第三話 特異点
微小な黒い球体に吸い込まれ、激しく体が絞り潰され、バラバラになる激しい痛みを感じ、次第に意識が薄れていった。
激しい振動と振動がぶつかり合い、そしてぶつかり合った振動同士が更なる激しい振動を発し、また別の振動同士が絡み合い、泡のようなものを吐き出す。
「・」
「・・」
「・・・」
暫くすると時間が止まったかのような場所に着いた。
そこは静かな波の漂う凪のような世界で、時折水紋のような空間の動きを感じる。
周囲には沢山の泡が漂っているような感覚・・・。
意識があるか無いかよくわからないまどろみのような中、声?のような振動が感じられ、聞こえてくる。
「・・・あなたの魂は役割を果たしました・・・ 天界への帰還を受け入れます・・・」
『・・・了解しました、これより帰還を開始します・・・』
無機質だが柔らかな、でも確かに僕の声で返事が聞こえてくる。
え、ちょっと待てよ、天界への帰還ってそれって死ぬってことだろ・・・?
冗談じゃないまだ齢18、まだまだ人生これからって時に!!
僕は振り絞るように声?を発した。
「待ってくれ!僕はまだ天界には帰らない!まだまだやり残したことがある!」
声のような振動が返してくる。
「・・・あなたの魂は既に使命を果たしています・・・」
「使命・・・?僕の使命って何だ・・・!?」
「・・・」
答えは返ってこない。
ふと同じように巻き込まれたと思われる家族のことが頭?をよぎった。
陽子・・・父さん、母さんはどうなったんだろう・・・?
「・・・」
「・・・どうやらあなたの魂に新たな使命を下す必要が出てきたようです・・・」
「・・・新たな使命は・・・・・」
段々意識が薄れ、途中から声がよく聞こえなくなってくる・・・
『・・・わかりました・・・』
また無機質ながらやわらかな僕の声がかすかに聞こえてくる・・・
そこで僕の意識は途絶えた。
自分的解釈で事象の地平面を超えた世界を表現してみました。