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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
76/84

第四十六話(第七十六話) マクラ共和国ラピュタ化計画 (挿絵追加)

『では、各自予定通りスタンバってくれ!』


 博史(ヌース)の号令の元各自が予定の配置に着き、アスプロと博史(ヌース)、ノルンと真理(アレーティア)そして(つとむ) (と賑やかしの陽子、メイ)がペアになる。


『まず最初に私達がムー大陸全体とマクラ共和国にシールドを張り始めます。マクラ共和国を浮上させる範囲にもシールドを張るので、(つとむ)は細かい事を気にせずに魂を引き抜くことに専念して下さい。』

『ありがとう、母さん。遠慮なく行かせてもらうよ!』


『シールドが全体に行き渡ったら、今度は儂らがこの浮遊島の魂を抜き始める。それと同時に(つとむ)もマクラ共和国の魂を引き抜いてくれ!』

『分かった!親父!』


『マクラ共和国の魂を引き抜いたらすぐに人工魂の注入を始めるが、(つとむ)はそのまま今度はムー大陸にブラックホールを覆い始めてくれ!』

『了解!』


 いよいよ世紀の大計画が始まる・・・!


 真理(アレーティア)はノルンの中へと入り込み、手を合わせて意識を集中させる。すると、眼下の雲が割れ大地が見え始めた。

次の瞬間、ノルンの体と大地が光りを放ち始める。


挿絵(By みてみん)


『す、すごい・・・光の大地だ・・・!』


『さぁ、(つとむ)!ぼーっとしてないで始めるぞ!』

『わ、分かった!』


- 00.00秒経過-


 博史(ヌース)に促され、アロンの杖を手に取り意識を集中する。

 陽子の精神体を抜き取った時をイメージし、マクラ共和国全体にブラックホールのオーラを纏わせることで黒い染みのような膜が土地全体を覆う。

暫くし、ブラックホールの膜がシールドに当たる感触があった。


- 07.38秒経過 -


『今だ!!マクラ共和国の魂を引き抜くぞ!!』


 (つとむ)はそう叫ぶと、釣り竿を引き上げるかのようにアロンの杖を引き上げた。


<< ズルッ・・・ >>


 力一杯引き上げると、土地全体から薄ぼんやりした巨大な発光体が出て来た。


- 09.66秒経過 -


『これが・・・マクラ共和国の魂・・・なのか!?』

『よし、こっちもレムリア大陸の魂が引き抜けたぞ!』


 博史(ヌース)が入り込んだアスプロが叫ぶ。


『いくぞ~~!!!』


 アスプロ(ヌース)が今度は力いっぱい手を振り上げ、そして眼下の大地へと人工魂を力いっぱい投げ込んだ。

 すると、枯れ始めていた植物や崩れ始めていた大地が色付き、命が吹き込まれる。


- 11.93秒経過 -


『よし、上手く行ったか!?』


 さて、次はブラックホールの生成だ!


『って・・・このマクラ共和国の魂どうしよう!?』


 宙に浮かぶマクラ共和国の巨大な魂が行き場無く漂っている・・・。


『陽子にでも渡しておけ!!』


 アスプロ(ヌース)が叫ぶ。


『えっ、私??』

『何だか分からないけど、行くぞ陽子!!』


 ヌースに促されるまま、マクラ共和国の魂を力いっぱい陽子へとぶん投げる。

驚き戸惑う陽子にその魂がぶつかると、陽子に吸収されるように萎んで行った・・・。


『えっ!?何!?どういうこと!?』


 陽子はまだ尚驚き戸惑っているが、計画は進行中だ・・・今はそれどころではないので(つとむ)は目一杯ブラックホールの生成を始めた。


- 13.56秒経過 -


『まずいな・・・もう浮遊島が消えてきおった・・・』

『ちょっと待った親父!これ、島が消えたら僕ら落っこちないか!?』


『はっはっは・・・そうじゃな。』

「そうじゃな、じゃねぇぇぇえええええ!!!」


 島はまだ完全に消えていないが、因果が薄まった影響で僕らは全員落下し始めた・・・。


「これはピンチでしゅね。」


 いつものように僕のパーカーのフードに入っていたメイが出て来る。


「風しゃ~ん!助けてくだしゃ~~い!!」


 メイが叫ぶと下から突風が吹き、僕らは空中で止まった。


「ツトム、今のうちに竜を出してくだしゃい!」

「あ・・・そうか、バハムート!!」


 (つとむ)が叫ぶと(つとむ)の体から竜に化けたウィルが飛び出し、僕ら全員を受け止めた。


「た、助かった・・・。」


- 16.72秒経過 -


 竜の背に乗った衝撃で(つとむ)の出したブラックホールが霧散しようとしていたが、一方でアレーティアの入ったノルンは集中を切らさずにいた。


『ノルンさん・・・もう間もなく私は消えるでしょう・・・後のことは頼みましたよ。』

『えっ、えっ・・・そんな・・・困りますぅ・・・。』

『今出しているシールドの感覚は伝わっている筈です。その感覚を切らさずに続けるだけで良いのです。』

『で・・・でもぉ~・・・。』


『・・・ノルンさん・・・中に入って分かったのですが、あなたアスプロさんの娘さんなのですね。』

『!』

『アスプロさんがあなたに対して師匠と呼ぶことを強要したり、他人のような対応をするのはあなたに精神的な強さを持って欲しいから、そしてその類稀なる才能を伸ばしたいという親の愛情からでしょう。』

『・・・』


『ですが、それはまだ精神的に幼く、父親に甘えたい、愛情が欲しいあなたにとって凄く寂しい事なのですね・・・。』

『アレーティアさん・・・私、ししょ・・・パパに嫌われてるわけじゃ無いですか・・・?』

『父親は得てして子供に対して突き放した態度を取ってしまうものですが、アスプロさんからはしっかりとノルンさんに対する愛情を感じますよ。』

『・・・ううっ・・・』


 泣き出しそうなノルンに対してアレーティアは語り掛け続ける。


『あなたのお母さま・・・そう、幼い頃に亡くなっているのですね・・・。であれば、これからは私があなたの母代わりになります。滅多に会えないのが玉に瑕ですが、また会えたらお母さんと呼んでくださいね。』

『ううっ・・・アレーティアさん・・・。』


『さぁ、自信を持って!あなたは親からも、才能からも愛された申し子なのです!』

『・・・はい!!』


 ノルンは静かに目を閉じ、力強く自分の心の奥底に向き合った。


- 17.12秒経過 -


(つとむ)!早くブラックホールを!私は間もなく消えますが・・・ノルンさんはもう大丈夫です!」

「母さん・・・?何が大丈夫か分からないけど、分かった!」


(つとむ)、陽子短い間じゃったが会えて良かった。また会う日まで暫しのお別れだ!」

「お父さん、お母さん・・・この後の事も一杯話したいから・・・また絶対に会おうね・・・!!」


 博史(ヌース)真理(アレーティア)が消えてしまうと察し、陽子が叫ぶ。


 次の瞬間浮遊島は完全に消え、博史(ヌース)真理(アレーティア)もアスプロとノルンの中から消滅した。


「親父、母さん・・・またな・・・!」


 寂しさを胸にしまい込み、僕は再びアロンの杖を手に取って力強くブラックホールを生成し始めた。

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