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5.女の子と仲良くなりたいので、頑張って会話したい

 前回、ゴブリンを倒して女の子を助けた。

 それはいいのだが…。


「どうしよ、これ…」


 庭先に横たわるゴブリンの亡骸が2体。

 このままほったらかしにしてたら、野生動物とか他の魔物が寄ってきそう。それ以上に眺めが最悪だ。朝起きて見る窓の景色にこいつらがいるの嫌すぎる。

 どかすにしても素手はなぁ…。

 軍手作って後でやろう。

 そ・れ・よ・り・も、これはあの女の子と仲良くなれるチャンス!

 異世界モノにはお決まりのイベントというものがある。その中でもこれは襲撃イベントという奴。これで助けた女の子とはほぼ確実に恋仲になれる、といった便利なイベントだ。

 美少女とイチャイチャする妄想をしながら、俺は家の中に戻った。


(よしっ、テンパるなよ、あくまで平然と)


「ゴブリンは倒した、もう安心だ」


「あ、ありがとうございます。見ず知らずの私を助けてくれて…」


 女の子がお礼を言って深々と頭を下げる。

 助けたこの女の子、身長こそめっちゃ高いけど、結構な美少女だな。整った顔立ちで、綺麗な黒目。黒髪ロングで片目が隠れている。あと…胸、デッカ……。

 脳内が相変わらずキショいなぁ。これだからオタクは…。


「当然のことをしたまでさ。襲われてる人を、しかも女の子を放っておけるはずないだろ」


「…優しいんですね、奴隷の私も助けてくれるなんて…」


「奴隷?」


「はい…」


 そう言って女の子は両手首の手枷を見せる。


(ボロ布の服だから奴隷かなとは思ったけど、この手枷…)


 ああ、どっかで見たことあると思ったら、奴隷商のおっちゃんのとこにいた人も同じのつけてたな。

 奴隷はみんなつける決まりなのかな。


「そういや、どうして1人でゴブリンに追われてたの?ここら辺は街から離れてるし、俺の家以外何も無いはずだけど」


「はい、私は…」


 …。この子の話を聞くに、襲われる前は他の奴隷と共にレルテに運ばれている最中だったという。すぐそこの森の道で、馬車に乗っていたら突然ゴブリンたちに襲われたらしい。この辺りは魔物が滅多に出ないから、護衛なども特に雇っていなかったそうだ。襲われてすぐ奴隷商人に逃がされて、他の奴隷と離ればなれになりながらこの家まで来たという。

 奴隷を真っ先に逃した奴隷商人か。こういう世界だと、すぐ奴隷を盾にして自分だけ逃げそうな雰囲気あるもんだけど。商品を守るためかもしれないが、そいつには感謝しないとな。こんな可愛い子と出会えたんだから。

 にしても、他にも逃げた奴隷がいるのか。…助けに行きたいのは山々だが、実際俺の戦闘力ってほとんど無いに等しいんだよな。さっきゴブリンを倒せたのは、開けた場所でなおかつバットのリーチがあったからであって。調子に乗って森に乗り込んだら数分で死ぬ自信がある。それに森の生態も地形も何も知らないのだ。そんな状態で行くのは、勇気ではなく蛮勇だ。やめよう。俺はジョン・マクレーンじゃないんだから。


「大変だったね。とりあえず、行くとこがないならうちにいなよ」


「め、迷惑なんじゃ…」


「とんでもない、家の中で話し相手が欲しいと思ってたとこなんだ」


「…分かりました。でも、なんでもいいので働かせてください」


「え、なんで?」


「命を救ってもらった人にこれ以上迷惑をかけたくありません。穀潰しになるなんてもってのほかです」


「わ、わかった。仕事は何か考えとくよ」


 これが奴隷の性格なのか、単にこの子が真面目なだけなのか。また明日おっちゃんにいろいろ訊いてみよう。


 グゥ〜〜…


 すると突然、この子のお腹が鳴る。

 顔を見ると恥ずかしそうに赤らめている。かわいい。


「あはは、何か食べ物を持ってくるよ。そこの椅子に座ってて」


 そう言って、パンと果物を彼女の前に持ってくる。


「こんなものしかないけど」


「いえ、ありがとうございます…」


 少しぎこちなくしながら彼女が食べ始める。

 俺は向かいに座って彼女を眺めていた。

 さっきから見えていたが、彼女の頭に動物の耳のようなものがある。亜人…その中の獣人という種族だろう。耳の形は、牛っぽいかな。この子の、この子……あれ、俺もしかしてまだ名前すら聞けてない?


「あ、あの…」


「ん?」


「私の顔、なにかついてますか…?」


「あぁ、いや!なんでもない…」


 もう食べ終わったんだ、早っ。


「コホン、そういえば君の名前は?俺はハルト」


「ルルティア、です」


「ルルティア、いい名前だね。そうだ、ルルティアのステータスって見せられる?」


「ステータス、ですか?」


「嫌ならいいんだけど」


「嫌というわけでは、ありませんが…」


「じゃあ、俺のを先に見せるよ」


「えっ?」


「ひらけごま!」


 あまりルルティアと押し問答してると話が進まないので、強引にステータス画面を見せる。

 MP100、スキル無し、魔法1個のスッカスカな俺のステータスを。


「どう?あんま面白くないと思うけど」


「…」


 ルルティアがじっと俺のステータスを見ている。なんかわかんないけど小っ恥ずかしい気分だ。


「スキルも戦闘用魔法も無しで、ゴブリンを倒したんですか?」


「あ〜、条件っていうのもあるかな。あと田舎の中学校はほとんど部活に強制参加だから」


「え、あ…」


「ごめんなんでもない。どうかな、やっぱりステータスは見せたくない?」


「…わかりました」


 すると、ルルティアが特に何も唱えずにステータス画面を開く。

 名前は「ルルティア」とその通りに。隣には「奴隷」とある。そしてMPがごひゃ…ごせ、ごごご、ごせん?5000?

 MPのところには、「5000/5000」とあった。


(…俺、クソ雑魚やん)

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