第十一話(第四十一話) 高揚感
モーヴ中将が部下にムーへの連絡の指示をし、再び話し始めた。
「レムリアへと急ぎ行くは良いが、海底火山と陸地の隆起の関係でインドネシア側からの渡航が困難な現状オーストラリアを南下するしかなく、そうするとインド洋に到着するまで1か月以上掛かるだろう。」
「この船には動力は無いのですか?」
「ああ、完全な帆船で風任せだ。」
「それは厳しいですね・・・。」
アスプロが少し考え込み、提案を出してきた。
「私たちの乗って来た船も帆船ではありますが、帆は錬金術で作られた特別なもので磁気を受ける事が出来、そのおかげで私たちは1週間でアトランティスからここまで来れました。
船のサイズは大分違いますが、それをこの船に移植すれば速度が上げられるのではないかと思います。」
「磁気というと・・・地球の磁気を受けると言うのか?」
「はい、普通であれば僅かな影響しか受けない地磁気を錬金術で強力な磁力を付与し、受けられるようにしています。」
磁気を付与・・・今まさに修行でやっている事と同じような仕組みか・・・。
「そこまで強力な磁気を発するとなると、船内の金属や電気機器にも影響を与えそうだな。」
「はい・・・なので、船内品の整理及び設置する場所を検討する必要はあるかと思います。」
「通信機器への影響は?」
「・・・恐らく使えなくなるかと・・・。」
「そうか・・・。」
「ですが、磁気を発するのは航行中のみですので、一旦止める事で通信は可能かと思います。」
「それであれば影響は限定的に出来そうだな。
よし、分かった。その案を受け入れよう。」
アスプロの乗って来た船の残骸から帆を移植する事になり、今日の食料調達は中止しアスプロ含め食料調達班総出で帆の回収に向かう事となった。
アスプロの船は火山を挟んだ反対側にあり、回収が終わる頃には夕方となっていた。
「モーヴ中将、回収完了しました!」
回収班のリーダーが回収完了の報告を行う。
「ご苦労。どうだ、使えそうか?」
「それが・・・幸い帆は無事で使える事は使えそうですが、アスプロ殿の船は小型艇でこの船の帆に使うとなると全体の1/5程度にしかならなそうです・・・。」
「アスプロ殿、これでどれくらい速度が上がると考えられるかね?」
「私たちの船であれば普通の帆船の10倍近い速度が出せますが・・・この船だと良い所2倍程度でしょうか・・・」
「そうか・・・それでもやる価値はありそうだな。」
帆を取り換える場所は船への影響を考慮し、最も高い場所となった。
船員は優秀だが、それでも帆の交換が完了する頃には日が暮れていた。
「ふぅ、もうすぐ終わりそうだ・・・でもこれをやってもまだレムリアには2週間以上掛かるんだよなぁ・・・。」
力も帆の回収及び交換の手伝いを行っており、陽子と一息ついていた。
「でも想定よりも早くなったし、1か月以上よりは良いんじゃない?」
「なんだよ、陽子はついて来ただけで何もしてないから気楽で良いな!」
「精神体だから仕方ないじゃない~」
「こんな時は精神体が羨ましいよ。
にしても、2週間でインド洋に行けるって言ってもそこからレムリアまでどれくらい掛かるか分からないし、そもそもレムリアの入口がどこにあるのかも分かって無いんだからもっと早くしないとまずいと思うんだよな・・・。」
「そんな事言ったってインドネシア側は塞がってて行けないんだし。」
「あ~もう、強引に水路でも作って進めないかな?」
「う~ん・・・インドネシア側まで一番近いところがどれくらいの距離かにもよるのかなぁ?」
そんな話をしていると調査隊が帰ってきたようでバギーの音が鳴り響いて来た。
「中将!今帰ったッス!(笑)」
一日中走り続けて来たと思えないほどの陽気さでヌーディ少将が帰還報告を行う。
「お疲れ様。道中何か変わった事は無かったか?」
「いえ、全然!ヌーディストビーチの一つでもあればテンション上がったんスけどね!ヌーディなだけに!(笑)」
「・・・何事も無かったようで何よりだ。」
「それよか中将、船に何かしてるんスか?」
「あぁ、実はな・・・」
モーヴ中将は今日の出来事、話した内容をヌーディ少将に伝える。
「お~!アツイッスね!!」
「何が熱いと言うのだ。」
「いや~、この任務完遂すればうちらもう英雄っしょ!(笑)」
「お前は気楽で良いな・・・。まだまだ課題は山積みだ。」
モーヴ中将とヌーディ少将のをやり取りを遠目で見ていた力がふと思いつき、話しに行く。
「あの、ヌーディ少将良いでしょうか?」
「ん?」
「この近くで一番インドネシア側に近い所ってどこにありましたか?」
「ん~、南に50kmくらいの所かな?火山と火山の合間で確かこっちから向こうまで200mくらいしかなかったと思うよ~。」
「200mか・・・」
「なんだね、真倉君。何か思いついたのかね?」
「あ、いえ少しでも早くレムリアへ到着する方法を考えてて、もし距離が近いようだったら無理やり船が通れるだけの水路作って進めないかな、と・・・。」
「あ~無理無理、溶岩が冷え固まってるから石掘って進むようなもんスよ。」
「大型の掘削機でもあれば別だが、厳しいだろうな。」
「上手く行くか分からないですが・・・僕の力であれば水路を作れるかも知れないんです。」
「ほう?」
僕はモーヴ中将にブラックホールの力の事を話した。
「なるほど・・・少々危険そうだが試してみる価値はありそうだな。」
「はい、正直水路作るほどのサイズのブラックホールを作った事が無いので何が起こるか分からないですが・・・一瞬であれば多分大丈夫だと思います。」
「どのみち南へ進むことになるんだ。道中で試してみよう。」
「はい、ありがとうございます!」
「なに、こちらこそ良い提案をありがとう。」
自分の力で道を切り開けるかも知れない。高揚感が力に漲っていた。




