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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第一章
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第八話 自身との再会 (挿絵追加)

 大体のこの世界の状況を把握した僕らは、いよいよ本土にある防衛隊本部を目指す。

 ここは孤島なので物資の運搬や人員交代のための汽車となるため、一日一便しか来ないそうだ。


「ハァ、ハァ、ハァ・・・。何とか間に合いましたね・・・。申し訳ありませんでした。」


 僕らは定期便の時間をすっかり忘れ話し込んでいたようで、走って駅に向かう羽目になってしまった。

 駅に着くと、藤枝さんの交代と思われる防衛隊の方が待っており、軽く挨拶をして汽車へと乗り込んだ。


 目的地へは2日かかる距離のため、汽車は寝台列車となっており2段ベッドの2つある個室へと案内された。


「それでは、私は警備もあるので先頭列車におりますので、何かあれば遠慮なくお声掛けして下さい。時々見回りにも伺います。」


 そう言って藤枝さんは出て行った。


 ・・・藤枝さんは見えていないから気にしていないだろうけど・・・

 陽子と同室かつ同じ部屋で寝るとか小学生以来で何だか妙に意識してしまう・・・。

 いやいや、仮にも妹なんだ。兄である僕が気丈に振舞わなくてどうするんだ・・・!ただでさえ、ここは元居た世界とは明らかに異なる場所なんだ。不安に思っていない訳が無い。


「つとむ、見て見て!夕焼けがすっごく綺麗だよ!!」


 ・・・不安なんだよな?

 とはいえ、南国の澄み渡る空に綺麗な海、そこに夕焼けが加わって凄く幻想的な風景が広がっており、不安を吹き飛ばすには十分な空間なのは確かだ。


「そういえば・・・もう走り始めて30分は経つけど、ここって島という割にはかなり広いよな・・・」

「うん、私たちの知っている南鳥島とは明らかに違うね。やっぱあの光から出てきた土地が加わってかなり広くなってるんだろうね。」


 僕たちの暮らしていた世界とは違うんだということを改めて実感し、少し寂しさを感じた。


 太陽が沈もうかという頃、南鳥島を出たようで列車は浅瀬の海に盛り土されたレールの上を走り始める。


「うわぁ・・・・」


 どちらともなく声が漏れ出た。

水平線上に太陽が沈みかける夕日の中、静かな浅瀬の水面に映る空と夕日が重なり合う海の上を走る情景は、これまで生きてきた中で一番美しい光景だった。


挿絵(By みてみん)


 水面に映る星空と夜空の星空が交じり合い、まるで銀河を走るかのように鉄道は夜通し走り続ける。



 翌朝まだ寝ぼけまなこで運ばれて来た朝食を食べていると、大陸へと上陸した事を知らせに藤枝さんがやって来た。


「一晩走ってやっと上陸かぁ〜、こりゃ目的地へ着くまでかなり暇だな。」

「そう?私は初めて見る世界を眺めてるだけでわくわくしっぱなしだよ!」


 はは・・・この陽子の好奇心旺盛さは見習うべきだな。


「そうだよな、なんだか当たり前のような感覚になってきちゃってるけど、なんてったってあのムー大陸に居るんだもんな!」


「あれ・・・つとむ、あれなんだろう?何かが飛んで来るけど、鳥じゃないよね?」

「なんだろう、羽は生えてるけど何だか人影に見えるな・・・?」


「!?」


「人のように見えるけどクチバシがある、あれはガーゴイル!?いや、和服っぽいのを着てるから烏天狗にも見えるか?」


 何かは不明だが、明らかに異形な者が複数こちらに向かって飛来してくるのが分かった。


「キキーーーーッ!!」


「ダン!ダン!」


 突如汽車がブレーキするとすぐに銃声が鳴り響いた。

 外を見ると藤枝さんが汽車の外で飛来してくる異形な者に対して発砲している。

 発砲を受けた異形な者の一体は羽を撃たれて落下し、残りの異形な者が明らかな敵意を持って藤枝さんへと向かっていく!


 多勢に無勢な上に、藤枝さんの持っている拳銃はそう連打出来るものに見えないのでどう考えても分が悪い。


 どうする!?襲われる藤枝さんを黙って見ているしか出来ないのか!?

 ふと、陽子が大きな狐に化けた時の事を思い出した。


「そうだ・・・アイツなら何とか出来るかも知れない・・・けど、どうすればアイツを呼び出せるんだ・・・?」


 あの時の事を思い出してみる。


「あの時・・・アイツは”危険個体につき対処します”とか言ってたな・・・。もしかすると宿主である僕の身に危険があると出て来るのかも知れない。」

「つとむ、何をする気なの・・・?」

「陽子はここで待っててくれ。大丈夫、何とかなる。」


 正直本当に大丈夫かは僕にも分からないが、そう言うと外へと飛び出した。


 外へ出ると、藤枝さんが異形な者に捕まり宙へと持ち上げられようとしている。


「まずい、このままだと上空から落とされてしまうかも知れない。」


 宙に持ち上げられた藤原さんの手から拳銃が零れ落ちる。


「・・・よし、あれで威嚇発砲してこちらに意識を向けさせよう。」


 勿論銃の扱いなど分からない。狙って当てるようなことは出来ないだろうが威嚇発砲くらいなら出来るかも知れない。


 銃の元へと走り、持ち上げると想像以上に重い。そして引き金も堅い。それでも必死に引き金を引いて空へと向けて発砲した。


「ズドン!!」


 間近で聞く発砲音はとんでもない轟音で一瞬で耳がおかしくなったのを感じた。

手も骨折したかと思うほど痛い。


 それでも異形な者の意識を向けるのには成功し、藤枝さんを落としてこちらへと向かってくる。


「よしっ・・・これでどうだ・・・!」


 みるみる近付いて来る異形な者、その形相を正面に捉え、もしアイツが出てこなかったら死ぬかも知れないと頭によぎり、自分のしたことについて後悔し、恐怖したその時。


『・・・敵意を確認、鎮圧を開始します。』


 頭の中であの声が鳴り響く。


「来た!!!」


 次の瞬間、僕の意識は薄れていった・・・。

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