 けど、俺も今のでわかった。霊力の使い方を!!


 右拳に霊力を込める。


 右拳がだんだんと燃え盛る!










 「飛鳥ぁ、もっと集中して霊力を込めるんだ」

 二階堂さんの屋敷周辺の森の中で、俺は二階堂さんに初仕事に向けて二人きりで戦い方を教わっていた。あたりはオレンジ色の夕焼けの光が輝いていて、綺麗で、なんだかエモい。

 「うーん、難しいですね。あんまりうまく込めることができない………」

 俺は苦戦していた。二階堂さんの教え方は上手なのだけど、あまり思うようにできない。

 「飛鳥の怪奇妖術は炎みたいだね。霊力を込める際、いつも少し火花が散っているよ」

 「その、怪奇妖術ってなんですか?」

 「霊媒師や怪異が扱う各々の術を『怪奇妖術かいきようじゅつ』と呼ぶんだ。ちょっと長くてダサい名前だけどね」

 「ふーん」

 「ちなみに私のは雷だよ。まあと言っても、二階堂家はどの時代でも基本、みんな雷の術だけどね」

 「なんか強そうでかっこいいですね!」

 「まあねぇ!いやそんなことよりも、アドバイスとしてはとにかく集中だよ。霊力を込めたい体の部位に霊力を込めるのを集中!」










 そうだ大事なのは集中だ。二階堂さんにそう教わったじゃないか!


 玉砂利の山道が夜の月の光を反射している。俺は目の前の悪霊を倒すため、右拳に霊力を込める。

 右拳はだんだんとオレンジ色に燃え上がる。

 

 そして霊力は十分にこもった!


 その時、俺の真下にまたしても穴が。だがその瞬間。


 シュッ!!


 背後から突然体を掴まれ、そのまま悪霊へと突き進んでいく。おかげで穴に落とされるのを回避できた。

 「レイ!?」

 俺の体を掴んだのはレイだった。レイが咄嗟に口を動かす。

 「術は使えないが、霊力量は俺の方が上だ。お前を抱えてあいつの真正面までこのまま穴に落とされないよう突き進む。お前はその拳であいつを祓え!!」

 コクンと俺は頷く、レイは見事に穴を次々に猛スピードで避けていく、霊力量が多い分、身体能力の強化度も高いため、俺よりも身軽だ。とうとう悪霊の真正面の間近。レイは俺の体を掴んだ腕をおもいっきり振る…………。

 えっ?

 「思いっきりっ!!やっってこぉぉぉい!!!!」

 

 はっ!?えっ!?あっ、投げるの!?

 

 俺はそのまま悪霊目掛けて投げ飛ばされた。けど確かに、空中なら穴に落ちる心配はない。俺は投げ飛ばされた勢いに乗り、燃え盛る拳を振る!!


 怪奇妖術かいきようじゅつ 爆拳ばっけん!!!!


 我ながらダサいネーミングセンスだ。いや、けどよくよく思い返せばこれは二階堂さんが俺の技につけてくれた名前であって、俺がつけたわけじゃない。


 

 拳は悪霊の顔面に入った。


 

 そのまま悪霊は、体が煙のように少しずつ消えていった。


        

         〝除霊された。〟

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ