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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第十五話(第四十五話) 重力の穴

 データから南部よりも北部の方が中央に近付いているように見えることから、一行はより北を目指す。


 ここから北へと約500km進むとインドの南端に着くことから、インド近海まで北上することとなった。


 インド近海まで約2日で到着する見込みである。



ー 航海21日目 ー



 船はレムリアを探索すべく進んでいるが、僕らは変わらず訓練を続けていた。


「・・・よし、どうだ!」


 出航21日目にして初めて天井歩きに成功した!


「お〜遂にやったでしゅね!」

「へへっ、昨日あたりから何か調子が良いと言うか、体が軽く感じるから行けそうな予感がしてたんだよな。」

「そう言われてみると、わたちも何だか調子良いかも?」

「メイもか?」

「私は分からないな〜」

「陽子は精神体だからな、体調は精神状態と比例するんだろ。」

「えー、肉体も精神状態に左右されるじゃない?」

「まぁ・・・確かにな・・・。」


 メイは初日に軽くクリアした課題だが、一般的には1ヶ月は掛かる課題らしいから21日でもかなり早い方だ。

 とはいえ、身近に規格外が居るとどうしても劣等感を感じてしまう・・・



ー 航海22日目 ー



 船がインド近海へと到着したとのことで、この2日間のデータ収集結果の報告を聞くために主要メンバーが会議室へと集まっていると、通信技師が入ってきてモーヴ中将に話し掛けてきた。


「モーヴ中将、今朝のマクラ共和国への定期連絡ですが、電波にノイズが入り上手く繋がらないです。」

「何?錬金術の帆の磁力は切ってるか?」

「はい、そこは確認しており問題ないはずです。」

「そうか・・・分かった。暫く停泊するから、繋がり次第連絡を入れてくれ。」

「分かりました。」


 そう言うと通信技師は会議室から出て行った。


「待たせたな。我々は今インドの近海まで来た。ここまでの結果をまたアスプロ殿に報告してもらおうと思う。」


「はい、では早速話させて頂きます。

 今回はインド洋で起こる諸現象の中心地がどこにあるのかという所に焦点を置いて報告します。中でも比較的ハッキリとした分かりやすい数値としてオリハルコンの重量に着目します。


 こちらの地図はこれまでの航路と、それぞれの位置でのオリハルコン重量となります。

 航路はインド洋の東の端から西へ進み、オリハルコン重量の最も軽くなっているポイントから北上し、インド南端へと進んでいます。


 そしてこの北上ルートに沿ったオリハルコン重量を見てみると、インド南端から約200km南下したあたりが最も重量が小さくなっているのが分かるかと思います。」


「200km南というと、昨日通過したあたりか?」

「はい、そうなります。」


 会議室内がどよめく。


「昨日、何か変わった物を見た者は居るか?」


 会議には見張り台の監視役の者も参加しているが、誰も手を挙げない。


「・・・ではアスプロ殿に尋ねるが、重量以外のパラメータで何か変わったことは無かったか?」


「いえ、やはり気圧は重量と連動しているようで北上する事で高気圧傾向でしたし、密度はやはり低くなる傾向でした。」


「オリハルコンに何か目に見えるような変化は?」

「いえ、特にありませんでした・・・。」


 今度は会議室内に沈黙が流れた。


「これは困ったな・・・。」


 流石のモーヴ中将も今度ばかりはお手上げの様子で眉間に深い皺を寄せ、腕組みをする。


「何でも良いが、ここ3日程で何か変化を感じた事は無いか?」


「中将、先程の通信技師の話していた電波ノイズも変化の一つと言えないでしょうか?」


 ミシェルさんが先程の事を指摘する。


「電波は色々な原因で乱れたりするが・・・変化の一つとして着目しても良いだろうな。」

「では、調査対象として電磁波の波長や乱れも加えることにします。」

「うむ、宜しく頼む。他に何か無いか?」


「3日と言うと、つとむやメイが調子良いとか言ってた時期とも合うんじゃない?」


 陽子が小声で話し掛けてきた。


「ん?陽子さん、何かあるのかね?」


「え?あ、いえ訓練をしていてつとむやメイが調子良いって言ってたのが丁度この3日だったな、と思いまして・・・」


 ザワザワ・・・


「そういえば、最近何だか体が軽いな・・・」

「昨日ジャンプしたらいつもより高く飛べたぞ・・・」


 おぉ?心当たりのある人が多いらしい。

 あれ?ってことは昨日の天井歩きって実力では無い・・・?


「もしかすると・・・勘違いしていたのかも知れませんね・・・」


 アスプロが呟く。


「モーヴ中将、我々はオリハルコンの重量が軽くなっていたと思ってましたが、もしかするとオリハルコンの重量は変化しておらず、この辺りの重力が弱いのかも知れません。」

「何?」


「重力が弱い・・・?インド洋の重力の穴・・・」


 陽子が何やら思い出したようで話し始めた。


「アスプロさん、インド洋には重力の弱い重力の穴と呼ばれる領域があることが以前より言われていますので、もしかするとそれかも知れません。」

「そうなんですか?」


「はい、その重力の穴は科学的にはハッキリとした理由が分かっておらず、大陸プレートの影響だとか言われてますが・・・もしかするとレムリアに起因しているのかも知れません。」

「それがもしレムリアに関係しているとすると、何が考えられるかね?」


 モーヴ中将がレムリアとの関連性を尋ねる。


「あ、いえその事を思い出しただけでそこまで深掘った考察が出来るている訳では無いですが・・・ただ、この重力の穴の領域では海面が100mほど下がっているらしいです。」

「海面が・・・?」


「重量が下がっている範囲、つまり重力が減っている範囲が円形だとすると・・・データから見た限り直径1000kmほどの範囲になりますね。

 その範囲に対して海面が100m下がっているというのは・・・範囲に対しては僅かな低下ですね・・・。」


 アスプロがデータを見ながら重力の影響範囲を探っていると陽子がそれに対して応答する。


「でも、これって何らかのエネルギーの影響を受けて海面が下がってるのであれば、その中心に何かがあると考えるのが自然じゃないでしょうか?」


「ですが・・・1000kmの直径に対して凸レンズ状に100mの低下となると、海面が影響を受けているのは遙か巨大な球状の範囲の端の僅かな範囲ということになります。」

「あ・・・そうか、単純に直径1000kmの中心じゃないんだ・・・。」


 なんと・・・遙か上空に影響の中心があるのか・・・?


「今ざっと計算しましたが・・・約125万km上空が中心になります・・・。」

「「えっ!!」」


「月が確か約38万km上空だから・・・それより遙か上空・・・?」

「いやいや、流石にそれは無いだろう・・・。」


 さらっと月までの距離を言える陽子は流石だが、いくら僕でもそれはおかしい事は分かる。


「はい、地球の自転の影響を考えると、その回転速度に合わせて中心地も動くことになるので現実的ではないかと思います。」


 125万kmは流石におかしいと思うが、考え方はそんなに悪くない気がする・・・何か見落としてないか?というか、重力の影響を受けている範囲イコール海面が下がってると仮定してるけど、それが合ってるのか?


「あの・・・そもそも重力の影響範囲と海面の低下範囲って一致してるのでしょうか?」

「それは確かに安易には言えないですね。」

「であれば、まずは海面低下がどうなっているかきちんと調べませんか?」

「うん、それと上空を調べる事が確実であれば、その方法も考えておいた方が良いね。」


 話が発散しそうになったが、何とか建設的な方向性に軌道修正出来た・・・。

 会議はまだまだ続く。

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