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第4話 初仕事

 竜崎レイ君……。クールだけど少し無愛想にも感じる。はたして俺はこれからこの人と上手くやっていけるのだろうか……。

 二階堂さんが喋る。

 「ちょいちょい。もう仲間なんだからさぁ、仲良くしようよぉ。……まあとりあえずはいいか!じゃあ早速だけど、飛鳥!君に仕事だ。霊媒師になった君にとって初のね」

 「えっ!?早速俺に仕事ですか!?……いや、でも俺、まだ力の使い方とか仕事のやり方とか、いろいろとよくわからないんですけど……」

 

 俺は不安げに言った。そりゃそうである。なんせここに来て、急に初仕事と言われたのだから。

 「いやいや、今すぐの仕事じゃないさ。一週間後にレイと二人である場所に悪霊の除霊に行ってもらう」

 二階堂さんは竜崎君の肩に手をやった。

 「えぇっ……!?ちょっ二階堂さん!」

 竜崎君は少し不満そうだ。たぶん新人の俺のお世話は嫌だとか思っているのかもしれない。

 「その一週間の間に、私から術や戦い方を君に教えるから安心して」

 うーむ。そう言う事なら少し安心だ。いや、俺は霊媒師になると決めたんだ。いちいちビビってなんていられない。死に物狂いで頑張ろう。





 一週間後。


 屋敷の個室で俺と二階堂さんと竜崎君の三人で集まった。二階堂さんが俺たち二人に今日の仕事の説明をする。

「それじゃあ今回の仕事の説明だ。今回二人には近くにある神社へ、夜に行ってもらう。この前そこの神社から依頼が入ってね。なんでも、夜にその神社へ訪れた人たちが次々に行方不明になっているらしい」

 「神隠し……ってやつですか」

 竜崎君が聞いた。

 「ああ。そうだね。これは十中八九怪異が、いや、悪霊が絡んでいる。それで今回二人には、そこいる悪霊を除霊しに行ってもらいたい。仕事の説明はこれで以上だ」

 この一週間のうちに、二階堂さんから教えてもらった事だが、怪異の中でも人に危害を加えたり、悪さを行う怪異を、この業界では〝悪霊〟と呼んでいるらしい。

 「じゃあ早速だけど、今夜は二人とも頑張ってね!」

 「はい」

 「はっ、はい!」





 午後六時。俺と竜崎君は屋敷がある山から下山して、近くの駅から電車に乗車し、目的地である神社へと向かう。

 車内は退勤や下校など帰宅の時間もあってか少し混んでいたけれど、なんとか二人横になって座ることができた。竜崎君と隣り合って座って、俺はソワソワしていた。なんせ出会って時間もそれほど経つわけでもないし、少しだけ気まずさを感じてしまうのだ。俺はあまり人と話してこなかったからなあ……。こういう時にどう話しかければよいのか全然わからない。けれど、これから一緒に頑張るんだから、少しでも仲良くなりたいよな……。

 「………竜崎君はさ」

 「レイでいい」

 「あっ、うん。……レイはさ、なんで霊媒師になったの?」

 「………」

 竜崎くんが、いや、レイが少し黙り込んでしまった。まずいこと聞いちゃったかな?まあたしかに、まだ俺はまともに仕事をしてないからわかったようなことは言えないけれど、二階堂さんから聞く限り、霊媒師って命懸けでかなり厳しい世界みたいだし、まだそれほど仲良くなったわけでもないのに、急にそんなことを聞くのは失礼だっただろうか……?

 ほんの少しの沈黙が流れる………。電車の走行中のガタンゴトンという音が目立つように聞こえた……。

 

 「………別に。大した理由じゃない……」

 レイは俺にそう応えた。

 「あぁ………、そうなんだ…」

 俺も少し引っ込めるように返す。

 するとレイも俺に、

 「火野飛鳥だったな、おまえは?」

 と、俺と同じ質問をした。

 「飛鳥でいいよ。俺は……なんだろう……。俺、今まで兄と二人で暮らしてたんだ。兄さんは俺にとって一番大切な人だった……。けど、つい最近事故で亡くなってさ……それで俺も一人になって、とくにやりたいこともなくて、これからどうすればいいのかわからなくなっちゃって、なんかもうどうでもよくなって、死のうと……したんだ……、けどその直前に怪異……いや、悪霊に殺されそうになって、それで、その時気づいたんだ。……まだ死にたくないって。それから一回死んだんだけど、二階堂さんに助けてもらって二階堂さんが教えてくれたんだ。『人生はそう悪いものじゃない』って」


 レイは黙って聞いてくれていた。俺も続ける。

 「俺、間違ってたのかなって思った。兄さんに申し訳ないって思った。兄さんは俺のことをここまで育ててくれた。それなのに、俺は死のうとして……。だから俺、兄さんの分も生きようと思った。兄さんみたいに優しく、誰かのためを思って生きる、そんな人になりたくって、霊媒師になるって決めたんだ」

 「………そうか。すまなかった、思い出させて。立派なもんだな」

 立派か……。そうなのかな……、結局俺は、まだ曖昧な気持ちなんだと思う。大してまだ、覚悟も決まってないんじゃないかと時々思うのだ。それに、誰かのためと言いながら、結局は、自分のためにやっているんだと思う。

 「俺はそんな大層な理由でやってない……」

 レイは、今にも消えてしまいそうな声で呟いた。


 

 




 午後十時三十分ごろ。

 俺と竜崎君は電車に揺られて目的の神社がある山の前までやって来た。

 

 


 


 

 

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