孤独な姉弟 その後
孤独な姉弟
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前作です。前作を読んでくださってからこの作品読んでくださるとより良いと思います。
最近僕の周りの環境が変わった。今までは、ただただ冷たくされ、離れに閉じ込められていたままだったのだが、優しい侍女がやってきて、僕のお世話をしてくれたり、勉強とかを教えてくれるようになった。
でも、お姉様がいなくなって僕は悲しくてたまらない。お姉様を僕は助けられなかった後悔しかない。
「セドリック様、こちらへ少しきてください」
「侍女さんどうしたの?」
「絶対にこの事は秘密にしてくださいね。アグネス様からのセドリック様への手紙を預かっています。旦那様や奥方様にはバレないようにお気をつけて読んでくださいね」
「えっ本当に!お姉様から?」
「しー、これは秘密な事なので静かにお願いします。本当にです。アグネス様はセドリック様のこと大変心配されていましたよ。お返事を書かれたら私にください。私が必ずアグネス様に送りますので」
「わかった!侍女さんありがとう!」
ーーーーー手紙ーーー
セドリックへ
元気にしていますか?
お姉様は元気です。あの日、セドリックがお母様に見つかったりして大変なことになる可能性もあるのに見送りに来てくれて本当に嬉しかったです。私は、今は隣国にて叔母様のおかげで幸せに暮らしています。望んでいた勉強も好きなだけやらせていただき、幸せです。
セドの洗礼の結果を聞けるのを楽しみにしています。返事に書いてくださるとお姉様は嬉しいです。
セドはあのような人達にならないように勉学に励んでくださいね。私が学園を卒業し、自力で稼げるようになったらセドもこちらにどうにかこれないか交渉しようと思います。もし嫌だったら、早めに言ってくださいね。お姉様はセドにまた会える日を楽しみにしています。またお手紙を送りますね。
アグネス
ーーーーーーーーー
「お姉様......元気そうでよかったです」
僕はすぐに返事を書こうと思って便箋を探したが見つからなかった。だから侍女さんに頼むことにした。返事を書かないと言う選択肢は僕の中になかった。
その日の食事
「ねえねえ侍女さん、侍女さんは便箋持っている?」
「もちろんです。どうかされましたか?」
「お姉様にお返事書きたいんだけど紙がないの。だから頂きたいなって」
「わかりました。後で渡しますね。私の任務はセドリック様をお支えすることですので何かあったら、他に人がいない状態で私におっしゃってください。なるべく意向に添えるように致します」
「侍女さんありがとう!」
僕は便箋を侍女さんから頂くとすぐにお姉さまへ返事を書き、侍女さんに渡した。
それから少しの月日が経ち、遂に待ちに待った洗礼の日がやってきた。しかし、その日になんとマリアンネ様が体調を崩してしまった。洗礼の儀は、全国民がお父様やお母様に連れられて受ける重要な儀式だ。ましてや貴族な以上、お父様は僕の事を優先してくださると思っていた。しかし現実はそうならなかった。
お父様は僕の洗礼の儀を飛ばして、家族でマリアンネ様の看病に向かわれた。僕のことはまるで忘れられているようだった。これによって使用人の僕に対しての態度は酷くなった。今までは、食事を盗まれたり陰口を叩かれる程度だったが、暴力も振るわれ始めた。僕は怖かったが誰にも相談できずにいた。
ある日、僕は突然お父様に呼び出された。
「セドリック、お前、何をした?今すぐに着いてきてもらうぞ」
僕は訳もわからずに、お父様に連れられて、馬車に乗せられた。
暫くしたら馬車が止まった。目の前には巨大なお城があった。
「バーネット伯爵、お待ちしておりました。国王陛下がお待ちです」
そのままお父様と僕は執事らしき人に連れられ、とにかく広くてすごい豪華な部屋に通された。そして、暫くすると国王陛下というおかたが部屋に入ってきたようだ。僕の記憶だと国王陛下は国で1番偉いお方だが何が起きているのか混乱しかない。
「バーネット伯爵、今日、余が呼び出した理由はわかっているな?そこにいるセドリック・フォン・バーネットの扱いについてだ。元王妃の件についてすべて形がついたのでここで言うが、セドリックは余の子供だ。元王妃に命を狙われていた為、セドリックの母の兄で母方の叔父にあたるバーネット伯爵に預けただけだ。それなのに洗礼を受けさせないとはどういうことだ?洗礼を受けさせることは義務であるぞ!」
「誠に申し訳ございません。しかしながら、親戚が体調を崩しまして......」
「そんなのは関係がない!王子の方が優先である。今日を持って、セドリックをバーネット伯爵家の籍から抜き、王族の地位に列する。同時にセドリックを王太子とする。また、バーネット伯爵家に今まで与えていた援助はすべて止める。セドリックを無碍に扱ったことの沙汰は後に下す。話は以上だ。退がれ。セドリックは残るように」
なんか話がよくわからないけどどうやら僕はお父様の子供ではないらしい。まあ確かにお父様に似ていないとはよく言われていたけど混乱でしかない。それに、本当のお父様に当たる国王陛下はとても怖いお方のようだ。
「セドリック、そんなに怖がる必要はない。エリーに良く似ている可愛い子だ。洗礼の儀式をまずは済ませようか」
「はい、わかりました」
そのまま僕は国王陛下に連れられて教会に行った。本当は洗礼は月に1回しかできないと思っていたけど国王陛下の力を使いさえすればなんでもできるらしい。すごいけど怖い。
洗礼は意外とすぐに終わって、僕は魔力を持っている事がわかった。国王陛下はとても喜んでいるご様子であった。そのまま大きいお城へ僕はまた連れて行かれた。
今度は大きい部屋ではなく、僕の住んでいた家よりは豪華だけど普通の家みたいなところへ連れて行かれた。
「セドリック、ここが君の部屋だ。自由に使ってくれ。後は、従者などもつけないとな。君の荷物は今から取りに行かせる」
「僕も行っても良いですか?」
「まあ自分で片付けたいだろうしいいだろう。他にも色々と説明するが、詳しいのは夕食の時にいたそう」
伯爵家に帰ると、侍女さんに別れの挨拶をする事になった。お姉様以外に唯一優しくしてくれた人で悲しくてたまらなかったが、泣く泣く別れた。
それから一年が経った。僕は、王太子教育を受けながら王族の一員として過ごしている。そして今回、外交訪問の機会が与えられることになった。国は自由に選んでいいと聞いたので、お姉様が居るという隣国に行きたいと望んだところ、叶うことになった。久しぶりにお姉さまに会えると思うとワクワクが止まらない!
隣国まで行くには2週間ほど馬車でかかるが楽しみすぎて長くてたまらなかった。隣国につくと、向こうの王族の方々が迎えに出てこられた。
「セドリック王太子、初めての外交訪問の場所にこの国を選んでいただけて光栄です。こちらが我が妻、そしてこちらが2人の息子です。こちらは我が弟夫妻です。今回の接待役を務めます」
「初めまして、セドリックと申します。短い間ですがよろしくお願いします」
「貴方がセドリック王太子殿下ね。私はダニエラと申します。私達の屋敷に今回の滞在中は泊まっていただきます。王城でも良かったのですが、王太子殿下にとっては、おそらく私達の家の方がお喜びいただけると思いますわ」
僕は意味がわからなかったが、とりあえずその言葉を信じて、王弟夫妻の家に向かった。今日は、お疲れだろうということで、何も予定が入っていなかった。通常ならば歓迎の夜会を催すそうだが、僕が未成年でまだデビュタントを迎えていない為、見合わせたそうだ。
王弟夫妻の家に着いたら、直ぐに、1人の令嬢が出てきた。僕は見間違えることはなかった。それはお姉様だった。
「お姉様!」
「セド、大きくなったわね。王太子なんて驚きだわ。可愛い弟がいつのまにかそんな地位なんて」
「お姉様、久しぶりに会えて嬉しいです!僕は王太子である以前にお姉様の弟です!」
「そうね。セド、ありがとうね」
こうして2人の姉弟は感動の再会を果たした。
楽しく読んでくださったら嬉しいです。
ぜひ、評価をお願いします。評価が高いようでしたら、連載版として前作と今作をまたもっと詳しく書くことも考えています。
追記;ランキング入りありがとうございます