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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第一章
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第三十話 出航

 翌朝迎えの車に乗り駅へと着くと、今回レムリア大陸へと行く派遣団の面々が揃っていた。


「藤枝さん、送迎ありがとうございました。例の件、宜しくお願いします。」

「はい、軍に申請してマクラ共和国の駐在に転属させてもらえたので大丈夫です。真倉さんもお気をつけて。」


「例の件って何?」

「あぁ、薔薇十字団の動きに一貫性が無いというか、矛盾した動きをしているように感じるから内情を探ってもらっているんだ。」

「矛盾?」

「うん、僕らを殺そうとしている動きとMの書や陽子の体を探しているという動きに一貫性が見られないから、一体真の目的が何なのか気になって。」

「そっか、Mの書は結果的に奪われちゃったけど、殺してしまえば目的が果たせないのにね。」

「まぁ、僕らを殺しても目的を達成出来る目途があるだけかも知れないけど、それでも頑なに殺そうとする理由にならないからね。」

「殺す事自体が目的だとすると、レムリア大陸を目指している間も安心出来ないね・・・。」

「そうだな・・・。」


 駅からフィジー港までは電車で約1日。

 南鳥島はムー大陸の外れにあったから丸2日掛かったが、東西に広いムー大陸の中ではフィジー港は中央に位置するマクラ共和国から南西のそこまで大陸の外れではない場所にある。


 汽車は朝出発し、丸一日走って一夜明けると港町に到着した。


 全体的に温暖な気候であるムー大陸だが、南部は赤道直下となるため一段と暑さが増す。


「え~諸君、私が今回のレムリア大陸派遣団団長を務めるマクラ共和国軍中将のモーヴである。決してモブではないので間違えのないように。」

「中将なのにモブ(笑)、ププッ(笑)」

「あ~、ヌーディ少将。君も人を笑えるような名前ではないので慎むように!」


 フィジー港で船に乗り込む前に軍の方から自己紹介が始まっていた。


「な、なんだか濃い人が多そうだね・・・」


 陽子が不安そうに声を掛けてくる。


「はは・・・そうだな・・・。」


「それから今回予定していた人員に加え、各国から数名派遣団に加わる事となったため宜しく頼む。彼らは戦闘員ではないので危険な状況では優先して保護してやってほしい。」


 確かに予め展開されていたリストよりも人数が多い。

 前に言われていた各国間のパワーバランスを考えて人員を投入してきたのか・・・?


「では、以前レムリア大陸に行った事のあるガラジオ大佐よりレムリア大陸の話をしてもらおうと思う。」


「ガラジオです。レムリア大陸に行ったことがあると紹介されましたが、正確には遭難して偶然辿り着いたのです。

 今から10年ほど前、プライベートで帆船を購入し仲間と一緒に世界一周をしようとしたのですが、インド洋沖で嵐に遭い船は遭難。偶然辿り着いた島にレムリア人がおり、困り果てていた私たちを見かねてレムリア大陸に招待してくれたのです。

 彼らは精神体で不思議な力を持っており、海に光の橋を架けその先にあるまばゆい光を潜り抜けた先にレムリア大陸があったのです。」

「光の先にあるということは、レムリア大陸は普通の大陸とは異なる場所にあるということか?」

「すみません、正直そこまでは分からないです。知っている方は知っているかと思いますが、マクラ共和国とレムリア人の間には国交があり、極まれにやってくるレムリア人よりレムリア大陸の状況は少し聞くことは出来ますが、彼らはレムリア大陸の正確な場所を教えようとはしないのです。」


 どういうことだ・・・?レムリア大陸は地図にも載っている筈なのに場所が分からないだって?


「あの・・・」

「ん?なんだね真倉君。」

「レムリア大陸って地図にも載っていますよね?あれは間違っているということでしょうか?」

「あぁ、あの地図は色々な証言を元にこのあたりの範囲にあるだろうという推察の元に描かれたもので、大陸の形を現しているのではないんだよ。」

「あ、そいうことだったんですね。」


 ガラジオ大佐が話を続ける。


「レムリア大陸から帰るとき、光を抜けた私たちはマダガスカル島に居たのです。」

「マダガスカルってバオバブの木やキツネザルで有名な?」


 何気に博識な陽子が言葉を挟む。


「そうです。レムリア大陸の名前のルーツがキツネザルの別名、レムールから来ていることからもマダガスカルがレムリア大陸と何らかの繋がりがあると見て間違いないかと思われます。」


「そうなると、我々の目的地はまずはマダガスカル島ということになるな。」

「はい、それで良いかと思います。」


「諸君、マダガスカル島となるとインド洋を抜けた先となるため長い航海となる。道中様々な困難に遭うとはとは思うが、力を合わせれば必ず辿り着ける!諸君の協力を期待する!」


 挨拶と行先が決まり、出航まで自由時間となった僕らはミシェルさんやメイと合流した。


「メイ、久しぶり!」

「久しぶりでしゅね!軍会議以来?」

「だな、あの時はあまり話はできなかったけど、会議が上手く行って良かったな。」

「ええ、でしゅがわたちだけレムリア派遣団に駆り出されて、他の連中が心配でしゅ・・・。」

「まぁ、向こうも軍の人達がついてるし何とかなるんじゃないかな?」

「アトランティス人は血の気の多い連中も多いでしゅからね・・・。大事にならなければ良いけど。」

「まぁ、でもレムリア派遣団はメイが居てくれて心強いよ。」

「えへへ、実はわたちも他に知り合いも居なかったからツトム達が居てくれて安心してたのでしゅ!」


 その後ミシェルさんにも挨拶し、先日目覚めた力の事も交え船上での修行方針について少し話し合った。


 そしてその日の午後、遂に出航となった。新たな地、レムリア大陸を目指して!

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