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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第五十話(第八十話) 神の住居

「神器が存在しない・・・」


 茫然とする僕らをフォローするように吉村教授が話を続ける。


「補足するが、あくまで私の知識の範囲内では、だがね。」

「と言いますと・・・?」

「先ほども言った通り、私の知識の多くは君らの世界のものだ。そう考えると、伝承に残る神器や神の遺物と思われるものの多くは2000年前から5000年前のものだ。そうなると、この世界が15000年前に相当するのであれば、まだ存在しない事になる。」


「あぁ・・・そういう事ですね・・・。」


 吉村教授の補足に一縷の望みを繋いでいたが、その期待は儚く散った・・・。

 事情が分かったとは言え情報が無い事には変わりない。これはかなり厳しい状況だ・・・。


「神器が存在しないにしても、神様はいましゅよね?」

「私の故郷であるアトランティスも神によって創られたと言われてますぅ。」

「あぁ、ある意味ではレムリア人も神様のようなものだもんな・・・。」


 メイ、ノルンが神についての見解を語り、自身も思い当たる節があるのを思い出した。


「そうですね。神器の実在がどうかは分かりませんが、神の存在に関する神話や伝承は沢山あるのは確かだ。」

「でも、神様がレムリア人のような実体の無い存在だとすると、物理的な遺物を作る事なんて出来るのかな・・・。」


「アトランティスの神様は天上人の方が生み出したってヌースさんがおっしゃってましたよねぇ?物質界に入った後なら作れるんじゃないですかぁ?」


 アトランティス大陸を創った神様を信仰するアトランティス人のノルンさんらしい視点だ。


「なるほど、必ずしも神様ではないにしてもそれに近い存在か。それならありそうだ。」

「私達忌み子もそれに近しい存在でしゅからね。より魂の密度の高い存在も居るはずでしゅ。」


 メイも意見に同意する。皆同じような感覚は持っているようだ。


「忌み子と言って良いのか分からんが、各地方で語られる神は様々な動物の姿だったりするし、天使や巨人といった伝説上の存在も同じような存在かも知れませんね。」

「とはいえ、それら神々や天使、巨人が一体どこに住んでいるのかを探すのって雲を掴むような話だよな・・・。

 アトランティス人も含まれそうな気はするけど、今はそこに頼る事は出来ないしなぁ・・・。」


 もう少し情報が絞られれば何か手掛かりが掴めそうだが、その切っ掛けが掴めない・・・。


「もう少し拡大解釈すれば・・・鬼や悪魔のような存在も同様な存在と考えられますな。」


 吉村教授が僕らの発想をより具体的に、拡大して話してくれる。


「鬼や悪魔か・・・。神様のような存在はレムリアのような空の上に居ると想像しがちだけど、鬼や悪魔だと言うのであれば地獄のような地底も考えられるのか・・・?」

「え・・・地獄は嫌だなぁ・・・」


「地底の遺跡となるとトルコやエジプトにもありますし、伝承レベルで言えばインドではシャンバラと呼ばれる理想郷が地下世界にあると言われてますね。」


「ああ!都市伝説レベルだとアガルタとかもそうだったな!」

「つとむ、噂話じゃなくて実在するもので考えようねー。」


 オカルト情報を発すると即座に陽子の突っ込みが入る・・・。


「む・・・確かにそうだ・・・。実在するものとするとトルコやエジプトなのかな?」

「そうですね。ですが、トルコのカッパドキアの地下都市に関しては残念ながらこの世界には存在しませんでしたね・・・。」


「あぁ、比較的新しいものだったのかな・・・。」

「ええ、それにカッパドキアの地下都市は人々の住居とされてるので神とは関係ないかと。」


「そうなると・・・エジプト?」

「本命はそうなるでしょう。こっちは考古学者の血が騒ぎますね!私自身実はエジプトに対して強い関心を持っていて何度も行ってるのですが、地下遺跡に関しては現地の方が調査を許可してくれないんですよね。」


「おお、それは何かありそうな感じがプンプンしますね・・・!」

「ええ、それこそエジプト神話には忌み子のような動物の姿を模した神々が多数登場しますし、地上で見られる遺跡からも謎の道具や装置が数多く描かれていますからね。その中に神の遺物があっても何ら不思議はありません。」


「そうなると是非とも行ってみたいですが・・・行っても入れないんじゃどうにもできないのが悔しいですね・・・。」


 僕が現実に対して悔しい思いを露わにすると、教授が眼鏡を右手の中指でくいっと上げ、にやりと笑った。


「ふっふっふ・・・考えてみて下さい?今世界はどんな状況ですか?」


 どんな状況なのか・・・思わず皆の方を向くとお互いの視線が交錯した。


「えっと・・・洪水で海の底・・・じゃないですか?」

「ですが、君たちのおかげでこの洪水は間もなく解消されるんですよね?」


「あ・・・まさか・・・!」

「ええ、今きっと現地に人は居ません!堂々と調査するチャンスですよ!!」


「うわっ・・・火事場泥棒というか、モラル的にどうかと思うけど・・・これは確かにチャンスだ!」

「私がこの世界に残ったのも、これが大きな目的の一つだったんですよ!」

「教授!だめですよ!そんな不謹慎な事堂々と言っちゃ!」


 僕と吉村教授の間で妙な連帯感が生まれた。


「う~ん・・・良いのかな・・・?」

「まぁ・・・どの道妖憑きで人は居なかったでしょうし、厄払いの祈祷は私がしましゅよ!」

「ふ、ふえぇ・・・」


 各々色々な思いを抱えつつ、次なる目的地はエジプトに決まった。


 南鳥島、ムー大陸、レムリア大陸と続いて来た僕らの旅路は次の分岐点を迎えるのだった。


 第二章 ~完~

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