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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第四十八話(第七十八話) 次なる目的

 拳銃の音に瞬時に反応したウィルが体の制御権を奪って手に持っていたアロンの杖で銃弾を受け止める。


『・・・狙撃者の生体反応が消えました。』

「えっ、狙撃!?」

「ふ、ふぇ・・・」


 陽子が驚き辺りを見回す。ノルンは驚きのあまり腰を抜かしたようで地面に座り込んでしまっている。


「ウィル、何があったんだ!?出て来て説明してくれ!」


 ウィルが子供の姿となって現れ、説明を始めた。


「・・・恐らくMの書を奪った犯人と同一人物です。殺意はあまり感じられなかったので、狙いは別にあったのかも知れません。」

「そ、そうか・・・まだあいつこの辺に居るんだったな・・・。」

「えっ!?そうなの!?」


 シオン聖堂でメイと話していた時の会話を知らない陽子が驚きの声を上げる。

 そしてその時、何かに気付いたメイが指摘してきた。


「ツトム・・・!アロンの杖のエネルギーがほとんど感じられないでしゅよ・・・!?」

「えっ!?」


 見ると、アロンの杖の紋章部分に銃弾が埋まってそこを中心としてヒビが入っている。


「もしかして・・・狙いは命じゃなくてアロンの杖だったのか・・・?」


 メイがアロンの杖に埋まった銃弾をまじまじと眺める。


「銃弾に残る残留思念からもやり切った達成感を感じるから、そうかもしれましぇんね・・・。」


「やつらは陽子の物質体である狐の化け物を探していた・・・。僕らがアロンの杖の力を使ってあいつの討伐をするのを防いだのか・・・?」

「えっ、でもアロンの杖を使って討伐するって話はまだ部外者は誰も知らないはずだよ?」

「うーん・・・だとしてもこの計画でアロンの杖の威力を目の当たりにしたら、その危険性もわかりそうなもんだから、見ていて脅威に感じたのかも知れないしな。」


 何より敵は神出鬼没、どこでどんな情報を得ていたのかも分からない・・・。

一先ず追撃の危険は無さそうだったため、僕らは要人の集まる中央自治区へと向かった・・・。


 中央自治区の一室にて、今朝集まっていた各国要人たちが再び集まり、事の経緯を報告した。

 計画の成功を喜ぶ半面、当然の如くアロンの杖を損傷したことで今後の討伐計画をどうするのかについての議論が飛び交う事になった・・・。

 色々な意見が飛び交ったが、要約すると以下の通りだ。


1.化け物の討伐には本当にアロンの杖が必要なのか?

2.そもそもその化け物は本当にそんなに脅威なのか?日本に留まっているだけであれば大きな被害は無いのではないか?

3.アロンの杖の修理は無理なのか?また、別の神器は無いのか?

4.アトランティスの狙いは一体何なのか?そこを知るのがまず先ではないのか?


 1に関しては正直やってみなければ分からないが、レムリア人の話を聞く限りだとかなり厳しいだろう。

 2も正直分からない。ただ、妖憑きを取り込んでいるという事実が既に人的被害だろうというのがマクラ共和国としてのスタンスだ。

 3も現時点では何もわからないし情報も無い。

 4も気になるところではあるが、スパイである藤枝さんも情報が無く、今後探って行くのとアトランティス派遣団の報告も一つポイントになってきそうだ。


 結局今時点出来る事の決定事項として、4の情報を待つことと、3の情報に関して文献や知見者を集め、調査を進める事となった。


 会議が終わると再びマーヴロス元帥が話し掛けて来た。


「真倉君、今回の件は本当にありがとう。国を代表して礼を言わせてもらうよ。」

「いえ、皆の協力があってこそです。それに犠牲も出してしまいましたから・・・。」


「アスプロ君だね・・・。彼の事はよく知らないが、博史様の愛弟子だったのだろう?であれば、その使徒としての使命をきっと向こうの世界でも果たしてくれるだろう。」


 使徒・・・一般的にはキリストの弟子たちを指す言葉だが、同じ救世主(メシア)である父の弟子となれば、確かに使徒と呼ぶに相応しい存在だろう。


「そっか・・・そうですね。きっとアスプロさんであればムー大陸を、いや、世界を良い方向へと導いてくれますよね・・・!」


 マーヴロス元帥は優しく微笑み、うなづいてくれた。


「君たちも彼に負けないようにしなければいけないね。」

「はい!」


「そうそう、神器についてだが・・・そのような考古学的な話であれば君たちも以前会った事があると聞いているが、吉村教授が詳しいだろう。彼に聞いてみると何か手掛かりがあるかも知れないよ。」


 吉村 直治教授、この国の考古学の権威でマクラ共和国に初めて来たときに、この国の歴史を話してくれた教授だ。(※第13話参照)


「そっか・・・吉村教授も浮遊大陸に残ったんですね。ありがとうございます、参考にさせていただきます!」


 吉村教授と言えば、最初藤枝さんがセッティングしてくれた席に居た人だ。

藤枝さんは今回の会議にも薔薇十字軍のスパイ代表?としてこの会議に出席していた。


「えっと・・・藤枝さんは・・・あ、居た居た。」


 会議の片づけをしている藤枝さんを発見し、声を掛けた。


「藤枝さん、お久しぶりです・・・と言っても今朝の会議でも居ましたよね、はは・・・。」

「真倉さん。今朝は話出来るような状況でも無かったですからね。どうしましたか?」


「先ほどの会議でも上がっていた神器の修理と調査について、吉村教授の知見を頂きたいのですが取り次いで頂けないでしょうか?」

「あぁ、そういう事であればすぐに連絡しますのでお待ち下さい。」


 そう言うと藤枝さんは急いで部屋を出て行ってしまった。


「すぐって・・・今すぐなのか・・・何というか、フットワーク軽いな・・・。」

「流石軍人って感じだね!」


 数分すると藤枝さんが帰って来た。


「真倉さん、お待たせしました。吉村教授は今日はまだ研究室の引っ越し作業でバタバタしているので、明日であれば対応出来るとの事です。」

「あぁ・・・元々の研究室がこの浮遊大陸の範囲内じゃ無かったんですね。」

「はい、同じように今日は引っ越しでバタバタしている人は多いと思いますよ。」


 まぁ、考えてみれば昨夜急に決まった事だ。当然と言えば当然の状況だ・・・。


「それでは、明日の朝にこの場所を押さえておきますよ。」

「藤枝さん、ありがとうございます。」


 次の目的が決まった。神器の修理及び更なる神器探しだ!

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