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【完】異世界にてやりなお死  作者: 真打
第八章 襲来
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8.5.ベレッド騎士団


 チャリーの言葉にアオは目を丸くする。

 刃天は首を傾げて聞き覚えのある名前を必死に思いだそうとしていた。


「ああ、水売りの領地か」


 ここで始末した四名の水売り。

 彼らはベレッド領から来たと口にしていたことを思い出す。


 しかしおかしい……。

 チャリーの見たものがベレッド領の騎士団であるならば、水売りは一体どうしたのだろうか?

 まだ再調査が終わっていないのに戦闘員を送り込んでくるとは。


「相手に相当頭のキレる人物がいるのかもしれませんね」

「用心深いのやもな」

「いやいやそうじゃなくて……。騎士団に僕たちで勝てるの……?」


 アオがそう問えば、刃天は首を傾げた。

 チャリーは腕を組んで少し思案してから口を開く。


「勝てますね」

「ああ」


 刃天はともかく、チャリーがそう言い切るのは意外だった。

 なにか『勝てる』という確信を得る物がこの村にはあるのかもしれない。

 同じ答えを持つ二人は次の策を講じ始める。


「どうする、まずチャリーが挨拶にでもいくか」

「いいですねそれ。じゃあその方向でいきましょ。それで敵かどうか判断しますね」

「敵だったら一人確実に仕留めろ」

「任せてくださいよ」


 トンッと胸を叩いたチャリーは楽しげに目立つ場所で木材の片付けをし始めた。

 あのまま暫くしていれば、ベレッドの騎士団がこの村にやって来るだろう。


 さて、あとはチャリー次第だ。

 相手の反応などを見て敵かどうか判断する。

 とはいえ……ベレッド領からわざわざこんなところまで騎士団が来るわけがないので、十中八九水売り関連ではあるのだが……。

 少しでも情報を聞き出せたならば御の字である。


 さぁ、あとはチャリーが動くのを待つだけだ。



 ◆



 チャリーが村の片付けをしている間、村民たちはそれを静かに見守った。

 そうしていると鎧を揺らしながら歩いてくる騎士団が村に現れる。

 馬に乗っているのは一名のみ。

 それ以外は徒歩で来たようだが、疲労している様子は見えなかった。


 チャリーは平然とした様子で彼らを目視し、近づいていく。

 さて、ここからだ。


「こんな所まで騎士団の方なんのご用ですか?」

「突然押し掛けて申し訳ない。我々はベレッド領内から参ったのだが、幾らか行方不明者が出ていてな。彼らが最後に向かったと思われる場所がここだったので話を聞きに来たのだ」

「なるほど……」


 敵だな、とチャリーはすぐに気づいた。

 ここが最後の目的地ならば、あとは帰るだけのはずなので街を必ず経由するはずだ。

 彼らは街も調べたはず。

 そして成果がなかったからここに来た……と。


 チャリーが思案している間、隊長格と思われる人物の背後でなにかこそこそと準備している音が聞こえた。

 これは準備を整えさせる前にこちらから仕掛けた方がいいだろう。


 極々自然な動きでチャリーは腰に隠していた短剣を二つ鞘から引き抜いた。

 それを目視した弓兵が顔出し、弓を引き絞る。


「手応えはありますよね」

「んっ!?」


 ようやく敵意に気づいた隊長はすぐに身を引こうとしたが間に合わない。

 咄嗟に腕で飛び込んでくる刃を防ぐ。


 数瞬の間にチャリーは隊長の腕を負傷させた。

 だが経験が豊富なだけの事はある。

 首を狙って飛び込んだつもりだったが、思ったよりも早く対応させれしまった。

 だが負傷させられたのは幸運だ。

 最も強いであろう人物がまともに戦えなくなるのだから。


 チャリーの攻撃から一拍遅れて弓兵が弓を放つ。

 一つは兵士の間を通り抜けたが、もう一つは兵士の腕に突き刺さった。

 激痛で悲鳴を上げたところで、様子を見守っていた刃天たちがゆったりと歩いてくる。


 戦闘から一時的に離脱したチャリーもそこに合流した。

 付着した血液を乱暴に振るって落とすが、やはりそう簡単には落ちないらしい。

 地面に赤い液体がポツッと落ちる。


「こ、こいつら……!」

「まさかここが元凶だとはな……。油断した。やれ!」

「はっ!」


 二名の兵士が空に向かって手を掲げる。

 すると赤い光が登って行こうとしたが、それは大量の水によって飲み込まれてしまう。


「「!?」」

「救難信号は送らせないよ」

「シュシュイ」


 今、これ以上の戦力を相手にできる自信はない。

 ロクが教えてくれたお陰で、アオは相手のやりたいことを理解して阻止することができた。

 魔法を感知できるというのは先手を取らせないことに繋がるのでありがたい。


 そしてアオは水を操ってそのまま退路を断った。

 水の壁が道を塞いでしまったので、逃げるには遠回りをしなければならない。

 無論、それを許すつもりもないが。


 何が起きているのかさっぱり理解できていない騎士団は、剣を抜いておろおろするばかりだ。

 想定外の事が発生しすぎて頭が追い付いていないのだろう。


 だが負傷した隊長とその側近らしき騎士は平静を保っている。

 注意すべきはあの二名。


「嵌められましたな」

「だが相手はただの村人。何人か腕の立つ者は居るようだが……」


 隊長と思わしき男は片手だけで剣を抜いて構える。

 とても負傷しているとは思えない動きに驚いていると、彼は口角を上げた。


「片腕だけで戦う訓練もしているに決まっているだろう」

「貴方は片腕だけの方が強いですしね」

「バラすなよ」


 二人が剣を構えれば、他の騎士も冷静になって武器を構える。

 言葉ではなく姿勢で鼓舞するか、と刃天は少なからず感心した様子を見せた。


「さて、何人生き残るか」


 刃天が前に出ると、他の者もそれに続いた。

 騎士団も陣形を取って迎え撃つ。

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