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【完】異世界にてやりなお死  作者: 真打
第九章 奪われつつある街
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9.10.Side-チャリー-調査開始


 馬を走らせてテレッド街へと近づけば、大変よく賑わっているということが分かった。

 まだ街に入ってすらいないのに人々の声が聞こえてくる。


 以前見たときと同様、大きな街なのに城壁となる物はなく、魔物対策にちょっとした木の柵が並べられているだけだ。

 だがそれも撤去されて新たな建築物を建てるための測量が行われている。

 ロープと杭を使って建物の大きさを決めているらしい。


 冬の間は一切訪れることができなかったのだが、改めてテレッド街を見ると更に建築が進んでいる気がした。

 敷地も広くなっているのではないだろうか。

 その証拠に街の入り口が変わっていた。


 凄まじい成長速度だ。

 一体これだけの資金と人材はどこから産み出されているのか。

 これを探れば何か良いものが手に入りそうだった。


「うわぁー……。テレッド街ってこんなにも大きくなったんですねぇ……」

「街っていうより、街全体が貿易施設って感じですね……」

「守りが手薄ってのも気にかかりますねぇ……」

「消耗品とかどうしてるのでしょうか」

「全部仕入れなんですかね?」


 そんなことをチャリーとテナは言い合っていく。

 テレッド街がダネイルに寝返っているのであれば、現領主は下ろされる。

 そしてダネイルが取り替えそうと攻めてくるかもしれない。

 この場合……誰かが今の領主ととって変わらなければならないのだ。

 もし自分たちがここを管理するとなれば、些細なことでも把握しておく必要がある。


「じゃ、行きましょうか」

「ですね……!」


 二人はようやくテレッド街へと足を踏み入れた。

 兵士と軽く話してから料金を支払う。


 まずは拠点となる宿を決めなければならない。

 空いている宿を兵士に聞けば快く教えてくれたので、早速そちらへと向かった。


 たどり着いた場所は確かに空いていて、すぐに宿を確保することができた。

 しかし賑わっている場所から離れている。

 領主の邸宅からも距離があるが……まぁこれだけ

離れていれば目立つことはないだろう。 


 少ない荷物を置いて更に身軽になり、チャリーは肩を回した。


「さて……どこから行きましょうか」

「私はディバノ様の遣いなので、街の全体像を把握して物流を確認したいです」

「今から今後の事を把握しておくんですね。分かりました。では私は予定通りダネイルが絡んでいる証拠を探します」

「仕入れ先などからも分かるかもしれません。何かあれば共有します。毎晩ここで待ち合わせ……でいいですか?」

「それが一番確実でしょうね。ではまた夜に」

「はい」


 二人は頷きあったあと、それぞれの調査へと向かった。



 ◆



 賑わう街ブラブラと歩きながら、地形を頭に叩き込む。

 本格的に活動するのは夜なので、明るいうちはこうして周囲を確認して怪しそうな場所を探す。

 最も調べるべき場所は貴族や領主が住まう邸宅ではあるが、なかなか尻尾を出さない時もある。

 事実チャリーが以前調べたときはなんの成果も得られなかった。


「こういうときは……お話から聞かないとですねぇ……」


 思い立ったと同時に行き先を決定した。

 買い物をしながら店員から話を聞いてみることにする。


 場所はどこでもよかったが、できればダネイル王国からやって来た商人が好ましい。

 あの検問もダネイル王国からやって来るすべての人々を拒んでいる訳ではないはずだ。

 なのでどこかで商売はしているはずだが……。

 見た目もなにもかもほとんど同じようなので判断のしようがない。


 仕方なく、チャリーは野菜売場に寄った。

 鮮度的には新鮮というわけではない。

 だが痛んでいるというわけでもないような、微妙な売場となっていた。


 どこか長い距離を移動してやって来たのだろう。

 この近辺に野菜を育てている村はない。

 以前は……ドリーと戦った場所が納品してくれていたはずだが、今はなくなっている。


(ていうかテナさんこれを見越して物流を調べに……? 一本取られちゃいましたねぇ)


 彼女の仕事に乗っかるのは良くない。

 非効率ということもあるので、少し狙いを変えて証拠が得られる場所を探すのがいいのだろうが……。

 折角八百屋に寄ったのだ。

 話くらい聞いてみよう。


「すいません。この野菜は何処から?」

「んん? ああー、これはうちの村で採れた野菜だよ。ちょっと距離があるからあんまり日持ちはしないんだけどね。でもここに来れば全部売れるからありがたいかぎりだよ」

「へぇー。村はどこに?」

「レスト領の南さ。まずはレスト領で卸して、売れ残りをこっちにね」


 チャリーは頭の中で地図を作り出す。

 確かにそんな村があったような気がするので、彼が言っていることは間違いではないのだろう。

 しかし随分な距離を移動して来るようだ。

 それならこの品質でも納得がいく。


「大変ですね……」

「そうなんだよー。んま、これも依頼だからね」

「そうなんですか?」

「うん。テレッド街の近くにあった村が何者かによって滅ぼされてたんだ。それでテレッド街の食料事情が怪しくなってね。レスト領経由で俺たちに話が来たって訳」

「な、なるほど……」


 心の中で全力で謝りながらチャリーはその話を聞いた。

 一応食料関係はテレンペス側でなんとかなるかもしれない。


 だがお目当てのダネイルの商人ではなかったようだ。

 チャリーは幾つかの野菜を購入し、礼を言って去る。

 少し離れたところで購入した野菜をどことも知らない家の玄関に置いた。


(お裾分けです……っと。捨てる訳じゃないから良し。さて、身軽になったのでギルドの辺りを下見しますかね)


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