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【完】異世界にてやりなお死  作者: 真打
第十章 侵攻開始
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10.22.地下の罠


 十五段以上ある階段を一気に飛び降りた刃天は、転がって衝撃を吸収し立ち上がる。

 周囲には蠟燭が灯っているので明かりに関しては何も言うことはない。

 ただ薄暗くはあるが戦えない程ではなかった。


 それに刃天には気配を感じ取るという力がある。

 もし真っ暗やみだったとしてもある程度の戦闘は問題ない。

 そしてその中で一人の男が逃げている気配を感じ取った。


「抜け道だな」


 階段の上では地下に進ませまいと大勢が塞いでいるらしい。

 刃天は丁度良く合間を通り抜けて侵入することに成功していたようだ。

 であれば、さっさと追いかけて仕留めるべきである。


 軽く足をぶらつかせてから走り出した刃天。

 ジルードと思わしき人物は運動能力が優れているというわけではないらしく、足は非常に遅い。

 なんなら疲れて幾度か足を止めている様だ。

 逃げている最中に疲れて休むなど愚の骨頂。

 追っ手が来ていることに足音で気付いて再び走り出したが……刃天はジルードを視界の中に捉えていた。


 走りながら栂松御神を握り込む。

 前傾姿勢を取りながら膝を高く上げ、足を前に前に伸ばして接近すればあっという間に背後に着いた。

 この時刃天は一切息切れを起こしておらず、振り上げた栂松御神がジルードに迫る。


 分厚い気配。

 動きを止めて一歩下がると、頭上から大きな岩が落下してきた。

 あのまま斬り伏せて居たら潰されていた事だろう。


 ジルードも音に驚いて振り返ったようだが、刃天が岩の奥に居るということが分かって安堵した表情をする。

 そして疲れ果ててその場に座り込んだ。


「はぁ、はぁ……。ハハ、はははは! よしっ!」

「……この程度ならば」


 刃天はグッと力を入れる。

 以前ドリーと戦った時は地面を相手にしたのだから、これくらいの岩であれば斬れるだろう。

 あの時と同じ構えを取って姿勢を低くし、地面をあり得ないほど強く踏み込んだと同時に刃を上段から振り下ろす。


 シンッ……!

 岩を斬ったことを確認した刃天は、その半分をごろごろと転がした。

 そしてそれを横に倒してしまえば……座っているジルードを見ることができる。


「ぅ、嘘だ……!」

「水は塞いだ。テレッドも掌握した。ヴィンセンも掌握した。ツケを払う時が来ただけだ」

「あ、ああ……」

「栂松御神」


 スッ……と切っ先を向けた。

 ジルードがそれを認識した瞬間、刃天は一歩進んで心臓を貫く。


 呆気ない最後。

 ジルードはそんな事を思いながら意識を手放した。


 それから首を切り取った刃天は来た道を戻っていく。

 髪の毛を掴んで運搬し、階段を上って落ちていた槍にそれをくっつけた。

 掲げるように見せつければ、教会の人間は驚愕しながら戦意を喪失する。

 ジルードの死が急速に広まって教会内の戦闘は一段落した。

 だが略奪行為は収まらない。


 そんな中、チャリーが刃天と合流した。

 ジルードの頭部を見て苦い顔をしたが、スッと目を反らして状況を説明する。


「ジルードの死で止まったのは教会だけですね」

「ハッ。まっこと賊らしい」

「どうするんですかこれ」

「どうもこうもないだろう。好きにさせておけばよい。どうせこの建物はもう使われぬだろうしな」

「まぁ腐っても教会ですからねぇ……。何かしら活用するとは思いますけど」


 再利用するにしても、これから教会の力は急速に衰退することになるだろう。

 教会側についていた者たちの多くがベンディノに付いた。

 こうも簡単に裏切るような者たちを彼がどうするかが見ものではあるが、彼なりに何とかしてくれることを願おう。


 何にせよここでの仕事は終了だ。

 あとはベンディノに任せてこのベレッド領を引き続き投資てもらえればそれでいい。

 ヴィンセン領とテレッド街の橋渡しになる場所だ。

 アオからそこそこの指示は飛んでくるだろうし、ベンディノも忙しくなるだろう。


「では、一度戻りますか?」

「そうだな。話を聞いてからヴィンセンに戻るぞ」


 意見がまとまったので、二人はベンディノ館へと戻ることになった。

 まだ戦闘は続いているようだが、終息するのも時間の問題だろう。


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