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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第四十三話(第七十三話) 上に立つ者の資質

 計画の確実性と失敗した際の代替案・・・ここで曖昧な返答をしてしまえば計画が立ち行かなくなる可能性がある・・・


『ウィル、これについて相談したいが、良いか・・・?』

『・・・良いですが、まずは準備があるからと少し休憩時間を入れるように促してください。変に時間が空くと何も考えていないと疑われます。』

『そ、そうか・・・分かった。』


 ウィルの指摘は尤もであるため、議事進行の人に伝え15分ほどの休憩を挟ませてもらう事にした。


「つとむ!どうする!?」


 休憩に入ると早速陽子が寄って来る。

続いてアスプロさんも心配になって来てくれた。


「困りましたね、私達は先生に言われるがまま計画を遂行する事だけを考えてましたからね・・・。」

「ええ・・・計画の確実性に関して言えば、父や母がサポートすることを強調することと、ブラックホールに何か入れてホワイトホールから出すデモンストレーションを見せればある程度信用されるとは思うんだけど・・・。」


「代替案・・・ですね?」

「はい、その事を質問されて目一杯頭をフル回転させて考えてみたんですよ。そしたら一つなんでこれをやらないんだろう?という案があるんですよね。」


「どんな案ですか?」

「至ってシンプルで・・・ムー大陸ではなくて海水を次元転移させるんです。そうすれば特に人的な危険も無く水位を下げられるんですよ。」

「確かに・・・それは尤もな案ですね・・・。」

「でも・・・それだとムー大陸がそのまま残る事になって、またアトランティスから攻撃され続ける事にならない?」


 陽子が会話に入って来る。


「確かにそうだけど、それは今も昔も同じと言えば同じなんだよな・・・。」

「そうですね・・・以前と異なる事と言えば、Mの書によってより危険な状況に晒されている事を言うべきですね。」

「Mの書の話を出すと、何故今になってそんな話が出て来るのか説明する事になって、マクラ共和国にあったMの書が奪われた事を言わざる得なくなっちゃわないかな・・・。」

「それって・・・私達物凄く批判を浴びる事になりそうだね・・・。」


 陽子の言う通り、そんな話をすればここぞと批判の的になり僕らの信頼がガタ落ちになってしまって計画の遂行どころでは無くなってしまうだろう・・・。


『・・・(つとむ)、私を表に出してください。』

『ウィル、何か考えがあるのか?』


 ウィルに促されるまま、ウィルの精神体を実体化させ皆に見えるようにした。


「ウィル・・・?」

「・・・そもそも何故このタイミングでアトランティスが動き出したのかを考えるべきです。」


 ウィルがそもそもの原点に立ち返る事を提案してきた。


「何故って・・・Mの書が手に入ったからじゃないのか・・・?」

「・・・それは切っ掛けに過ぎず、もっと根本的な理由があるかと思われます。」

「根本的な・・・アトランティスがムー大陸を目の敵にする理由ってことだよな・・・」

「妖憑きになっていない人間であること・・・ですね。」


 アトランティス目線を持つアスプロがアトンランティス人の根底にある部分を指摘する。


「そっか・・・!今他の大陸は妖憑きが蔓延してて、まともな人間はほとんどムー大陸に密集してるのか!」

「・・・そういうことです。」


「この洪水でその妖憑きの大半も絶滅させることが出来たと考えると、残る敵はムー大陸だけになるんだね・・・。」

「そりゃもう集中攻撃を仕掛ける絶好の的になるわけだ・・・。」


「そうすると、その事を強調して避難が重要である事を伝え、海水を次元転移させるのは本当にどうしようもない際の代替案だと言う事を伝えるのが良さそうですね。」


 アスプロが伝えるべき内容をまとめてくれる。


「うん、避難先の状況も伝えると良さそうですね。」


「氷河期って言うほど寒いわけじゃなく、大きく見積もっても気温10度程度下がるだけだよ。ムー大陸は赤道付近だからちょっと肌寒い程度だよ。」


 陽子が氷河期の気候の詳細について発言する。


「なるほど、それにその時代は文明というかそもそもまだ人類も類人猿だからこれと言った敵も居ないしな。」


 言うべきことは決まった。


 15分の休憩が終わり、再び皆が集まり会議が再開された。

 僕はブラックホールのデモンストレーションを行い、アトランティスの脅威と代替案について話をし、概ねの同意は得られたがブラックホールを実演で出した際に場がざわついたのが少々気掛かりだった・・・。


「真倉君、お疲れ様。見事な説明だったね、いざとなったら私が場を収めようかとも思ってたけど、その必要は無かったようだね。」


 会議が終わるとマーヴロス元帥に声を掛けられた。


「いえ、皆で相談して決めた事です。僕の力だけではありませんので・・・。」

「いや、それをまとめて発言するのも上に立つ者の資質だよ。」


 マーヴロス元帥は僕の肩に手を掛け、優しく微笑んでくれた。

トップの人に認められると何だか嬉しくもあり、少しプレッシャーにも感じた。


「それにしても、ブラックホールの力は驚いたね。真倉君だから大丈夫だとは思うが、悪意を持った者が使ったらとてつもない脅威の力だよ。」

「あ・・・それで場がざわついてたのか・・・。」

「・・・もしその事で何か問題が生じるようであれば私も力になるよ。」


 多少の気掛かりが残りつつも、無事会議は終わった。


 昼過ぎには無事人民移動も終わり、いよいよマクラ共和国ラピュタ化計画とムー大陸次元転移を実行する時が訪れた。

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