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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第三十七話(第六十七話) 撃退

 海が氷河となり、浸水が止まったことに気付いたUFO達がどこからか集まって来る様子が見えた。


「さて、こいつらを何とかしなければいけないが、光線タイプの核兵器となると発射されてから対処するのも難しいし困ったな・・・」

『・・・ブラックホールを沢山出して光線を引き付ける方法を提案します。』


 僕が困っているとウィルがすかさずアイデアを出してくれた。


「なるほど、ブラックホールなら光線も引き付けて吸いこんでくれるからな。それは良いアイデアだ。」


 僕はアロンの杖を手に、無数の小型ブラックホールを100mくらい先に展開する。


「ただ吸い込むだけじゃ芸が無いから・・・」


 そしてブラックホールと同じだけのホワイトホールも展開した。


「これでカウンター攻撃も可能だ!」


<< キュンキュン >>


 UFOの群れが光線を一斉に照射してきた。

すると光線は軌道を曲げ、ブラックホールへと吸い込まれた。それと同時に、ホワイトホールから出た光線がUFOに向かって照射される。


<< ドッカーーーーン!! >>


 光線のいくつかが見事にUFOに命中した。


「つとむすごーーーい!」

「ツトムやるでしゅね!」


 陽子とメイから賞賛の声があがる。正直言って良い気分だ・・・!


「よし、つとむに負けてられない!」


 そう言うと陽子が手に電力を溜め始めた。


「よーし、わたちも行きましゅよ!かぜさーーーん!おねがいしまーーーしゅ!」


 メイが叫ぶと突風が吹き、メイが吹き飛ばされて行った。


「うわっ 、メイ大丈夫か!?」


 心配を他所に、メイは空を飛ぶかのように風に乗せられてUFOに向かって行った。


「おりゃっ!」


 メイが2台のUFOの間近くに到着するとひと叫び。するとUFO同士がコントロールを失ったかのようにお互いに向かって衝突し、落下する。


 そしてメイは方向転換してこちらへと戻って来た。


「ただいまでしゅ!」

「今のは・・・磁気化か?」

「そうでしゅよ!」


 なんと、あんな大きな物体を磁気化してコントロールを失わせるとは・・・


「はは・・・メイはアロンの杖要らずだな・・・。」


 そうこうしていると陽子も電圧が十分上がったようで目に見えるほど陽子の周りに電気が帯電している。


「いっくよーー!」


 陽子がUFOの方に手をかざすと、激しい放電がUFOを襲った!


<< ドカーーン! >>


「おお、やるな陽子!」

「えへへ」


「今放電が一旦ブラックホールに吸い込まれてホワイトホールから放電してたけど、これ上手く使えばフェイントにもなるな。」


 修行を経てパワーアップした僕らにはUFO達は敵ではなかった。

目に見える範囲のUFOは瞬く間に撃破し、爆音が鳴り響いていた周辺は静けさに包まれた。


「わーーー!」

「ありがとうーーー!」


 気付くと洪水に流されていた人達がこちらを観戦し、声援を掛けてくれていた。


「ははっ、なんだか恥ずかしいけどお礼されるってのも嬉しいもんだな。」

「そうだね、今までは自分たちのための戦いだったり、タナボタで表彰されたりしてただけだもんね!」


 陽子も満面の笑みで嬉しそうだった。


 僕らは念のため他の堰止めが無事かも確かめつつ、浮遊島へと戻った。

 浮遊島に近付くと、UFOが何台か見えるが様子がおかしい。


「ん?あのUFO同士討ちしてないか?」

「本当だ・・・内輪揉め、かな?」


 残るUFOは3台で、そのうち1台がもう1台を撃ち落とし、残った2台が撃ち合って共に損傷し、墜落していく様子が見えた。


『ただいま、これは一体何が起きてるんだ・・・?』


 浮遊島に到着するなり皆に尋ねると博史(ヌース)が状況を答えてくれた。


『おぉ、(つとむ)帰ったか。いや、アスプロにヴィマナの撃退を任せていたんだがもたもたしとってな。ようやく今終わった所だ。』

『時間が掛かった割には周囲は無傷みたいだな・・・?』

『それは真理(アレーティア)がバリア張っとったからな。あれしき何でもない。』


 博史(ヌース)と話していると、戦闘が終わり疲れた様子のアスプロとノエルが近付いて来る。


『すみません、手こずってしまって・・・。非生命体の操作は得意なのですが、人工意識があるせいでなかなか思うように行かず・・・。』

『あぁ・・・そういえばアスプロさん初めて会った時、ゴーレム操ってましたね。』

『ええ、ノルンが人工意識を抑え込んでくれて、それで何とかなりました。』

『えっ、あっ、その、意識の波長を弱めただけですぅ・・・。』


 なるほど、この二人に掛かると意志薄弱な人は生命体でも操られそうだな・・・。ノルンさんだけでも大分敵を無力化出来そうだ。


『さて、とりあえず敵も撃退出来たしアロンの杖でマクラ共和国を浮上させる準備もこっちは整ったけど、他の状況はどうなんだ?』

『モーヴ中将とクラーク牧師からの連絡がまだです。国全体の意思決定ですからね、そう簡単には決まらないでしょう。』

『アスプロさん、そういえばオリハルコンの方はどうなんですか?』


『えっと・・・その事ですが・・・。』


 アスプロが博史(ヌース)の方をちらっと見てから慎重に答え始めた。


『オリハルコンの製造方法自体は分かり、道具さえあれば作れそうですが・・・少なくとも何の設備も無い現状ではどうにも出来ないです。』

『えっ、それじゃマクラ共和国の浮上は出来ないんでは!?』

『ですので・・・今回は既にあるものを再利用しようかと思います。』

『再利用?』


 アスプロは一息ついて改めて答える。


『はい、レムリア大陸の物質化に使ったオリハルコンを取り出して再利用するのです。』

『おぉ、成る程・・・!って・・・そうなるとレムリア大陸がまた幽玄界に戻ってしまうって事か?』


『えっ!?』


 この事に関しては陽子が大きく反応した。

それもそうだ、レムリア大陸が幽玄界に戻ると言う事は親父と母さんともまたお別れになる事を意味している・・・。


『レムリア大陸はずっと物質界には居られないから元に戻すとは言ってたけど、そのタイミングで待った無しって事になるのか・・・。』

『はい、そしてそのタイミングは非常にシビアになりそうなのです。』


 タイミングがシビアとは一体・・・?

今後の方針を左右する大きな話が続く・・・。

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