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【完】異世界にてやりなお死  作者: 真打
第十章 侵攻開始
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10.14.思惑阻止


 レノムは人質などを取られていたわけではなかったが、その組織下につくことにした。

 同胞から『何故裏切った』と問われれば『強いものにはまかれとと言うだろう?』と答えて笑った。


 最初は生きてさえいれば別によかったのだが、そんな時に仕事を任されることになる。

 仕事内容は案の定エルテナの殺害だった。

 簡単だな、と思いながら探していたが思いのほか見つからずに四苦八苦していたところ、チャリーと再会する。

 時間が経ちエディバンとドリーの話を聞いていたので、再会した時は味方であるように見せかけるため『双子と戦った』としておいた。


 これで懐に潜ることは成功したが、予想外な事態が発生する。

 それが“刃天の登場”だ。


 彼の実力を見て一番最初に思ったのが『彼には勝てない』という確信だった。

 エルテナがいる村に行ったとしても、刃天がいるのであれば必ず負ける。

 負ける闘いを避けてきたレノムは、共に村に居た時も手を出すことは一切しなかった。


 そしてもう一つ。

 それが“地伝”である。

 彼にも勝てないと悟ったレノムは、村で荒事を発生させることを完全に停止した。

 立ち振る舞いから分かる強者感。

 そして何より炎に態勢があるという初めて見る種族。

 訳の分からない相手をして無駄に命を粗末にしたくはなかった。


 耐えて、味方であり続ける生活を続けたが……。

 最終的にやってきたのはエルテナがテレッド街に向かってしまうという予想外な事態だった。

 これは面倒なことになった、と困っていたところで……。


 レノムに連絡が届いた。

 彼女の持っていた通信水晶からの連絡であり、ダネイル王国がテレッド街を奪還する気でいるという話と、その手助けをしろと言う指示だった。

 エルテナがベレッド領に向かった今、水路が繋がらなければ水不足に陥って兵士は弱体化する。

 だから水路を繋げさせるわけにはいかない。


 そして、今回の騒動を起こした。

 刃天も地伝も居ない。

 チャリーも居なければ騎士も居なくなった。

 必ず成功するはずだった作戦なのに、どうしてこう阻止されてしまうのか。


 レノムは衣笠を睨む。

 衣笠はそれより鋭く、凶暴な視線でレノムを見下した。


「ぐっ……! 何故、こんなにも早く……!」

「移動には獣人を使った。それだけだ」


 衣笠が一歩踏み出す。

 それと同時に杖を振ったが、その前にロクが大きな声を上げながら衣笠に体当たりを繰り出いた。


「ん!?」


 バギィッ! ……と氷の棘が足元から生えた。

 ぶつかってきたロクを肩に担ぎ上げ、ちょいちょいと顎を撫でる。


「流石は神の依り代。信じよう」

「シュイッ!」


 衣笠がスッと脱力すると、即座に移動してレノムに接近する。

 さすがに距離がありすぎたのでその動きには反応できたらしい。

 レノムはすぐに杖を振る。

 そこでロクが大きく鳴いたのでその場から飛び退いた。


「……分かった」

「シュ?」


 小さな杖が再び振られた。

 だが今回は避けずに飛び出してきた棘を小太刀ですべて斬り捌く。


 一度見た技は対処ができる。

 衣笠はそういう人間だった。

 脱力して腕をぶら下げ、そのまま歩いていくのだが、二度氷の棘による攻撃が繰り出された。

 しかし衣笠はその全てを回避、または破壊を行うことで完全に無力化する。


 そうしている間に、間合いに入った。

 気を抜き、スッと近づいてレノムに小太刀を突き刺す。

 間合いは十分にあり、回避できると踏んでいたレノムだったが……。

 簡単に喉をかっ切られてしまった。


「……!?」

「終いだ」


 立て続けに四回攻撃を繰り出し、レノムはその場に倒れていった。

 真っ赤な鮮血を見ながら小太刀を拭うと、小さく鼻で笑う。


「中身は赤いな。なぜこうも違うのか」


 衣笠は納刀しながらテレッド街の方角を見る。

 『鷹の目』を使ってみると、刃天がこちらの方角を眺めているという事が分かった。


「心配性めが」


 すると、村民が集まってきた。

 衣笠よりもロウガンに近づいて感謝を述べているようだ。

 それは別にいいのだが、この氷を全て溶かすとなると時間がかかりそうだった。


 水路を作るのにも時間がかかるので今のところは問題ない。

 コルトも落ち着いて水元素の調整を行い始め、空気が軽くなった。


 急に湧いた敵ではあったが、衣笠のお陰で対処することができた。

 後ろの基盤が固まっていなければ、アオも思う存分動けない。

 しばらくはここで用心棒をしてやるか、と思いながら衣笠はその場を離れていったのだった。


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