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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第三章
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第二話(第八十二話) ブラックホールの新たな力

 次にアトランティス派遣団からの報告だ。


 大西洋を北上し続け、そろそろアトランティス大陸が見えてくるだろう所まで到達した派遣団が見た物は・・・


 どこまでも続く水平線・・・そう、アトランティス大陸があるはずの場所にアトランティス大陸が存在しなかったという報告だった。


「アトランティス大陸が無かったって・・・もしかしてムー大陸と同様に次元転移でもしたって言うのか・・・!?」

「その可能性もありますが・・・現時点では何も分からないようです・・・。」


 アトランティス派遣団からの報告を受けてそのまま伝えている通信オペレータに聞いても当然の事ながら何も分からなかった・・・。


「あの・・・」


 ノルンが恐る恐る手を上げる。


「アトランティス大陸は浮島なので・・・どこか別の場所へと移動した可能性もあるかと思いますぅ・・・。」


 アトランティス大陸が浮島だという事実は周知されていないため場がざわついたが、確かにその可能性は十分ある。

 考えてみれば、水位が100mも上昇すれば元々大陸のあった場所の多くは水没しており、浮島がその上を移動する事が出来るのだ。とはいえ、巨大な大陸が移動するとなると現実的にはかなり移動先は限られるだろう。


 話し合いの結果、アトランティス派遣団はアトランティス大陸が移動出来る可能性のある場所を割り出し、引き続きアトランティス大陸を捜索する事が決定された。


 そしてもう一方の懸念である、次元転移した可能性・・・。


 こちらに関しては調べる術が無いものの、もし本当に次元転移していた場合・・・同じく次元転移したムー大陸の人々の脅威となるものだ・・・。

 次元転移したムー大陸の人達は基本的には非戦闘員であり、もし転移先の世界でアトランティスから攻撃を受けたら致命的な被害が出るだろう・・・。


「真倉君、実際どうなんだ?君の力無くしてアトランティスが次元転移する可能性はあるのか?」


 僕に聞いても明確な答えは得られない事は分かっているだろうが、モーヴ中将が藁にも縋る思いで訪ねて来る・・・。


「そうですね・・・。ブラックホールを操る力のある人が他にも居るかどうか分かりませんが、ブラックホール自体は魔法でも何でもない純然たる自然現象なので、可能か不可能かで言えば可能ではないかと思います・・・。」

「つとむ、それにほら、あの爆弾魔の言葉覚えてる?”その力は君だけの専売特許じゃない”って言ってたよ。」


 陽子が言うのはMの書が奪われた時の話だ。確かにそんな事を言っていたし、事実奴は神出鬼没で突然現れたり消えたりする。次元転移の力があってもおかしくはない。


「確かに・・・でも、この力は神にも等しい力だって親父が言ってたし、全く同じ力を持った人がそうそう居るとは思えないが・・・。」

「でも、神を創造した天上人って沢山居るんでしょ?だったら同じような力を持った存在が他にも居てもおかしくないよ。」

「まぁ・・・そう考えれば有り得そうだ。」


「あの・・・師匠が禁術の中には巨大な天体を創り出すものがあるって言ってましたぁ・・・ブラックホールも天体ですよね?」


 ノルンの指摘には心当たりがある。確かに月もアトランティスの禁術で創られたって言ってたし、天体の延長上であるブラックホールが創れても何ら不思議ではない・・・。


「う~む・・・可能性は色々と心当たりがあるって事か・・・どうしたものか・・・。」


 否定的な見解を期待していたモーヴ中将は期待に反する答えに困った様子を見せる。


「真倉君、もし今から我々が次元転移をした場合、何が起きる事が想定されるかい?」


 マーヴロス元帥が直接乗り込んだ際に想定される事を尋ねて来た。


「えっと・・・まず、この世界と転移先の世界は時間軸が逆行していて、しかもブラックホールを抜ける際に時空の歪を通過するので、完全に対になる時間軸に出られるわけでは無い・・・つまり、先日転移した時間に対して更に過去に転移する事になりますが、それは1か月が経過したからと言って必ずしも1か月前に出るわけでは無いです。」

「どれくらいずれるか分かるのかな?」

「以前時空の歪の影響が出そうなくらい近くで力を使った時に1年が経過していました。近くで使ったというだけでそれだけ時間が過ぎるので、通過するとなると何年、何十年、何百年ずれるのか・・・正直想像が付かないです。」


「・・・ずれるのは、転移先の過去方向・・・という事で良いのかな?」


 マーヴロス元帥が何かに気付いたかのように確認してくる。


「時空の歪みでは基本時間は進む方向だけですね・・・だよな?陽子。」


 この辺りの物理法則は陽子の方が詳しいだろうから意見を求めた。


「あ、うん。量子の極微小な世界では瞬間的に時間逆行する事もあるけど、巨視的なスケールでの現実では時間が逆行するような事は無いから、進むだけだよ。」

「えっ、微小な世界ではあり得る・・・?えっと、今の回答は時間逆行は有り得ると言ってるのか?」

「あくまで量子スケールだよ。時間は逆行しないよ。」


 微妙に引っかかるが・・・まぁ、良いか・・・。


「そうすると、我々が次元転移した場合にはまだそこにはムー大陸もアトランティス大陸も無いわけだね。」


 マーヴロス元帥が再び確認してくる。


「えっと・・・時間が進むのだから、転移先ではより過去に戻る事になるからそうなります。」


「そして、ブラックホールの力を使うと時間が進む・・・そうだね?」

「はい・・・あ、もしかして・・・」

「気付いたかい?」


 マーヴロス元帥がにっこり微笑んだ。


「あ・・・!進む時間が互いに一方向だから元の時間に戻って来れるんだ!」


 陽子が僕よりも先に気付いた事を発言した・・・。


 つまりこういう事だ。例えば次元転移をして100年前の世界へと行く。そしてそこでブラックホールの力を使って100年進めば対になる時間軸へと戻って来れるのだ。


「これって・・・もしかして時間を自由自在に行き来出来るってことか・・・?」


 また新たなブラックホールの力の使い方に気付いた瞬間だった。

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