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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第二章
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第十四話(第四十四話) データ報告

 ニューギニア島とオーストラリア大陸間の運河開通 (運河と呼ぶにはボコボコでかなり不格好だが・・・)に成功した僕らは3日後にはインド洋に出る事が出来た。


 オーストラリア大陸北部は陸地に近い事から飛行型の魔物にも何度か襲われたが、連合軍の猛者の前にはほぼ無力同然で撃退された。

 僕と陽子、そしてメイも(特にメイが)活躍し、周囲の信頼も着実に得られた。


 インド洋に入ってからは相変わらずの雨天続きではあるが、雨は次第に強さを増している感があり、本格的に彗星の水が落ちてきているのを実感させる。


 僕らは引き続き訓練に精を出しつつ、気圧やオリハルコンのデータを収集しているアスプロ達の様子を時折見に行き、両親の事やアトランティスのこと、錬金術の事について話を聞いたりしていた。


 そしてインド洋に入って1週間が過ぎた頃、インド洋の中央付近まで来たためこれまで測定したデータを元に方針会議が開かれる事となった。


「さて、我々はインド洋の中央あたりまで来たわけだが・・・アスプロ殿、今までの測定結果の報告を頼む。」


「はい。今回測定したデータは気圧の他にオリハルコンの表面温度、重量、ビッカース硬度、そして目視では分からない程度の変化があるかも知れないので主要な寸法を測定しました。」


・気圧の測定結果


「まずは気圧についてです。今回気圧というパラメータ変化に対してもう少し詳細な考察が出来るように気流、気温の他に空気密度も測定しました。


 まず、こちらの地図に気流の向きと気圧を記入しましたのでご覧ください。下の方の数値は我々がムー大陸へと向かっていた際に測定したもので、上の方の数値がこの一週間で測定したものになります。


 矢印が気流の向きを現しており、この矢印が向き合っている場所が一般的な考え方では上昇気流が発生することで気圧が下がる低気圧帯となり、矢印が反対向きになっている場所が下降気流となり、周辺に気流が流れ出る高気圧帯となります。


 そして高気圧帯と低気圧帯の気圧を比べて見るとある特徴が出てきます。下の方のデータのうちインド洋外れと中央部付近の高気圧帯同士を比べると、中央部付近の高気圧の数値が若干高いのが分かるかと思いますが、これだけだと誤差に見えない事も無いです。


 そして上の方の今回測定した数値を見ると、インド洋外れにある高気圧帯と中央付近の低気圧帯がほぼ同じ数値となっており、明らかに中央付近の気圧が高い事が分かります。」


「ふむ、これは前回聞いた話が実証されたことになるな。」


「はい、そして空気密度です。こちらは一般的には高気圧帯では密度が高く、低気圧帯では密度が低くなるものですが・・・データを分析して見る限り、インド洋中央に近付くと密度が下がっています。

 気温も一緒に測定しており、同時間帯のほぼ気温の同じ状態で測っているため気温による差では無いです。雨続きであるため湿度も一貫して90%前後です。」


「これは・・・何を意味しているんだ?」


「正直はっきりしたことは分かりません。理屈の上では気温か湿度が変わっていないといけないのですが・・・少なくとも測定出来る範囲では変化が見られないのです。」


「わかった。今議論しても何も進展は無さそうだから次の報告を頼む。」


・オリハルコンの変化


「次にオリハルコンの変化です。まず表面温度ですが、インド洋端から中央に近付くと1℃程度の温度上昇が見られましたが、より中央に近付いても変化は見られません。

気温は変わらないので変化したと言えばしたようにも思えますが、はっきりとした差ではないです。これは硬さも似たような変化を見せ、僅かに硬さを増しているように見えますが中央の方が明らかに硬いという傾向ではないです。


 次に重量ですが、こちらは明らかな変化がありました。気圧と同様インド洋中央に向かって少しづつ軽くなっています。これも気圧同様に地図上にプロットしてみると・・・やはり南側よりも北側の方が軽い傾向が見られます。」


「もし気圧と重量に相関があるとすれば、気圧も南側よりも北側の方がはっきりと高い傾向があるってことかな?」


 陽子が質問する。


「そうですね、気圧だけだと不純なパラメータも混じるためはっきりとした傾向が言えないところがありましたが、重量と同じだとすればそうなります。」


「もし中央付近が軽くなるのであれば、最も軽く飛べる場所、と言えますね。」

「はい、有力かと思います。」


「最後に寸法の変化ですが、3次元的な測定はこの船では出来ないので簡易的な縦横、高さのパラメータのみを測定したところ、1mm以下の変化ではありますがこれもインド洋中央に近付くと、縦横は僅かに縮み、高さが伸びています。」

「これは変化と言えば変化だが、この変化から何が言えそうか?」


「オリハルコンの形状変化は、そのエネルギーの性質によっても異なるので何とも言えないですが、インド洋中央付近のエネルギーが高い事は間違いないかと思います。」


「そうか・・・これで報告は終わりか?」

「はい、以上となります。」


「そうすると、中央付近ではっきりとした変化を見せるパラメータと、中央に近付くと変化するが、より中央に近付いても変わらないという2パターンのデータが得られたということか。」

「はい、そうなります。」


「では、この結果から次どうするべきだと思うかね?」

「まずはこの変化の真の中央がどこにあるか探りたいため、東西方向のデータから中央と思われる位置を南北に船を走らせ、南北方向の中央を探りたいです。」


「その中央に行けば何かがあるかもしれない、と・・・。」

「はい。」


「分かった。ではマダガスカルへと向かう前にまず船を南北に走らせよう。」

「ありがとうございます。」


 こうして会議が終わり、各自解散となった。


「つとむ、やっぱりオリハルコンの変化が鍵だったね!」

「あぁ、思い付きだけど当たってたようでほっとしたよ。

 でも、変化の仕方に2パターンあるってのが気になるな・・・。」

「うん、表面温度と硬さ。同じように中央に近付いてるのに変化しなくなるって何だか変だよね。」

「あと密度が理屈通りの挙動しないってのも変だよな。」


 この近くにはレムリアの秘密が隠されているのは確かだが、釈然としないデータが多い。これは一体何を意味しているのだろうか・・・。


 ひとまず南北のデータ収取結果を待つこととなった。

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