表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第一章
2/84

第二話 設備見学 (挿絵追加)

 自衛隊の軍用機から降り立ち、南鳥島の地を踏みしめる。

 天気は快晴、気温は体感30度近い。う~ん、暑い!


「着いた〜!やって来ました南の島!」


 飛行機で自衛隊厚木基地より約3時間半、輸送用軍用機とはいえ中は結構広く快適で、僕たち以外にも30名前後が乗っていた。

 雰囲気的には報道陣が多く、僕らのような家族連れは他には見当たらない。


「あの人たち報道関係の人だよね?外国人記者も結構居そう・・・」

「そりゃあそうだろう、今回の設備は世界的にも注目を集めている期待の星だからな!」


 なんだろう・・・自分が取材されるわけでもないのに緊張してしまう・・・


「今日はこの後研究所内の食堂で昼食をとった後、午後は研究所の案内だ!

 明日は一日報道関係者への対応になるから、お前たちは観光なり海水浴なり、好きに楽しんでくるが良い!」


「わーい!」


 陽子が満面の笑みでひと際嬉しそうな声を上げる。

 こんなに喜んでくれるとこっちも嬉しくなってくる。


挿絵(By みてみん)


 少し待つと、滑走路内にシャトルバスがやってきた。

 滑走路から研究所の施設まで車で約10分とのこと。

 孤島なのでもっと狭いイメージだったけど意外と広い。


 僕らはシャトルバスに乗り、南国の澄み渡るようなオーシャンブルーの海を眺めながら施設へと向かった。



 到着した施設は出来たばかりの新築状態で非常に綺麗!


 この施設には今後世界各国の研究者が滞在することになるが、島には他にこれといった娯楽施設や外食できるお店のようなものは無いので、健全な精神状態で良い研究をしてもらうため娯楽室やトレーニングルーム、海が一望できる大浴場等かなり凝った作りになっている。


 各部屋も一人部屋ながらちょっとした高級ホテルを思わせる作り、また全室wi-fi完備で室内で快適に仕事も出来るようになっている。


「この施設もまた日本の顔となるからな、世界に日本のおもてなし精神を見せつけるために予算はふんだんに使わせてもらった!」


 と、得意げに話す父。


「はは・・・、親父やりたい放題だな・・・。」


 最後に食堂に案内されたが、これまた綺麗で一見すると大型ショッピングモールのフードコートのようだ。

 この食堂でも世界各国の様々な料理が食べられるようになっている。勿論、毎日何でも食べられるわけではなくある程度ローテーションのようだが。


 何を食べようか悩んだが、結局無難な日替わり定食を頼んで昼食を頂いた・・・。



 さて、午後はいよいよ実験施設の案内だ。


 実験施設は住居施設と繋がっており、長い廊下を超えた先の研究者がデータ分析を行っているオフィスのような部屋を左右に挟んだ先にあるエレベータで地下へと向かう。


 エレベータを出ると、そこは巨大なトンネルのような空間でその中央に大きな金属のチューブが左右に伸びており、トンネルの遙か奥まで続いている・・・。


 『ドクン・・・』


 装置を目の前にすると心臓の鼓動の高鳴りを感じた。

自分でも信じられないほど興奮しているらしい・・・。


 説明員の説明を聞きながら試験機に沿って歩く。


 試験機は本格稼働前だが、既にテストを兼ねて動いており今もこの金属チューブ内で陽子が高速周回しているらしい。


「この中で今も粒子の衝突が起こって、時折ブラックホールが生成されているのか・・・」

「うん、凄いよね。この中で正に今誰も見たことのない世界が広がって、いろいろな真実がこれから分かるんだよ・・・・。」


 隣を歩く陽子が目を輝かせながら装置を見ている。


 そうか、陽子はこれから父の研究室に所属して(とはいえ、学生だから4年次以降だろうけど)、この研究も深く関わっていくんだよな・・・。


 道を違えた自分はもう関係無くなっていくことが少し寂しく感じた。

 なんだかんだこの分野には興味があるので、未練が無いと言えば嘘になる。



      『ドクン・・・』



 再び心臓の鼓動を感じる。

だが、これは興奮というよりも何か胸騒ぎのようなものに感じる・・・。



      『ドクン・・・』



 説明員の声が段々と遠くなるように感じられ、視界が狭まっていく。

段々足取りも重くなり、その場に足を止めた。


 前を行く説明員と両親はそのまま歩き、段々と遠くなって行く。


「つとむ・・・・・?」


 隣を歩いていた陽子も足を止め、不安そうに僕を見つめている。



      『ドクン・・・』



 自分の中の異変を探るように、目を瞑って意識を体の内に集中する・・・。

意識の奥底の暗い暗い中を左右から光の粒が中央に向けて走り、中心部でぶつかって小さな閃光となって消える。


 繰り返し繰り返し光の粒が左右から走り、中央で閃光となる。

 その光が段々と大きくなるのと同時に、心臓の鼓動も高まって行く。


 気付くと息も段々と荒くなっていた。


「つとむ、大丈夫!?」


 陽子が寄り添うように僕をのぞき込む。



<< ビーーー!! ビーーー!! ビーーー!! ビーーー!! >>



 次の瞬間、空間内にけたたましい警告音が鳴り響いた。


「えっ!何!?」


 陽子が驚き、周囲を見渡す。



<< バキッ! ベキベキベキ!!!>>



 振り向くと金属チューブが潰れ、チューブの中心に向かって吸い込まれていく様子が見えた。


 僕は大きく目を開き、その様子を眺めた。


 チューブが吸い込まれた先を凝視すると、極々小さな、数ミリにも満たないような黒い球体が見えた。



 ・・・ブラックホール・・・!?



 そう思った瞬間、強烈な重力を感じ僕はあっと言う間に吸い込まれてしまった・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ