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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第三十九話(第六十九話) 神の目的

『考えてもみろ、陽子を物質界へと解放したのは正に奴の力だぞ?』


 僕は博史(ヌース)に指摘され納得しかけたが、矛盾点に気付いた。


『奴の力って・・・ブラックホールの力は僕がブラックホールに巻き込まれた影響で得た力だってウィルから聞いたけど・・・ってよくよく考えるとそれだと陽子の時には使えなかったはずだな?』


『・・・』


『ウィル、どういうことだ?』


『・・・カイセンガオソイヨウデス、ジカンヲオイテゴリヨウクダサイ。』

『久々に出たな、このすっとぼけ・・・お前回線で繋がってるわけじゃないだろ!』


『まぁ、騙されとるな。ブラックホールの力なんてとんでもない力は本来神にも等しい力だ。その力は神の監視役に与えられた破壊と再生の力だ。』

『えっ、じゃぁなんで僕が・・・というか、僕だけが使えるんだ!?』


(つとむ)に取り込まれた際に能力ごと奪われたんじゃ。儂とアレーティアの強力な因果に取り込まれたとも言えるな。そこに神の監視役の因果も交わったことで、その因果がうねりをあげて凄まじい重力を生み出す源になっておる。』

『・・・待てよ、じゃぁ南鳥島でブラックホールを誘発したのって・・・?』


『お前の力でもあるが、神の監視役の強い意志に実験で発生した極小ブラックホールが共振したからだな。』

『えっ・・・じゃぁ、あのブラックホールを作り出して地球を破壊したのって・・・僕なのか・・・?』


 血の気の引く感覚とともに目眩が襲って来る。


 自らの力で世界を破滅させた事実はとても受け止められるような事ではなかった・・・。


(つとむ)!お前が気に病むことでは無い!あれはあくまで神の監視役の役目に過ぎん!』


  僕はハッと目が覚めるように落ち着きを取り戻した。


『親父・・・ありがとう。なかなかそこまで割り切れないところはあるけど、目は覚めたよ・・・。』

『お父さん・・・ウィルは・・・神の監視役は何故世界を滅ぼそうとしたの・・・?』


 気が動転している僕に代わって陽子が疑問を投げ掛ける。


『ん?さっきも言った通り世界の終末が予見されたからだが?』

『その世界の終末って何なの?』


 ・・・重要な点だ。

 これが分からなければウィルは何度でも世界を破壊するということになるからだ。


『そうだな・・・大事な事であるし、お前達の使命にも関わる事だからな。』

『僕達の使命・・・』

『まず、神の目的だが・・・それは人類に愛と赦しを啓蒙し、浸透させることで意識次元の上昇を果たす事だ。』


『スピリチュアル界隈で言われているアセンションってやつか・・・?』

『無関係ではないな。これはお前も感じてる事だろうし、実際に気づいている人も多い事ではあるが、人類の歴史は所有欲と己のエゴを満足させるための争いの歴史だ。そしてそれは人間の本質であり、その魂の本質でもある。』


 魂の本質・・・その言葉を聞いた瞬間分かった気がした。

エンテュメイシスの罪とはきっと、この本質に関係しているのだろう、と・・・。


『その顔は何か分かった顔じゃな?』


 博史(ヌース)がニヤリと笑う。


『その本質が変わらない限り、人類はいつか自滅するのだ。それこそが世界の終末だ。

 だが、そこまで行ってしまうと取り返しのつかぬことになってしまう。だから神は愛をもって人類を導き、その結果失敗に終わりそうであれば、神の監視役がメシアにその修整役としての使命を伝え、それでも駄目であれば世界をリセットするのだ・・・。』


『ホピ族の予言や各所で世界は何度も滅びているって言われてるけど、それって・・・』

『まぁ、そういうことじゃな。』


『神の目的が高尚であることは分かるけど、それって結局無慈悲じゃないか・・・』

『神というか、その魂の原初である天上人・・・名前を出しても差し支え無いだろう、テレートスは不器用なやつでな。失敗しては改善点を探り、何度も挑戦してるということじゃ。』


『何か妙に人間臭い奴だな・・・』

『まぁ、そう言うな。だからこそ支えてやって欲しいんじゃ。』


 テレートスの目的はきっと人類の救済なんかではなく、その魂の原初であるエンテュメイシスを罪から開放したいんだろうな・・・。

 そしてエンテュメイシスを救うことは陽子を救うことにもなる、それであれば迷う事なんて何もない。


『分かった、僕に出来ることは全力を尽くすよ。』

『そうだね、人類の救済なんてこれ以上無いくらいやりがいがあるよ!』


 エンテュメイシスのことを知らない陽子は純粋に人類を救う気でいるが、実際に本当に救われるのが自分だなんてのは知らないほうが良いからこれで良いだろう。


 そして親父達がムー大陸やアトランティス大陸でやって来たことは、救世主(メシア)としての活動に他ならなかったことはよく分かった。

 正直神なんかよりもよほど直接的で影響力があったように思う。


『お前さんもこれなら良かろう?』

『・・・』


 親父の問いに対してウィルは答えなかったが、大筋としては良いのだろう。


『さて・・・大幅に話が脱線してしまったが・・・オリハルコンを使うタイミングについてだ。』

『あぁ、そうだった!思わぬ形で重い話が出て来たからすっかり忘れてた・・・。』


『端的に言ってしまえばお前の力だけでは心もとないから儂とアレーティアも協力しようって話だ。

 そうなると、"マクラ共和国ラピュタ化計画"にオリハルコンを使ってしまえば、その後ムー大陸の次元転移までの間にレムリア大陸が消えてしまう事になるだろう?』

『あ・・・そういうことか。』


『うむ、オリハルコンの人工魂を抜いてしまえば、レムリア大陸、そして儂等が消えるまで10秒もかかるまい。』

『その間にムー大陸の次元転移を完了させないといけないってことか・・・それは確かにシビアだ・・・。』


『うむ、そのためにも残された時間でその作戦の詳細を詰める事と、お前にブラックホールの真の力について教えておこうと思う。』

『ブラックホールの真の力・・・!?』


 ブラックホールの真の力って・・・?破壊と再生の力って言ってたけど他にも何かあるのだろうか?

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