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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第二十七話(第五十七話) 再会

『ムー大陸の上空って・・・僕らここまで来るのに1か月くらい掛かったんですよ?今から行ったら世界が沈んじゃいますよ・・・。』

『レムリアの元々あった場所・・・あなたの言う幽玄界と、この物質界は座標が全く異なります。従って、幽玄界を経由すれば物質界での物理的距離は問題にはならないです。』


『そうなんだ・・・それにしても既にムー大陸の上空に居るって事は、ずっとそこに居たのですか?』

『そうとも言えるし、そうでは無いとも言えます。ムー大陸の上空はインド洋と同様、エネルギーが集まりやすく世界の境界が曖昧になりやすい区域なのです。』


『えっ!?そうだったんですか?』

『はい、インド洋やムー大陸に限らず、地形的に大地のエネルギーの集まりやすい区域は全てそうです。』


 ということは、もしかしたら僕らはわざわざインド洋まで行く必要は無かったということか・・・?


『あ・・・インド洋は海面が凹んでて上空にエネルギーが溜まりやすいのと同様に、ムー大陸は中央部に向かって盆地になって凹んでるからパラボナアンテナのような効果が生まれるのかな?』


 陽子がエネルギーが集まりやすい原因についての仮説を唱える。


『なるほど・・・流石陽子。』


 そんな話をしていると、レムリア人の脇に突如光が現れ、その中から半透明のもう一人のレムリア人と思われる人が出て来た。

 そのレムリア人は他のレムリア人同様半透明で表情は分からないが、暖かくもどこか懐かしい、不思議なオーラに包まれているのを感じた。


『あなたがアレーティアさんか?』


 モーヴ中将の問いに、新たに表れたアレーティアという名のレムリア人がゆっくり頷く。

 そしてモーヴ中将に話し掛けられたはずのアレーティアだが、モーヴ中将ではなく僕の方をじっと見ているように感じた。


『(・・・こっちを見ている・・・?)』


 そしてその表情の分からないはずの顔から一筋の涙が流れているように見えた。

 アレーティアはその涙をぬぐうような仕草を見せるが、涙をぬぐう前に一瞬上を向いて涙を留めるようなその独特な仕草に僕と陽子はデジャヴを覚え、思わず顔を合わる。


『・・・!』


『つとむ・・・今の仕草・・・アレーティアさんってもしかして・・・。』

『あ、あぁ・・・。』


 僕は一息飲み、脳内に浮かんだたった一つの疑問を投げかけた。


『違ったらすみません・・・アレーティアさん、もしかしてあなたは・・・僕らの母さん、ですか・・・?』


『えっ!?』


 一同がどよめく。


『!』


 アレーティアは驚いた様子でこちらを見る。


 一瞬戸惑ったような様子を見せたアレーティアだったが、意を決して言葉を紡ぎ出した。


(つとむ)、陽子・・・よく分かりましたね・・・こんな姿なのに・・・。』


 あぁ、やっぱり・・・僕は母に会えた喜びと、既に肉体が無いという現実に戸惑い複雑な感情が渦巻いた。


『母さん・・・ごめん、僕が来るのが遅かったばかりに・・・』


 何故か突いて出た言葉は母への謝罪だった。


『そうですね・・・随分長い事待ち続けました・・・。ですが、今日ここで力と陽子に会えたことで、これまでの全てが報われた気分です。ここまで来てくれてありがとう・・・。』


『う、ぅ・・・おかあさーん・・・・!』


 陽子が思い余ってアレーティアの懐に飛び込んで泣き付く。


『う、ぅ、ここまで怖かったんだよ、寂しかったんだよ・・・。でも、つとむが居たから・・・何とかここまで来れたんだよ・・・。』

『そうだったんですね・・・苦労かけてしまいましたね・・・。力も陽子を支えて来てくれてありがとう。』

『いや・・・僕の方こそ陽子に助けられてばかりで・・・。』


『積もる話もありますし、あなたたちに謝らないといけない事もあるのですが、今は一刻を争う時なので一旦置かせて下さい。』


 そうだ、今は振り続ける雨に対して何とかしなければいけないんだ。

僕は溢れそうになる感情と言葉をぐっとこらえ、話に耳を傾けた。


『ヌース・・・既に察しているかと思いますが、お父さんがムー大陸の上空であなたたちを待っています。今の状況を救うには私達だけでは力不足で皆さんの助けを借りたいのです。』


『やっぱり父さんも居るんだね・・・。』


 僕がそうぼやくとモーヴ中将が割って入る。


『真理様・・・いえ、今はアレーティア殿でしたか。このような形とはいえ、偉大なる先人にお会い出来、至極恐悦に御座います。』


 モーヴ中将が手を胸の前にかざし、敬礼をする。


『さて・・・先ほどそのレムリア人から(つとむ)くんと、エネルギー増幅補助の出来る者の助けが必要と聞いたが、我々全員行った方が良さそうか?』


『はい、物質体があれば私達だけでも何とかなったかも知れませんが、事態は思ったよりも複雑で出来るだけ多くの人の助けが欲しいので、是非皆さんに来て頂きたいです。』


『相分かった、それでは善は急げだ。そのアレーティア殿が出て来たゲートのようなものに入れば良いのか?』


 モーヴ中将が勇み足気味にゲートの方へと向かおうとすると、アレーティアが止めに入った。


『待って下さい。そのゲートは間接的に幽玄界を通過するため、物質体を持ったものがそのままそのゲートへと入ると物質崩壊を起こし、無事通り抜けられる保証がありません。まずは保護シールドを張りますので皆さん集まって下さい。』


 アレーティアの指示に従い皆集まるとアレーティアは手を上げ、その手から光が降り注いだ。

 暖かな光が(つとむ)達を包み込み、そして体の表面に張り付くように留まる。


『うわっ、何だこれ・・・体が虹色に薄っすら光ってる・・・。』

『これで暫くは大丈夫なので、皆さんゲートへとどうぞ・・・。』


 アレーティアに促され、僕らはゲートへと向かう。


 この先には一体何が待っているのか?父との再会を前に期待と不安が混じり、そしてムー大陸は一体今どんな状況なのか?頭の中に色々な事が巡りつつ僕らはゲートを通った・・・。

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