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【完】異世界にてやりなお死  作者: 真打
第七章 人・鬼・獣
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7.3.鷹の目


 正式な依頼として盗賊討伐及び物資の奪還を任された二人は、村から離れて草原に戻ってきていた。

 ここから逃げてしまった盗賊を探さなければならない。

 なので逃走の痕跡を探す必要があった。


 衣笠が戦った場所へ戻れば追跡をすることが可能だろう。

 そう思って来た道を戻っていたのだが、村から十分離れたところで地伝が口を開いた。


「この辺りでいいか」

「んん?」

「衣笠よ、生身の人間がこの世へ渡ってくると、一つ特別な力を得ることができる。刃天も持っているぞ」

「……つまりなにか。私にもある、と」

「そうだ」


 どういう理屈でそんなものが付与されたのかは分からないが、何かしら役には立つものだろう。

 水か食料でも生み出せるようなものであればいいのだが、流石にそう都合よくはいかないらしい。

 地伝は衣笠が有している能力を口にした。


「鷹の目だ」

「鷹の目ぇ?」

「目を閉じ、空を飛ぶ様を思い浮かべろ」


 半信半疑……。

 疑いの目を向けていると、地伝は『さっさとやってみろ』と言わんばかりに顎で催促した。

 眉をひそめながら目を閉じ、地伝の言う通り空を飛ぶ様を思い浮かべた。

 最初こそ真っ暗な世界が続いていただけだったが、次第に明るみを帯びてきて鮮明になる。


 衣笠は己の頭上の遥か上空から景色を眺めていた。

 驚いて目を見開けば地上に戻ってきている。

 大地に足をつけているかどうか確認し、少しだけ波打つ心臓を落ち着かせながら地伝を見た。


「今のはなんだ……!」

「鷹の目。この世では魔法と呼ぶが、それが貴様に授けられら力だ。目を閉じ意思をもって空を飛べば、鳥の視点から周囲の状況を把握できる」

「ほぉ……」


 これは面白い。

 曖昧な気配を察知するより、視界に捉えて情報を確実なものにする方がいいに決まっている。

 先程は驚いて目を開けてしまったが、今度は力を長く使ってみよう、と再び目を閉じた。


 次第に鮮明になる景色は確かに鳥の目線から見たものである。

 感嘆の声をあげながら、今回の目的である盗賊を探すことにした。

 随分遠くまで見えるので、どこに何があるのか一目瞭然だ。


 まず手始めに盗賊と戦った場所を確認する。

 数名の死体が転がっているのも発見することができたのだが、どうやらそこに生きた人間が骸漁りをしているようだった。

 この地からの名前が『鷹の目』ということもあって、どんなに離れていても何をしているかよく分かる。


 骸漁りをしているのは二名。

 どちらも先ほど戦った盗賊と似たような姿をしていたので、恐らく下っ端を物資回収に向かわせたのだろう。

 だとすれば……暫く待っていれば拠点に物資を運ぶはずだ。

 このまましばらく観察する必要がある。


「何か見つかったか?」

「……ああ。律儀に骸漁りをしているぞ。だが二人だけだ。待っていれば案内してくれるだろう」

「そうか。ではそれは貴様に任せる」


 軽く手を振って了承した後、上空の視点から骸漁りをしている二人が動くのを待つ。

 九人分の死体の物資を回収するのに二人では少なかったのだろう。

 手に溢れんばかりの量の荷物を持ってよろよろと立ち上がった。

 何とかバランスを保ちながらその場を後にする。


 衣笠の扱う鷹の目は障害物さえなければ本当に遠くを見渡すことができた。

 盗賊のいる場所と己のいる場所は相当離れてしまっているが、動かなくても彼らの行動を把握するのは容易だ。

 しばらく監視していると、盗賊二人は岩が露出している地帯へと足を踏み入れた。

 どうやらあの先が盗賊共の拠点らしい。


 木々や岩が邪魔をしてこれ以上の追跡は困難となった。

 衣笠は目を開けてスッ……と歩きだす。


「見つけたか」

「始末は任せる。なんせ、岩場だからな」

「目的を忘れていないだろうな……? 奪われた物資の奪還だ。私が暴れれば回収できなくなるかもしれぬぞ」

「手加減はできるんだろう? それに、あの時は増援を警戒しただけの事。今この状況は新手に怯えることはない。なんせ、本陣に突っ込むわけだからな」

「ふむ……。まぁ、善処しよう」


 そこは確約して欲しい……と思った自分から最強を名乗る鬼だ。

 己と戦った時もしっかり手加減はしていたし、地形を破壊するほどの乱暴な戦い方はしないだろう。


 若干の不安は残ったが衣笠は地伝を連れ、盗賊が見えなくなった岩が露出している地帯へと向かった。

 道中は特に何もなく、無事に目的地へとたどり着くことができた。

 そこは背を優に超すほどの岩が多く鎮座しており、草花一つ生えていない。

 過去に大きな地震が発生して地割れでも起きたのだろうか。

 岩場の少し先を見やれば崖が幾つかの段を作っていた。


「なかなかの絶景だな」

(……鬼の感性は分からぬ)


 感心した様子で顎をさすった地伝は風景を見て楽しそうにしていた。

 確かに地獄にはこういうところが多いかもしれない。

 溶けた岩が流れ、真っ赤な炎が吹きあがり、方々で阿鼻叫喚の絶叫が轟いていれば鬼共がよく知っている場所に変貌するだろう。


 風景を見ている地伝を放っておいて、衣笠は目を閉じた。

 鷹の目を使用して相手の場所を再度確認しようとしたのだが、何処かに洞窟でもあるのか上空からでは確認できない。

 ここからは足で探さなければならなさそうだ。


 とはいえ元より山暮らし。

 並の人間より周囲の環境を把握する術には長けている。


「……あっちか」

「む?」

「向こうに賊共がいる」

「よく分かったな」

「音だ」


 吐き捨てる様にそう口にした後、すたすたと歩いて行ってしまう。

 地伝はなんとも思うことなくそれに続いた。


 しばらく歩いていると、地伝でも分かる程の声が聞こえてきた。

 仲間が死んだというのに酒を飲んで楽しんでいるらしい。

 むしろ仲間が減って飲める酒が増えた、と喜んでいるのだろう。


「ほれ、出番だ」

「致し方ないな……」


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