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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第二十六話(第五十六話) 信仰

『まだ他に秘密が・・・?』


 次々キリスト教の根底を覆すような秘密を暴露するアスプロ。

クラーク牧師も睨むように話に聞き入る。


『イエスは生前、マグダラのマリアにのみ漏らしたと言います。父なる神は私達の思うような存在ではないかも知れない、と・・・。』

『どういう事デスか・・・?』

『イエスは当時人々を救済すべく神聖な力を使いつつ、説いて回ったと言いますが、父なる神はそんな人々を必ずしも慈愛を持って救うのではなく、時には天罰を与えていたと言います。その事はイエス自身も悩み、時に非難を浴びる事となっていたようです。』


『キリスト教って基本的に信じる者は救われるけど、神を信じない人は救われない、なんだよな・・・確かにそれって神様の姿勢としてはどうかと思うよ。』

『何を言うのデスか!信じれば救われるなんて素晴らしいではないデスか!』


『・・・そして、イエスは父なる神は信心を集める事で何かを企んでいるのではないかと感じたそうです。』

『何か、とは・・・?』

『ここから先は邪推も含まれてしまうため明言は避けますが、私はこの話を聞いた時にキリスト教の神とアトランティスの神は同一なのでは?と感じたのです。』


『アトランティスの神って・・・忌み子を救ってアトランティス大陸を創造した神様ですよね?それだけ聞くと立派な神様に感じますが・・・。』

『ですが、結果的には他大陸との溝を決定的なものとし、今なお対立は続いています。そして、一方で救われた民衆はアトランティスの神を心酔しています。アトランティスにもキリスト教は存在しますが、それでもアトランティスの神は別格のものとして扱われる事がほとんどです。』

『・・・キリスト教というか、その元となったユダヤ教の神はユダヤ人を、アトランティスの神は忌み子を、わざと一方だけに肩入れして支持を集めているって事か・・・。』


『所詮神様なんて幻想だと思われるかも知れませんが、アトランティス人にとっては現実としてアトランティス大陸があるため、他の大陸の人達が思っているよりもかなり根深いのです。』

『なるほど・・・。』

『そしてその事に気付いた私は、先生の意思もありましたがアトランティス人を真の意味で解放し、救うべく活動を始めたのです。』

『それって・・・神様を否定する活動・・・ですか?』

『いえ、流石にそこまではっきりと否定すると角が立つことは目に見えていたため、表向きはグノーシス主義の活動として動いていました。』


『グノーシス主義って?』

『異端のキリスト教派閥デス。世の中に悪があるのは神が悪いからだというとんでもない責任転嫁思想デス。』

『・・・まぁ、曲解すればそうなりますがグノーシス主義にも至高神は存在し、悪い神様も居るって事です。そして、真理様はイエスの本当の教えとしては、このグノーシス主義が最も近いとも仰ってました。』


 クラーク牧師は尚もアスプロさんを睨む・・・。


『まぁ、元々異端の派閥ではあるため少々浮いた存在ではありましたが、完全に新しい思想というわけでも無かったので一見平衡状態を保っていたのですが・・・。いつの頃からかあからさまな嫌がらせをしてくる者が現れ、かなり活動が制限されるようになって行ったのです。』

『活動の真意がバレたのか・・・?』

『そうですね・・・間接的とはいえアトランティスの神を批判していましたからね。アトランティスの闇は私が思っていたよりも遙かに深かったようです。その後はいつでも誰かしらに監視されているようで、命を狙われるような事もしばしばありました。』


『・・・よく今まで無事でしたね。』

『排他主義で出入国にも厳しいアトランティスです。今回の脱出によって、私のアトランティスに対する裏切りは確定的となったので、私の戻れる場所はもう無いでしょう。そういう意味ではノルンを道連れにしてしまったのは悪かったと思っています。』


 アスプロの言葉に困ったような表情を見せるノルン・・・。


『・・・物質界の者たちが言う神とは天上人の総称であることが多いです。しかし、天上人には本当の意味で悪意を持った者は存在出来ないです。』


 暫く聞き役に徹していたレムリア人が話に割って入って来た。


『・・・そうなのか、となるとその真意は気になるもののまずは放っておいても問題無さそうだな。』

『・・・』


『さて、1つ目の話はこんなところで良かろう。まずは無事マクラ共和国へと戻り、アロンの杖の入手だ。そのためにも2つ目の話が大事になる。』


 その通りだ。世界を滅ぼし得る化け物と相対する前に世界が海に沈んで滅んでしまったら元も子もない・・・。


『二つ目の話である、今世界に降り続いている雨。今のままでは世界の大部分は海に沈んでしまうだろう・・・。この件に関し、我々の英雄である御人がレムリアへと向かうように言われたと聞いた。何か心当たりは無いか?』


『・・・レムリアが物質界へと引きずり出された時から、ヌースとアレーティアは既に動き始めています。』

『ヌースとアレーティアとは?』

『・・・私達の仲間です。』


『その者達が助けてくれると言うのか?』

『助けられるかどうかは分かりませんが、そのつもりで動いているようです。』

『それは心強いが・・・我々に何か出来ないだろうか?』


『・・・』


『・・・たった今ヌースより連絡が来ましたが・・・どうも厳しそうです。』

『・・・そうか・・・。』

『それで、(ツトム)さんと他にエネルギーの増幅補助の得意な者の助力が欲しいと言って来ています。』


『えっ、僕名指しですか?』


 一体何をさせようって言うんだ・・・?


『エネルギーの増幅補助という事であればノルンが最適でしょう。』

『ふえっ!?』

『ノルンさんがですか?』

『ええ、こう見えてノルンは非常に優秀なんですよ。』


 そうなのか・・・なんだか頼りない場面ばかり目にしてるけど、確かに錬金術の帆の操作を出来るのはノルンさんだけだって言ってたもんな・・・。


『補助というか分からないけど、メイが居れば不測の事態でも安心な気がするな。』

『任せなしゃ~い!』


『ヌースは既に現場に居るようですので、これからアレーティアが迎えに来るそうです。』

『現場って・・・?』


『・・・ムー大陸の中央上空です。』

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