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7.彼女が従者になりたいと言ったから、結婚したくなった

「落ち着いた?」


「はい…すみません、いきなりこんな…」


「大丈夫だよ。人間にはこういう時間が必要なんだ、つらい経験があれば尚更ね」


「あの、一つお願いがあります」


「おう、なんでも言ってごらん」


「私のご主人様になっていただけませんか」


「…ご主人様?俺が?」


「はい、このご恩はとても一度に返しきれるものではありません。ですので、私の一生をかけて返していきたいと思いました。どうか、お願いします」


 ルルティアが立ち上がって頭を下げる。

 正直に言うと嬉しい、だがせっかく奴隷の束縛から解放されたルルティアを無理に従者にするつもりは無いしな。手枷を外したのは恩を売るためにやったつもりじゃないし…。

 でも、今ルルティアには帰る場所がないんだったな。

 仕方ない、なってもらおう。


「わかった、俺の従者になってくれるか?」


「はい、喜んで…」


「結婚を前提に!!」


「…はい?」


「はっきり言うと今すぐ結婚したい気分だ。だけどそれは時期尚早、もっとお互いを知ってからというものだろう」


「け、け…結婚!?」


「この先、ルルティアより可愛い女の子に出会う自信がないんだよ」


「か、かわっ…」


「長い黒髪も片目隠れも綺麗な瞳もその声も耳も輪郭も全てにおいて可愛いを体現している。そして更に、その長身だってグラマラスな体型との相互作用で女性の魅力に昇華している」


「〜〜〜…」


「外見だけじゃなく内面も、しおらしく真面目でいい子でまるで非の打ち所が…」


「も、もう分かりましたから!」


 可愛い女の子の魅力ならずっと語っていられる。陰キャオタクなら当然のこと。ただほとんどの奴は口に出さない。なぜかというとドン引かれるから。賢明。

 まあそんなカスみたいなことより、すでにルルティアが頭から煙出そうなくらい顔が真っ赤になってるのでこのくらいにしよう。


「じゃ、改めて、これからよろしく」


「は、はい…よろしくお願いします…」


「そう言えば、もう回復魔法って使えるんだっけ?」


「使えると思います」


「じゃあ、早速これ頼めるかな」


 俺はズボンを捲って膝の傷を見せる。


「それ、まさかあのゴブリンに…」


「いや。昼間に街に行く途中でずっこけて出来たのだから、ご安心おいでなすって」


「そ、そうですか。では、〈回復魔法〉」


 ルルティアが俺の膝に手を翳して魔法を唱える。するとルルティアの手元が淡い緑色の光を放つ。

 多少のむず痒さを感じていると、彼女が手を離す。


「これで大丈夫です」


 自分の膝を見ると、擦り傷は跡形もなく消えていた。


「おぉ、すげえ」


「早速お役に立てて良かったです」


「そうだ、もう一回ステータス見せて」


「は、はい」


 もう一度ルルティアがステータスを見せてくれる。

 回復魔法1回でどのくらいMPが消費されるのかが気になった。えっと、ルルティアのMPの最大値が5000で今が4900。つまり擦り傷一つ治すのにMPが100必要ということだ。つまりつまり俺が回復魔法使おうもんなら一発で気絶するって訳。

 …俺だってさ、前世では「チート能力頼りに生きて楽しいのかこの主人公」とか思ってたよ。「なんでもかんでも楽に出来て達成感0だろ」とかさ。でも、今なら分かる。チート能力は要る。楽に出来て何が悪い。

 〈創生魔法〉も十分チートだけど、もっとこう、派手な戦闘用の魔法が欲しいもんだろ。年頃の男子なら!


「あの、大丈夫ですか?」


 頭を抱える俺にルルティアが心配の言葉をかける。


「うん、大丈夫…。そうだ、もう一つ確かめたいことがあったんだ」


 ルルティアと一緒にキッチンの水道の前に立つ。

 確かめたいこと、それは水道水の品質確認。日本の水道水は安全に飲むことができるが、海外のほとんどは水道水を飲むことはできない。

 最初に水道が通っていることは確認済みだ。あとはそれが飲むことができるかどうか。飲めればわざわざ水を大量に汲んでくる必要もなくなる。


「俺が今から水を飲むから」


「はい」


「腹を壊したら回復してほしい」


「…。ええっ!?どうしてそんな危険なことを」


「今後の生活基盤に関わる重要なことだからね」


「で、でしたら私が…」


「おいおい、可愛い女の子に毒見させるほど腐っちゃいないぜ」


「…それが普通なんですが」


「まあ死にはしないと思うから、大丈夫大丈夫」


 俺はさっき作ったワイングラスに水を入れる。


「変わったポンプですね」


「そ、そうだね」


 そうだよな、この世界に水道とか恐らく無いもんな。井戸のポンプにでも見えたのか。

 ワイングラス半分くらいまで水を入れる。


「じゃ、これ持って」


「あ、はい」


 ルルティアにもう一つのワイングラスを手渡す。


「行くよー」


 カーーン


「ルネッサ〜ンス!」


「……」


「……」


 ルルティアが「なんやコイツ」って目で見てくる。たまんねえな。

 そうしながら水を一気飲みする。

 結果、腹は壊さなかった。


 ◇ ◇ ◇


「シャワーというのは素晴らしいですね、お湯も出せるなんて驚きました。私の故郷ではお風呂場すらありませんでしたから」


「あはは…あんま人には言わないようにね」


「分かりました」


 ルルティアに家を案内したり設備の使い方を説明していた。

 時計を見るともうすぐ午後の6時になろうとしていた。


「そろそろ夕飯にしようか」


「はい。ランタンなどはありますでしょうか?暗くなってきましたので…」


「あぁ、確かに」


 俺はすぐに照明のスイッチを入れる。


「これでよし、ん?」


 ルルティアを見るとポカンとしていた。可愛い。


「どうかした?」


「こ、これも、この家の設備の一つなんですか…?」


「ああ、うん。これもその一つ」


「都会の家は全てこうなのですか?」


「いや、この家だけ」


「すごいですね…ご主人様は何者なんですか?」


「俺は普通の人さ。この家がおかしいだけであって」


 実際、神様が作ったであろう家だし。ていうかいろいろ設備見て回ったけど、この家ソーラーパネル付いてんな!

 ますます世界観をおかしくさせてる。何がしたいんだあの神。

 そして、夕飯を食べた後。


「そう言えば、私はどこで眠ったらいいですか?」


「え、寝室じゃないの?」


「寝室の床でよろしいですか?」


「いやいや、何で床。寝るのはベッドでしょ」


「ベッドで寝るのはご主人様でしょう」


「いいよ、ベッドはルルティアが使いなよ」


「ダメです。私がご主人様よりいいところで寝る訳にはいきません」


「いいって、俺リビングのソファで寝るから」


「ダメです!」


 変なところで頑固だな。

 あんまこういうこと言いたくないんだけど、仕方ない。


「そんなに言うなら、夜の相手してくれよ。それならどっちもベッドで寝られるだろ」


 こんなこと言ったら、流石のルルティアでも…。


「ご、ご主人様が、よろしければ…」


「……え」

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