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【完】異世界にてやりなお死  作者: 真打
第九章 奪われつつある街
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9.11.Side-チャリー-知り合い


 冒険者ギルドには以前立ち寄った事があるので場所は把握していたのだが、増築と改装が冬の間に行われていたようで様変わりしていた。

 一瞬目的地を間違えたか、と思ったが職員の姿を見かけてここが冒険者ギルドだと確信を持つ。

 数ヶ月でここまで変わるとは思っても見なかった。


 外壁は石材。

 正面の扉も真新しく、石像も幾つかある。

 地面は石畳に変わっており馬車でこの上を走るのが憚られるほど綺麗になっていた。


(幾らなんでもやりすぎでしょ……。どうやって誤魔化しているんですかねぇ……。ていうか、これはギルドが怪しくなってきましたね)


 他の場所も確かに新築物件や舗装路も作られているが、このギルドは更に金がかけられている。

 となると、結託しているのはギルドの関係者なのではないだろうか。

 確証はないが、一応用心して入ることに決めた。


 扉を押して入ってみれば、ロビー自体はそこまで豪華ではない。

 冒険者たちが行き交う場所だし、汚れてしまうことを前提に作っているようだ。

 だが奥の事務室などは真新しく小綺麗だ。

 それに高価そうな魔物の骨や絨毯などが見えた。


(ギルドにこれだけの高級品……。本人の家はさぞ豪華なんでしょうね)


 自分の家だけではなくギルドにまで回せる資金がある。

 ギルドマスターはどんな人なのだろう、と気になったので少し聞き込みをすることにした。


 できれば一人でいる冒険者に話を聞きたい。

 そんな風に考えながら周囲を見渡していると、明らかに一人でいる冒険者を発見した。

 チャリーは迷うことなく話しかけに向かう。


「こんにちは」

「……」

「……あれ? あのー、こんにちは~」


 返事が返ってこないので肩をポンポンと叩くと、カクンッと頭を落としてしまった。

 だがすぐに持ち上げる。


「……はっ!」

「え、寝てたんですか?」

「はは、いや……申し訳な……!? ちゃ、チャリー君……?」

「へ? ……えっ……!」


 二人は思わず口を塞いだ。

 ここで大きな声を出して目立つわけにはいかないからだ。

 目だけを見張って驚きを示し、目の前にいる相手との再会に喜ぶ。


「レノムさん……! どうしてこんなところに?」

「それは私の台詞だよ……?」


 いつも眠そうにしている彼女だったが、今回ばかりは意識を覚醒している。

 珍しい魔法を使うレノム。

 年齢は若く見えるが、実際は幾らか歳を召している。

 灰色の長い髪の毛はいつ見ても綺麗だ。

 眼鏡の位置を直してから、若干疑いに目を向ける。

 その意図をチャリーはすぐに読み取った。


「いや、ちょっと待ってくれ。君は……敵ではないよな?」

「もしかして……レノムさんも誰かと……?」

「……あの双子はよい子たちだった」

「……そうですか。エディバンさんとドリーさんと、私たちは……」

「よく勝てたな……。だが互いに狙われているということは」

「少なくとも敵同士ではなさそうです」


 レノムもチャリーたちと同じように、仲間だった者に命を狙われたらしい。

 双子と聞いてすぐに思い付く顔はあったが、あの二人も相当な手練れだったはずだ。

 もしかしたら……同じようにわざと負けたのかもしれないが。


 なんにせよ、ここで仲間と出会えたのは幸運だった。

 ほっとしていると、レノムが飛び付いてくる。


「いやあ! にしても久しいなぁ~! 元気だったかチャリー!」

「ほわっぷ! ちょ、ちょっと目立つから駄目ですって……!」

「そう言うでないわ~! ……しばし付き合ってくれ。付けられておってな」

「……! す、少しだけですよ~!」

「わしゃしゃしゃー!」


 レノムに顔をこねくり回されながら周囲を警戒する。

 刃天のように気配で敵の位置を把握することはできないが、今回はレノムが敵がいる位置を教えてくれた。

 顔をこねくり回すと見せかけて、視線の先に追手がいると教えてくれる。


 居るのは二人組。

 どちらも冒険者の格好をしているが、手練れであるということは分かった。

 どうやらチャリーが現れたことによって警戒心が跳ね上がっているらしい。


 レノムはただでさえ厄介な魔法を使う。

 そこに仲間が加われば仕留めることは難しいと考えているのだろう。


 あの二人組を始末するのも目標の内に入れておきつつ、まずはこの場を離れて色々共有したい。

 レノムのアオ……もといエルテナが生きていると知れば喜ぶことだろう。


「とりあえず……ここじゃなんですから移動しましょ!」

「おおー、そうじゃの! だったら、飯でもいかんか?」

「私、ここに来るのは二回目で土地勘がないんで、お店選びは任せていいですか?」

「いいともいいとも! そうさなぁ、甘いものでも食べに行くか」

「いいですね~!」


 話を合わせながら二人はギルドから離れる。

 適当に会話をしながら人気の少ない所へと追手を誘い込んでみれば、確かに一定の距離を保って付いてきていた。


 レノムが『この辺りに隠れた名店が……』なんて事を言いふらしながら進み、曲がり角を曲がった所で待ち伏せる。

 手で合図を出しあいながら、チャリーが屋根に上って敵の背後に回った。

 幾らか待機したあと追手が曲がり角を曲がったので、そのときに合わせてチャリーが屋根から飛び降りると同時に一人を仕留めた。


「ゴァッ……」

「!? な、なん……!」

「叫ばせんよ」


 コツンッと小さな杖で後頭部を触ると、一瞬で頭部が氷漬けにされてしまった。

 ゴドンッという鈍い音を立てて倒れ伏す。


「チャリー」

「他に追手は居ませんね。もう普通にしても大丈夫ですよ」

「では死体を片付けるかね」


 レノムが再び小さい杖で死体を触れば、一瞬で凍りつく。

 チャリーに視線で合図を出すと、彼女はすぐに氷漬けになった死体を蹴り飛ばした。

 すると氷は粉々になって霧散する。

 これで片付けは終了だ。


「さて……いろいろ聞きたい事がある」

「私も同じです」


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