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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第四十五話(第七十五話) 一神教と多神教

『イエスが初代天皇って・・・あれ、そういえばシオン聖堂で見た記憶の中でイエスの磔刑後の光景が見えたけど・・・あれって・・・。』


『・・・イエスは若かれし時に出雲の大国主と呼ばれる族長の元で修行に励み、そこで瀬織津姫と呼ばれる族長の娘と婚姻関係を結びました。そして、その後イスラエルに戻り洗礼を受け、磔刑後に再び父なる神の啓示の元日本へと再び戻り約束の地、大和を目指しました。』

『大和へって・・・もしかしてそれって日本神話の神武東征か・・・?

 そういえば天皇も神の子として天孫降臨したって言うし、イエスも神の子・・・え、そういう事なのか・・・?』


『日本神話では正確には天皇は神の子の子孫ですが・・・そのあたりの神話は鎌倉時代に人々に受け入れられやすいように編纂(へんさん)しているので史実がそのまま書かれたわけでは無いです。』

『そっか・・・個人的にも日本神話は好きだけど、どうしても解せなかった出雲の国譲り、あれって大国主が弟子であるイエスに国を譲ったって事なのか・・・娘と婚姻関係を結んでもいるし、入り婿のような形だと考えるとそれならしっくり来る。戦いもせず天孫だからって国を譲ったってのがどうもおかしいと思ってたんだよな・・・。』


『イエスは日本に戻った時に、何故日本は父なる神への信仰心があるわけでもないのにこんなにも人々がいがみ合う事無く、平和に暮らせているのか疑問に思いました。

 そこで気付いたのが日本神道特有の考え方である八百万(やおよろず)の神々です。

 イエスは父なる神への信仰心を高める事に腐心し、神と信者の一対一の契約を結ぶ形での信仰を説いていました。その仲介役としてイエスが指導者としての立場で居たわけですが、神-イエス-民衆という縦の繋がりが強すぎ、人々は神に対する依存が強まることで人々の間での絆、信頼感、尊敬が薄れていたのです。

 その結果生まれたのが、人と人の間の猜疑心。どちらの方がより強い信仰があるのかという競争心、どちらがより強い信仰、権力を集めているかという覇権争い。

 そして、強い信仰を集めたイエスは妬まれ、磔刑に処されたのです。』

『・・・一神教にはそんな側面があったのか・・・。確かに一神教を信仰している国は妙に争いが多くて何故なんだろうと思ってたけど、そんな理由があったのか・・・。』


『ええ、勿論一神教も愛や慈しみ、赦しについては教えますが、神道の考え方は全ての物や命には神が宿る。極論自身も神であり、他人も皆神の横並びの思想です。そうする事で自然と全ての物に敬意を払い、他者も敬い、自身も全ての中の一つと認識する事で結果全てが調和し、上手く行っていたのです。

 その考え方は当初イエスも戸惑っていたのですが、その考え方に父なる神への信仰が無いのかと言えば、そんな事は無いのです。絶対的な上位者としての神では無く、全てが神の片割れであり、それらを敬う事はその神の集合体である絶対的な神も同時に信仰しているのと同義なのです。

 その事に気付いたイエスは、これまでの布教のやり方を改め自身は指導者として表には出ず、教育や神話、政治の中でその思想を伸ばす事にしたのです。』

『なるほど、実際に全ての物や命は天上人・・・謂わば神の魂の片割れだし、皆神という考え方はその通りだよな。教えられて諭されるのと、自ら感じ取って行動する違い、か・・・。』


『そして、当時環太平洋帯は大きな潮の流れに乗った船での交流があったため、その思想は環太平洋帯へと徐々に広がったのです。』

『ムー大陸はそんな背景の人々が集まって、そして親父と母さんの影響力が交じり合って成された奇跡的な成功というわけか・・・。』


『・・・さあ、時間です。本当はもっと話したい事はありますが・・・限られた時間の中で一番伝えたかった事は伝えたつもりです。これからのあなた達の活躍を祈っています。』


 正直まだ母さんが本当に言いたかった事は十分に咀嚼出来ていないが、歴代の救世主(メシア)の思いは十分に魂に伝わって来た。


「よしっ!やるか!!」


 気力が漲って来て思わず声が出てしまった。

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