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Over the Holizon ‐ 力の意思 ‐  作者: 天沼 観影
第一章
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第十五話 無余涅槃流 (挿絵追加)

「なるほど・・・既に伝承にある内容に心当たりがあり、どうすべきかも見えてきているという事ですね。

 そうなると、あとは具体的にどう行動に移るべきかになりますが、もうここまで話が見えてきているのであればもう私の管轄領域ではなく、軍部の方に任せた方が良さそうですね。」

「はい、軍事行動としてどうすべきかについては明日主要な方々が揃い次第会議を開催するよう既に働きかけております。」


 藤枝さんはそう発言すると、こちらをちらりと見た。


「今回の件に関し、彼らの力が必要ということであれば、まずは会議の前に彼らの潜在能力を測ろうと考えております。」

「なるほど、それは確かに必要ですな。」


 な、なにをさせられようとしているんだ!?


「そういう話であれば、私が案内しようと思います。」

「彼女の名はミシェル、先ほど話した無余涅槃流武術の師範代です。」


 藤枝さんにそう紹介された女性は東南アジア系のエキゾチックな雰囲気を醸していた。


挿絵(By みてみん)

ミシェル 3●歳 ♀ 無余涅槃流師範代


「それではこちらへとどうぞ。」


 僕らは言われるがまま、訓練室と思われる場所まで案内された。


「先ほど紹介されたミシェルと申します。これから無余涅槃流武術についての説明と、あなた方の潜在能力を確認したいと思うのですが・・・。その前に確認したいのですが、先ほどの会議の途中 (つとむ)殿から出て来た方は・・・何でしょうか?」

「あぁ、紹介していなかったですね・・・。彼の名はウィルと言いますが、僕の第二人格と言いますか・・・肉体を共有する精神体です。」

「肉体を共有する精神体・・・?初めて聞くケースですね・・・。諸外国で蔓延しているという妖憑きとはまた違うのでしょうか?」

『・・・』

「いや、彼には知性があり僕のパートナーのような存在なので、それとは違うかと思います。」

「そうですか・・・それではウィル殿も協力者の一人と考えさせて頂きます。」


 やけに無口なウィルが気になりつつも無余涅槃流武術の説明が始まった。


「まず、無余涅槃流武術の基本概念を説明させて頂きます。無余涅槃流は武術である前に、開祖である真倉 真理様の悟りの境地より導き出されたこの世の真理を理解する事がまず重要になってきます。言葉で聞いて理解するのと実践するのとでは全く異なりますが、理解する事で真理に近付くのも確かです。」


 母さんの導き出した真理か・・・母さんはこちらに来て、理想を実現したんだなと、ふと感慨深く感じた。


「まず悟りには52段の段階があり、基本誰しもが最初は0段になります。」

「基本ということは、最初から0段でない人も居るのですか?」

「はい。人の魂は輪廻転生を繰り返すことで魂が磨かれて行きます。大体500回ほど輪廻転生を繰り返し、最終的に魂は天界へと帰る事になるのですが、転生回数が最終段階に近い方は生まれた時から既に有段の状態となっています。また、精神体として生を受けた者もまた有段、この場合は20段以上の状態で産まれてきます。」

「あの・・・後天的に精神体となった場合はどうなのでしょう・・・?」


 陽子が自身の状態が気になる様子。


「後天的に精神体になるケースは通常あまり無く、死後生に対して強い未練を残した場合に精神体と言いますか、霊体がその場に留まる事がありますが、通常その場合は動くことが出来ないです。自由に動いている時点で精神体として生まれた者とあまり差異は無いのではないかと思います。」


 となると、陽子は既に20段以上は確定なのか・・・あ、ウィルもか。


「また、これも稀な例になるのですが、神の光から出て来た者は神に近付くことで真理を体感し、段位が高まるとも言われています。正にあなた方の事です。」

「・・・分かる気がします。あそこは何とも言えない一体感と言いますか・・・全てと繋がっている感覚を覚えました。」

「ふふっ、私も体感したいものです。」

「いや、かなり酷い目に遭うのでお勧めは出来ないです・・・。」


「話を戻しますが、0段から52段まであると言いましたが0段から1段の段階に登るだけで世界が全く異なります。物事への執着や煩悩が薄れ、感謝の心や他者への施しの心が芽生えます。若い魂の方はこの1段階目に達するのに大変苦労するのですが、マクラ共和国では全国民が義務教育として1段階目に達しています。

 これが段位が上がり、10段を超えてくると物事の真実を感じ、20段階目に達すると真実が見えてきて己が何なのかを悟ります。30段階目まで達すると他己の境地に至り、己と他者が何なのかを悟り、40段階に達すると他者を幸福に導くようになりますが、40段までは己の研鑽を怠ると段位が下がります。41段目まで達すると不退転となり、何があっても崩れない己が出来上がります。また、ここまで達して全段階の中央地点と言われます。」

「全部で52段なのに、41段でやっと中間地点ですか・・・。」


「はい、ですが41段以上に達した方は歴史上でも数えるほどしか居ません。現在41段以上に達しているのは連合軍元帥のみになります。軍の話関連で言うと、将校クラスの方で10段に達している程になります。」

「将校でも10段・・・思った以上に段位を上げるのは難しいのですね。」


「10段でも武術に応用すれば目に見えない動きを察知出来るようになり、訓練次第で無余涅槃流を持たぬその道の達人とも渡り合えます。20段に達すると脳のリミッターを解除出来るようになり、身体能力が各段に上がります。勿論、それに耐えられる体があってこそですが。また、目に見えぬものも見えるようになり、精神体なども見えるようになります。」


「なるほど、陽子やウィルが見えている方は20段に達しているのですね。」

「そうです。そして30段を超えると己だけでなく、周囲をコントロール出来るようになり、40段を超えるとその範囲が各段に広がると言われています。」

「周囲をコントロール?」

「そこはこの後話す具体的な内容に関わるので一旦置かせて下さい。段位ですが、51段までは周囲のコントロール範囲の拡大になりますが、最終段位である52段に達すると肉体から解放され宇宙と一体化出来るようになると言われています。」

「宇宙と一体化って・・・具体的に何が出来るようになるのでしょうか?」

「52段という段位は歴史上真理様しか到達していない上に、真理様自身は無余涅槃流を武術として活用していなかったため、事実上誰にも分からないです。」


「なるほど・・・ふぅ・・・」


 無意識にため息が出てしまった。無余涅槃流を極めるととんでもない事が出来るようになることは十分に伝わった。

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