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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第十六話(第四十六話) 直線

 会議室にてレムリアの所在についての議論は続く。


「あの、すみません。自分で言い出して何ですが、海面の低下が起こっているというのは私たちの元居た世界での話なので、まず重量がどう変化しているのかきちんと整理したいです。

 なので、地図上の分布図ではなく横軸を南北の距離、縦軸にオリハルコンの重量を置いてグラフ上で重量分布がどういう形になっているか確認させて下さい。」


 陽子、というか僕も含めてだが、昔からよく父からデータの可視化をするように言われていた。

 陽子のこの発言はそれを受けての事だろう。


「分かりました、少しお待ちください。」


 アスプロは陽子の要求に基づき、目の前の紙上にグラフを描いて行く。

次第に露わになって行く重量分布を見ながら、一同はある違和感に気付く。


「これって・・・重量分布、中央に向かって曲線ではなく直線的に減ってませんか・・・?」

「そう・・・ですね・・・。」


 僕らは皆、この変化は勝手に凸レンズのように中心部が最も数値が大きく、その前後は曲線的に変化しているものとばかり考えていたが、実際はそうではなかった。


「これは一体何を意味しているんだ?」


 モーヴ中将の問い掛けに対し、アスプロが答える。


「我々は・・・いえ、私はこの変化が曲線的と考えていたので先程も海面が曲線状に下がっており、その中心の話をしていたのですが、もしこの重量分布と同じであるならば、中心が空に向かって線状になる、もしくはこの分布と平行した形で何かがある事になります。」


 アスプロが紙上にイメージを描いて行く。

空に向かった線状というのはまるで海に一本の光の柱が立っているかのようなイメージで、平行した形は上空に三角錐の独楽のような物体が浮かんでいるようなイメージだった。


「ですが、実際には線状というのは理屈の上でおかしいので、平行形状ではないかと思います・・・。」

「線状は何がおかしいんだ?」

「この重量変化は重力が起因していると考えられます。そうすると、地球側の質量が局所的に減っているか、上空側に大質量体があり重力で引っ張り上げていることになります。

 そう考えると、重量変化の原因が上空の大質量体であり、かつ線状だった場合には中心部が極端に重力が減るようになり、今回の現象とは合わなくなるのです。」


 なるほど、月の潮汐力みたいな感じか・・・あれ?でも潮汐力って月のある側の海面が高かったような・・・?


「すみません・・・上空に重力を発する物体があった場合、海面って上がりませんか?」

「・・・確かに・・・そうですね・・・。」


 アスプロは指摘に対して考え込む。


「そうか・・・気圧か・・・。」


 アスプロが何かに気付き話し始める。


「これはあくまで仮説ですが・・・上空にある何かの力によって斥力が働き、海面が押し下げられている。

 気圧も上がっているのは、測定方法に原因があり気圧計の水銀がその斥力によって押し下げられているのであって、空気が押し潰されているわけでは無く、むしろ海面が下がっている分大気の層が厚くなり空気密度は下がる方向になっている・・・。

 すみません、何かの力とか自分で言ってて理論的に破綻しているのは分かっています・・・。」


「斥力って同電荷間か同磁極間でしか働かないですよね・・・磁石の同極同士だと仮定すると、海面や水銀が反発してその界面が下がる・・・空気は流動性が高いからその磁極から逃げて漏れ出す、って事でしょうか?そう考えるとあまり矛盾は感じません。」


「陽子さん、フォローありがとうございます。問題は対象が固体であれば兎も角、特定の磁極を持っていない物同士が何故反発しているのか、ですね。」


「もしかして、見えていないだけで実はそこに固体が存在しているとか?」

「え、それって通過してきた僕らもその見えない何かにぶつかる事にならないか?

 存在しているのに存在していないような・・・そんな幽霊みたいな物でも無ければ無理じゃないか?・・・ってあれ、幽霊のような物ってどこかで聞いたような・・・?」

「あ、量子の波動性!」

「あぁ、幽霊波とも言われてるアレか!」


 って・・・こんな話をしても皆付いて来れないんじゃ?


 周りを見るとアスプロさん他数名以外は明らかにぽかん顔だ・・・。

僕も全く分からない訳でもないからたまには量子論について語ってみようかな?


「えっと、量子・・・あらゆる物質の原点となってる物には粒子性と波動性があり、元々全ての量子は波動状態、つまり波の性質しか持ってないのですが、"観測"した瞬間粒子性を持つ、つまり物質となるわけです。

 この波動状態だと物質は広範囲に波の状態として"確率的"に存在しているため、そこには在るのと無い状態が重なり合って存在してるのです。

 ・・・で合ってるかな?」


 陽子に確認を取ると、陽子が手でOKサインを出している。


「つまりは・・・重量が減る場所では物質・・・レムリア大陸は存在しているが、波動状態であって目には見えなく、"観測"した瞬間物質になると言っているのか?」

「はい、そうなります。」

「だが、我々はずっとそこを見ていた筈だ。ここで言う"観測"とは何だ?」


「・・・多分ですが、これまでの経緯を考えると・・・オリハルコンではないかと思います。」

「!・・・だが、ここに来るまでにオリハルコンは在ったが何も起きなかったではないか?」


「あくまで推測ですが・・・確率波の最も確率の高い位置でオリハルコンが重なる必要があるのではないかと・・・。」

「中央部の上空、か?」

「恐らく・・・。」


「ふむ・・・多分や恐らくばかりだな。」

「すみません・・・。」


「いえ、ここまでハッキリとした仮説を立ててくれてありがとうございます。

 この仮説であれば三角錐の最も厚い部位で重力が大きく、その下にある物は重量が軽くなるという事実の証明と、一定の変化しか示さなかった表面温度と硬さはレムリア大陸までの距離に比例していたと言えます。」

「あ、そういう事か・・・。数値に変化の無かったものはレムリア大陸までの距離に関係してたのか。」


 残る問題は、肝心の物質としてのレムリア大陸の中心があるであろう場所や高さの特定だ。今度は流石に125万kmということは無いだろうが、果たしてどう特定するのか?


 課題が絞られ、いよいよレムリア大陸の実態に迫って来た実感が出て来た。

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