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幕間:ドラゴンの助け

 リヴァイアサンのシュエの視点です。

 戦いは混沌を極めていた。

 私達が派遣されたのは、ひときわ魔王の出現が集中しているところだった。

 と言うのも、私は、ただの冒険者ではない。リヴァイアサンと言う幻獣であり、通常の冒険者と比べても、ありえないくらい強いステータスを持っている。

 だからこそ、激戦区に送られた。いや、送ってもらったわけだけど、流石にこれはきついかもしれない。

 別に、攻撃が激しすぎてやられそう、と言うわけではない。

 私は周囲に水人形を展開させて守らせているし、仮に攻撃を当てられてもリヴァイアサンの防御力はかなり高い。

 一緒に来ているノクトも、フェニックスと言う種族な関係上、死んでもすぐに生き返れるという特徴を持っている。

 レベルだってめちゃくちゃ上げてもらったし、これで負けるなら、それこそ粛正の魔王でもないとおかしいわけだ。

 ただ、攻撃自体は痛くなくても、周りの被害は尋常じゃない。

 なにせ、相手が複数体いるのである。

 ただでさえ、魔王なんて一体でも相手にするのが難しい相手なのに、それが数体いるのだから、その攻撃は大きな被害をもたらす。

 もはや、辺りはこの世の地獄と言ってもいいくらいの様相を呈していた。


『ねぇ、これこの後ふっこーできると思う?』


『いや、無理だろ。汚染がとんでもないし』


 魔王の一体が毒を吐きまくっているのもいけない。

 これじゃあ、仮に倒せたとしても、この地は死の土地になってしまうだろう。

 なんとも迷惑なことだけど、仕方ないことではある。


『みんな避難してるんだよね?』


『そのはずだ。流石に、この数を現地人に任せるのは荷が重すぎる』


 いくらアリスさんが強化したとは言っても、流石に私達ほど強くはない。

 と言うか、こんなの食らったら即死だろうし、私達みたいな耐性がないとまともに立っていることすら難しいだろう。

 だから、こいつらは私達が対処するしかないのである。


『いつまで耐えればいいのかなー』


『さあな。アリスが元凶を葬ってくれるまで、じゃないか?』


『気が遠くなりそうだね』


 一応、アリスさん達は神界に向かったらしい。

 元凶である、ファーラーを倒すために、精鋭であるいつものメンバーを連れて行った。

 果たして、神を倒せるのかどうかはわからないけど、できなきゃこの世界は終わりである。

 そう考えると、かなり重要な役割だよね。無事に帰ってきてくれるといいけど。


『……ん? なんか来たな』


『え?』


 しばらく戦っていると、後方から何者かが迫ってくるのを感じ取った。

 ちらりとそちらの方を覗いてみると、空に浮かぶ、無数のドラゴンの姿を確認できた。

 新手? いや、確か、アリスさんが、エンシェントドラゴンが味方してくれるとか言っていたような気がする。

 どうやら、援軍に来てくれたらしい。これは助かる。


『シュエ、危ないぞ』


『え? わわっ』


 よそ見をしていたせいか、その隙を狙って魔王の一体が波動砲みたいなのを放ってくる。

 水人形は、細かい攻撃はかなり防いでくれるけど、高火力の薙ぎ払いとかは防ぐのは難しい。

 まあ、当たっても大丈夫だとは思うけど、ちょっと油断してしまった。

 ここはライフで受けると、身を固くした時、不意に目の前に何かが割り込んできた。

 それは、波動砲を一身に受け止め、そのまま防ぎきってしまう。

 これも援軍?


『ありがとう、助かったよ』


『気をつけないと危ないよぉ?』


 そう言って、振り返ったその姿に、私は思わず息を飲んだ。

 まるで岩山と見まがうほどの巨体ではあるが、その背には小さな翼が生えており、ドラゴンであるということがわかる。

 アースドラゴン。ドラゴンの中でも、防御に特化した種族であり、魔物としても登場する幻獣の一体。

 しかし、それはただのドラゴンではない。特徴的な喋り方と、顔についた一筋の傷は、私達の仲間の一人だった。


『タプル!? なんでここにいるの!?』


 私達は、元々三人でプレイしていた。

 『スターダストファンタジー』では、本来は四人で一パーティが理想ではあるけど、全員が幻獣と言う種族である関係上、必ずしも四人でやる必要はないと感じたし、そもそも人もいなかった。

 だから、私達は三人で一パーティであり、そのメンバーの一人が、タプルである。

 この世界に来てから、全くと言っていいほど見かけなかったのに、一体どこにいたんだろうか。

 もしかしたら、もう死んでしまっているかもしれないと思って、とても心配していたのに。


『助けに来たからかなぁ?』


『そ、そうじゃなくて、今までどこにいたの?』


『んー、島? みたいなところにいたよぉ』


 相変わらずのんびり屋と言うか、ふわっとした言い方である。

 色々聞きだしたいが、今は魔王の相手をする方が先決である。

 ちゃんと生きていてくれたことを喜びつつも、まずは目の前のことを片付けようと行動を開始した。


『後で色々聞かせてもらうからね!』


『はーい』


 タプルの役割は、元々タンクである。

 と言っても、タプルは私達のように、アリスさんに鍛えてもらったわけではない。

 正直、レベルも低いままかと思っていたんだけど、普通に攻撃を耐えていた。

 自力でレベルアップした? 確かに、この世界でも、教会に行けばレベルアップはできるみたいだけど、だいぶ効率が悪かったはず。

 それとも、幻獣ならではの方法があるのだろうか。よくわからない。

 タンクが加わったことによって、安定性がかなり増した。

 今までは、いくら水人形があるとは言っても、全方位に対処することは難しかったからね。

 スキルも健在なようだったので、ほとんど魔王の攻撃を完封することができた。


『ふぅ、なんだか弱くなってきた?』


 戦うこと数時間。

 正直、HPはどうとでもなっても、スタミナまではどうにもできない。

 このままでは、動けなくなって嬲り殺しにされてしまう可能性もあるかと思ったけど、そう思っていた矢先に魔王が弱体化した。

 アリスさん達がやってくれたのだろうか。よくわからないけど、これはチャンスである。

 一気に魔王のHPを削り、倒してみると、今度は復活しないことも確認した。

 ようやく戦闘が終わる。そのことに、私はようやく安堵した。


『これで、終わりっと』


 最後の一体も倒し終え、辺りに静寂が訪れる。

 疲れた。本当に疲れた。

 これ、もし人間とかの種族だったら、とっくにスタミナが尽きていたかもしれないね。

 あえて選んだ幻獣と言う種族が、役に立ったのかもしれない。そう思うと、イレギュラーなプレイも悪くないなと思う。

 まあ、ゲームマスターの負担がやばいから、あんまりやらない方がいいんだろうけど。


『ようやく三人揃ったな』


『だね』


『僕もみんなに会いたかったよぉ』


 落ち着いたところで、三人で集まる。

 リヴァイアサン、フェニックス、アースドラゴン。本来なら共に過ごすことなどないであろう種族が一堂に会していると思うと、ちょっと面白い。

 ようやく再会できた喜びもあって、自然と笑みがこぼれる。

 やっぱり、三人揃ってないと締まらないよね。

 そんなことを思いながら、しばらく笑いあっていた。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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[一言] みんな再会できたんだ!
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