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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第一章
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第二十話 売名

 さて、どうしたものか・・・。ウィルに代わってもらえば楽勝だろうけど、やりすぎると世界を滅ぼし得る者が僕たちだなんて言われかねない。


 それともう一つの打算としては、陽子の評価を上げて精神体の延命も出来ないだろうか、まずは僕の中でウィルと相談だな。


「ウィル、陽子が皆に見えるようにって出来ないか?」

『・・・静止状態であれば可能ですが、動的状態であれば触れていないと不可能です。』

「そうか・・・あと、陽子に何かしらの技を使わせる、もしくは使っているように見せかけることは?」

『・・・出来ます。』

「よし、それなら・・・」

※力の中での会話はここまで


「陽子、ちょっと良いか?」


 僕たちは軽く作戦を立てて戦いに臨む事にした。


「うぅ・・上手く出来るかな・・・」

「ウィルに任せておけば大丈夫だって!」

『・・・お任せください。』


「おい、まだか!?」


 アメリカ陸軍大佐は既に檀上で待っている。


「すみません、タイマンでということでしたが、ここにいる僕の妹と2人で戦っても良いでしょうか?」

「ん?妹なんて見えないが・・・」


「ウィル、頼む。」


 僕が心の中でウィルに頼むと、陽子の姿が皆に見えるようになった。


「うお・・・これは驚いた。」

「彼女は今は訳あって精神体になっているのですが、僕の力で見えるようにしました。」

「なるほど・・・そんな特技もあるわけか。OK二人でもいいぜ!」

「ありがとうございます。」


 そして、僕の評価を高めるためのもうひと手段・・・


「なるほど・・・拳と脚で戦うスタイル、特に左足での蹴りが得意なようですね。」


 ウィルを通じて段位を確認したところ、手と脚の段位がやや高く、特に左足が高そうだ。

 そしてここでウィルと交代だ!


「ふっ・・・見ただけでそこまで分かるとはな。これは楽しそうだ!」


「では、いくぞ!」


 大佐の掛け声と共に戦闘が開始された。


 大佐はパンチとキックを織り交ぜるマーシャルアーツの華麗な攻撃を繰り出してくる。それに対し、僕と陽子は手をつないだ状態でダンスを踊るように軽やかに避ける。


「どうした、避けるだけじゃ勝てないぞ!?」


 ウィルは一歩下がると大佐に向けて陽子を振り回し、そして遠心力が掛かった状態で陽子が蹴りを繰り出す。


「くっ・・・?」


 当然のようにガードされるのは予定通り、仮に当たっても精神体の陽子の蹴りでは軽すぎてダメージにならないだろう。

 ガードしたが思いのほか蹴りが軽くて戸惑った大佐の一瞬の合間、陽子の蹴り脚を軸として残った遠心力で大佐の頭上に陽子が浮き上がり、そして大佐の頭に手をかざす。


<< バチ!! >>


 強烈な閃光を放ち、そして静かに大佐が沈んだ。

 そしてウィルと再び交代する。


「お、おい大丈夫か?死んでないだろうな!?」


 アメリカ軍のお偉いさんと思われる人が声を上げる。


「大丈夫です、気絶しているだけです。スタンガンのように電撃を打ち込んだので暫くは目を覚まさないかとは思いますけど。」


 陽子が説明すると、場がどよめいた。


「ちなみに彼女の名は真倉 陽子、僕と共に世界に福音をもたらすと予言されている子です。」

「おぉ・・・!」


 場の空気が明らかに高揚しているのが分かった。


 この模擬戦で僕たちに懐疑的な人たちもとりあえず納得してくれたようで、僕たちは無事レムリア大陸の派遣団に加わることとなった。


 出発は1週間後ということで、僕たちはこの間に出来ることを整理した。


①国立図書館にて父さんの著書の調査

②陽子の精神修行

③陽子の精神体延命のための売名活動


 この1週間という短期間を考えると、この際②は差し置いても①と③、特に③はレムリア大陸派遣がどのくらいの期間になるかも分からないので凄く重要だ。


 先ほど確認したところ、陽子の精神体寿命が約135日となっており、会議の中での売名行為で35日ほど寿命が延びたようだ。

 出発前に1年くらいにまで延ばしたいところだが・・・。


 あと出来ることと言えば、一番効果的なのはメディアを使うこと。先ほどの一件もメディアで報道してもらえばかなり効果があると思う。

 それに関しては実はウィルを通じて良いショットを念写し、藤枝さんにマスコミに渡してもらえるよう既に根回し済みだ。


 その他に出来ることは・・・選挙なんかだと握手会とかやると得票率が上がると聞いたことあるけど、そんな地道な事やってる時間も無ければ効果範囲も限定的だ。


 すぐに効果的な手段が見つからないので、まずはメディアでの報道による効果に期待し、僕たちは父さんの著書調査をすることにした。



 そして次の日の朝・・・


<< ジリリリリン!ジリリリリン! >>


 大使館の宿泊所で宿泊していた僕たちのところに電話が鳴った。


「はい、もしもし真倉 力ですが・・・」

「あ、真倉さんですか!?藤枝です!」

「そんなに慌ててどうしたのですか?」

「今朝の新聞見ましたか!?」

「いえ、見てませんが・・・」

「大至急見て下さい!」


 なんなんだ・・・?不可解に思いながらも部屋のドアにあるポストに入っていた朝刊を取り出して広げてみた。


「えっ!?」


 新聞の一面には昨日ウィルが念写した写真と共にこんな見出しが躍っていた。


” マクラ共和国の創始者の子供、真倉 力と陽子は世界を滅ぼす者!? ”


 僕は再び受話器を取った。


「藤枝さん、これって昨日お願いした写真ですよね!?内容も伝えたんですよね!?」

「勿論です、あなた方が不利になるような事は一切言っていません!」

「そうすると、昨日居た僕たちに対して不信感を抱いていた人がマスコミに・・・?」

「恐らくそうだと思います・・・すみません、こんなことになってしまうなんて・・・」


 これはまずい・・・電話を切って陽子の様子を伺うと、新聞を見て顔が青ざめている・・・。


「くそっ、顔写真を出した事が裏目に出てしまった!」


「・・・そうだ、寿命はどうなってる!?確か悪名でも寿命が延びるとメイが言ってたが・・・。」


 急ぎウィルを通じて陽子の精神体寿命を可視化して見た。

 そこに映し出された数値は・・・


         << 7日 >>

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