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【完】異世界にてやりなお死  作者: 真打
第六章 冬
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6.15.建て前


 ロックブレードベアを仕留めた翌日。

 腹いっぱい食べて活力が有り余る若い衆だが、何だか肉付きが良くなってきたように思う。

 それは刃天も同じであり、明らかに筋肉量が増えている。


 そのためか体が軽く、とても調子がいい。

 村民の男衆は大体そんな感じなので、大工を筆頭として試作ログハウスを現在建築している真っ最中だった。

 因みに屋根に使う柱は間に合っていない。

 なのでこの建築中でも柱を一生懸命作ってもらっている最中だ。

 釘を極力使わないログハウス。

 使うのは屋根ぐらいなものなので、今ある予備で充分賄うことができる。


 しかし昨日の間でよく仕上げたものだと感心する。

 もう少しかかると思っていたのだが……全員が一つにかかればこれ程にまで速くできてしまうらしい。

 今回は小さな小屋なの準備も簡単だったのかもしれないが。


「よぉーし! 八段目組むぞ~!」

『おおー!』


 大工の掛け声を聞いて準備されていた木材を若い衆が持ち上げる。

 数人がかりで持ち上げられたそれをしっかりと組み込んだ。

 調整しなければならない場合は道具を使ってガリガリと削り、ピッタリとはめ込む。


 これが左右同時に行われており、妻側、桁側、妻側、桁側といった具合にどんどん組み上げていくのだ。

 さて、この間に屋根の骨組みが間に合えばいいが……と思っていると、幾つかの柱がこちらに運ばれてきた。

 まだ規定数には足りないが、棟を上げるだけの柱はこれで揃ったらしい。


 組み上げている途中で窓や扉の位置を決定して作りつつ、どんどん組み上げられていく。

 そんな様子を村民全員で見守った。


「なかなか経験できないですよね~」

「チャリーは見たことないの?」

「あはは、仕事ばかりでしたからね。アオ様も初めてでしょう?」

「うん。ディバノは?」

「僕も実際に見るのは初めてだよ~! あーあ、僕もお手伝いしたかったなぁ」

「なっ、なりませんよディバノ様! それに準備の方でよくやってくれたではありませんか!」

「準備って言っても指示しただけだよ?」

「いやいや、ディバノ様はそれでいいのです!」


 それから長ったらしく話し始めたのでディバノはアオに視線をやって肩を竦めた。

 アオも返事を返すように苦笑いを作ると、二人はくすくすと笑ってトールから逃げ出す。


「であるからして……ディバノ様ぁ!?」

「うるさいってよ」

「言ってないでしょそんな事!」

「行動がそう示してますよ」

「ディ、ディバノ様ぁ~~~~!」


 パタパタと慌てて追いかけるトールは雪で滑って盛大にすっころんだ。

 トール、意外と面白い奴である。


 そういえば昨日狩猟したロックブレードベアはどうなっただろうか。

 隣にいるチャリーに聞いてみると、胸を張って答えた。


「男性陣が木工加工で忙しそうだったので、器用な女性陣で頑張りました! 以前とは比べ物にならないほど綺麗に仕分けられましたよっ!」

「ほぉ~。だから昨晩の肉は筋がなかったのか」

「やっぱり美味しく食べないとですからね~! 脂肪と毛皮、あとブレードもしっかり管理しています。この時期なので脂肪は外に放置する方がいいですね。毛皮はもう少し綺麗にする予定ですが」


 話を聞くに……どうやら彼女がしばらく姿をくらましていたのは、この村の女性陣に色々教えていたからだということが分かった。

 チャリーの方が舌も肥えているだろうし、ダネイルからここまでの道中で食べた食事も悪くなかったことを思い出す。

 これが村民に広まれば……逞しい女性がいくらか誕生しそうである。


 チャリーの話をしばらく聞いていると、テナが声をかけてきた。

 隣にはムスッとした顔を携えたクティもいる。


「刃天さん! 昨日はありがとうございました!」

「ああ。別に大したことではない」

「いやいや……。私あの時ほとんど動けなかったんで助かりましたよ……。ほらクティさんもお礼くらい言っとかないと!」

「別に……助けを乞うたわけではない」

「も~!」


 何とか説得をしようとしているテナを横目に、チャリーが小声で話しかけてくる。


「騎士ってこんなの多いんで気にしないでいいですよ」

「別に気にしてはいない。ただ面倒くさい」

「実力を気にしたがるの騎士は多いですから。でもこの様子だとはっきりさせられたようですね」

「ふむ……。ロックブレードベアの仕留め方を見せただけなのだがな」

「十分すぎます……」


 そういうものなのか。

 特に気にする事でもないか、と視線をログハウスへと向ければ用意されている丸太の数が随分減っていた。

 あともう少しでなくなってしまいそうだ。


 するとようやく棟が届けられた。

 それと同時に屋根の骨組みを構築する柱もすべて揃ったようで、棟上げを行うことができそうだ。

 しばらくすればほとんどが完成するだろう。

 あとは屋根をどうするかだが、ここは経験豊富な大工に任せる。


 この調子であれば、冬の間に何件か家を建てることは出来そうだ。


「雪が溶け……水売りが来るまでが準備の期間。そこから本番だな」


 冬が開けるまで残り四ヵ月。

 これだけあれば充分だ、と思う反面若干不安になりもするが、できる事をするしかないのだ。

 さて、この間に兵も育てなければ。


 建てられていくログハウスに、ようやく棟が乗っかった。


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