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【完】異世界にてやりなお死  作者: 真打
第八章 襲来
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8.9.説明


 気絶させた隊長と副隊長の身ぐるみひっぺがして縛り上げ、その辺に転がしておく。

 見張りを二名に任せ、まずは村の被害を把握することにした。


 死人はいないが怪我人が六名。

 そのうち一人が重傷だが命に別状がある訳ではないらしい。

 アオの援護があったはずだが、さすがに全てを面倒見ることはできなかった。

 しかし死人が出なかっただけ良いというもの。

 これに関しては誰もアオを責めるつもりもないようだ。


 今回はやはり最初に騎士団を散り散りにさせたのがよかった。

 あれがなければ被害はもっと甚大だっただろう。


 さて……村のことについてはこれくらいだ。

 家屋に被害がなかったのは敵に魔法使いが居なかったからだろう。


 だが、やはり戦闘中に刃天が殺されている姿を見た者が何名か居るらしい。

 弓兵二名はその成り行きをしっかりと見ていたし、戦っていた者も、一段落ついた者も様子を見ていたようだ。


 だが刃天は血にまみれてもいない、頭蓋を割られた頭部は元に戻っている。

 目撃者が多い分、刃天の存在に疑問を持っている者が少なくないようだ。

 今まで気楽に接していた者たちも、さすがに距離を取っているようだ。


 と、いうことでアオとチャリーに頼んで人を集めてもらった。

 刃天のこともそうだが、まだ敵が潜んでいることを教えなければならないからだ。


 怪我人は非戦闘員に任せ、他の動ける者たちは一ヶ所に集まった。

 とりあえず己のことから先に話すべきだろう、と口を開く。


「俺の死ぬ姿を見たものはどれほど居る?」


 問いの意味を理解したものはおずおずと手を上げた。

 九名がその姿を目撃していたらしい。

 まぁ隠すこともないのでさらっと打ち明けておく。


「俺は沙汰を下された死人だ。故に死ねん」

「さた……?」

「……まぁ、不死だと思ってくれて結構」


 気味悪がられるかもしれないな、と思いつつ方目を開けて彼らを見てみれば、なんだか好奇の目をしている。

 どうやら……悪い印象は植え付けられなかったようだ。


「すげぇ!」

「え、本当に死なないんですか? 強い上に死なないって最強じゃない?」

「な! 初めて見たときは驚いたけどね。でも別にどういう経緯があっても気にしないっすよ刃天さん! 恩人みたいなもんなんですから。なぁみんな!」

『な!』

「よかったね刃天」

「ハッ。勝手にせい」


 珍しくそっぽを向いた刃天に、アオやチャリーがクスクス笑う。

 別に安堵しているわけではないがどこを見ていればいいのか分からなくなった。

 ただそれだけだ。


 刃天の話はこれで終わりだ。

 驚かれはしたが村民からの印象はほとんどといって変わらなかった。

 これで味方うちで疑心暗鬼にならずにすみそうだ。


 さて、問題は次の話だ。

 これはアオが説明する。


「皆。一番始めに僕が阻止した救難信号覚えてる?」

「ええ、もちろん。あれがどうかしましたか?」

「相手は騎士団だし、高い確率で増援が待機している可能性がある。場所はたぶん山の麓らへんかな」


 この言葉に村民は少なからずざわついた。

 その救難信号がどこまで打ち上がる予定だったのかわからないが……それが見える場所に増援は待機しているだろう。

 だがその増援は救難信号を阻止したからといってここに来ない訳ではない。

 先人を切った隊長たちが帰ってこないとなれば、やはりこの村に確認をしに来るだろう。


 次の戦いはすぐ眼前に迫っている。

 それに気づき、彼らは顔を引き締めた。


「いつどのタイミングで来るかはわからない。刃天がいち早く察知してくれるけど、数が多いとどうなるかわからない。それに彼らが街を経由しているなら……そっちからも怪しまれるかも」


 これにローエンが首をかしげる。


「でもテレッド街はテレンペスの領地でしょう? ダネイルの領土であるベレッドの兵士を倒しても……問題ないのでは?」

「そうだったらいいんだけどね……?」

「なにか気になる事が?」


 コクリと頷いたあと、アオはチャリーを見る。

 懸念を抱いたのはチャリーが物資の調達をして帰ってきてからだ。

 彼女からの話を聞いて、嫌な予感を抱いた。


「チャリー。テレッド街って店や家屋なんかは建築されてたけど、外壁や防衛設備は手薄だったんだよね」

「私が見た限りはそうですね。正直あの検問も機能しているかどうか怪しいです」

「ちょ、ちょっと待ってください……」


 ラグムが待ったを掛ける。

 ローエンもそこに何を疑問を持つことがあるのか分かっていないようだ。


「その……それになんの問題が……?」

「簡潔に言うと、テレンペス領内にあるテレッド街は、既にダネイルの手に落ちてるかもしれないってこと」

『はぁ!?』


 驚きを露にする村民たち。

 だがどうしてそういう結論に至ったかわからない。


「な、なんでそれだけで分かるんですか!?」

「街を守る気が無いように見えるから。今のテレッド街は両国を味方にしてるから防衛設備を構築する必要がない。表向きにはテレンペス。裏でダネイルと繋がってる可能性は否定できないと思うよ」

「なんてこった……」


 これが事実ならば面倒だ。

 発覚すれば戦争の引き金になるかもしれない。


 だが目下の目的はこれではない。

 アオはチャリーに振り向いた。


「チャリー。確認してきてくれる?」

「お任せください!」


 刃天が敵の接近を確認できないならば、チャリーに向かわせて目視すればいい。

 チャリーはアオに頼み事をされてドン、と胸を叩いたあと、すぐに走って山を降りていく。

 あとは情報が届くのを待つだけだ。


「さて、そんじゃあ尋問するかぁー」


 刃天がそう口にすると、転がされている騎士の所へ全員が向かった。

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