表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/677

幕間:スキルの確認

 主人公、アリスの視点です。

 王都クリングベイルを出発してからしばらく経った。

 出発の際、馬車を用意するとも言われたが、俺にとって馬車はただ座り心地が悪いだけの遅い乗り物でしかない。明らかに歩いた方が快適であり、それに乗せて行ってもらうのも申し訳ないので断った。

 それにしても、いくら馬車がそこまで速くないとはいえ、遅い車くらいの速度はあるのに自分で走った方が速いって異常だよな。

 長時間走っていても疲れないし、その点においては物凄く便利な体である。

 まあ、デメリットが大きすぎてあんまり嬉しくはないけど……。


「さて、暇だし、少しスキルの確認でもするの」


 普通に街道に行ったのでは走っているところを目撃される可能性もあるので、方角だけ確認して後は道なき道を進んでいる最中である。

 ある程度走ったので今は歩きだ。だからこそ、前を注視する必要があまりなく、考え事をするにはうってつけの時間である。

 さて、ここ最近でスキルはたくさん増えた。特に、【シャーマン】のクラスになったことによって得られたスキルはこれからも有用に働くはずである。

 まず、【スピリットリンク】のスキル。

 これは、相手の魂と繋がることで、相手の思考を読むスキルだ。

 『スターダストファンタジー』では、対象からの攻撃に対する回避率の上昇と、対象への攻撃時の命中率の上昇の効果があった。

 まあ、この世界においては効果の方はおまけで、相手の思考を読むことができるというのがかなり有用だろう。

 一応、【スピリットリンク】をするためには相手と対面する必要があるが、別に接触する必要はない。ただ見つめるだけで、相手の思考を読むことができるわけである。

 これをすれば、タイマンの戦闘においてかなり有利に立ち回れることだろう。

 まあ、俺の武器は弓なので、タイマンで戦うことはあんまりないとは思うが。

 続いては【コール】だ。

 【コール】は死した魂を呼び出し、自分の体に降ろすことができるスキルである。

 『スターダストファンタジー』での使い方は、主に英雄と呼ばれている魂を呼び出して、その能力を自分でも使えるようにするという使い方をする。

 降ろす英雄の魂によって、命中率が上昇したり、ダメージが上昇したりするわけだ。

 ルミナスさんの時はルナサさんの魂を下ろすのに使ったけど、本来はバフをかけるためのスキルである。


「そういえば、あの時は凄く感情が不安定になったけど、使って大丈夫なの?」


 ルナサさんの魂を下ろした時、目の前にいたルミナスさんがとてもかけがえのないものに見えて大泣きしてしまったことを思い出す。

 あれは多分、長年母親に会えなかったルナサさんの気持ちが爆発した結果なんだろうけど、もしそう言う精神的な不安定さをもたらすのが普通ならば、あまり使いたくはないスキルだ。

 ああいう場面ならばともかく、戦闘中だったらそんなことしてたら隙を晒すことになってしまう。

 もちろん、『スターダストファンタジー』ではそんな設定はなかった。だから、『スターダストファンタジー』で使われている既存の英雄の魂だったら、感情の噴出は起こらないのかな?


「うーん、とりあえず、試してみるの」


 ルナサさんを助けるためとはいえ、取ってしまったのだから使いこなせるかどうか把握しておくのは大事だろう。

 俺はいったん足を止めると、心の中でスキルの発動を促す。


【コール:アーメイル】


 どこからか、何かが体の中に入ってくる感覚がする。

 あの時は大泣きしてしまったけど、今回はそう言うことはなく、ただ体に充足感を感じるのみだった。


「大丈夫そう、なの?」


 やはり、あらかじめ設定されているものなら特に感情の噴出が起こることはないのだろうか。

 アーメイルの効果は単純なダメージ増加だけど、確かに今なら攻撃したら強いんだろうなって感じはする。

 試しに弓を構えて適当な木に矢を放って見ると、抉れるようにして木が倒れた。

 普通の状態なら、刺さりこそすれど倒れることはないはずなので、やはり威力は上がっているらしい。

 【コール】は一度に一つの魂しか降ろせない代わりにバフの効果がそこそこ高い。だから、一応弓の威力を上げるのにも使える。

 これ以上火力を上げてどうするんだって話だけど、まあ、あるだけいいだろう。


「後は、【ネクロマンシー】、なの」


 【ネクロマンシー】は器となる体に魂を下ろして操るスキルだ。

 こういう使役系のスキルは基本的に肉壁として使われることが多い。

 一応、攻撃にも参加させることはできるけど、設定的にはその辺にいる雑霊とかの魂を降ろしてやるので攻撃力はそんなに高くない。

 もちろん、【コール】で降ろすようなちゃんとした魂を降ろせば攻撃力も高そうだけど、【コール】と【ネクロマンシー】で二ターン使うし、あらかじめ用意しておくにしても街中を歩かせてもいい見た目のものを用意するにはそれこそホムンクルスとかを作らなければならないわけで、ただ使うだけだったら【ネクロマンシー】でその辺のものに適当な魂を置いて肉壁にした方が、効率的なのだ。

 まあ、そもそも【ネクロマンシー】を使わずに【コール】でバフかけて殴った方が早いというのは置いておいて。


「これ、その辺の霊だとほとんど命令できないの」


 試しにそこら辺に落ちていた石に雑霊の魂を降ろしてみたけど、せいぜいできるのは動け、とか止まれ、とかくらいだった。

 まあ、それだけできれば壁にするくらいだったらいいんだけど、もう少し高度な事をやらせるならある程度意識がしっかりある魂を呼ばないといけないかもしれない。

 ルナサさんは人形の体に降ろしたけど、ちゃんと動けていたしね。


「後でちゃんとした体を用意しないといけないの」


 あの時はあれしかなかったから人形に魂を降ろしたけど、いつまでもあのままでは可哀そうだ。

 いくら思い出の人形とは言っても、やっぱり人間の体とは違うし、生活しているうちに不便も出てくることだろう。

 そのためには、【セージ】で取れる【ホムンクルスクリエイト】を使う必要がある。

 一応、【セージ】にはなれてるけど、それを取るにはまだ前提スキルがあるから取れてないんだよね。

 ヘスティア王国である程度経験値が稼げればいいんだけど。


「やっぱり、【ポーションクリエイト】みたいにポンてできるの?」


 クリエイト系のスキルは、素材と引き換えにアイテムを生成するという形になっている。

 王様を助けるためにエリクサーを作ったわけだけど、あの時は念じただけでポンと作ることができた。

 ポーションはともかく、ホムンクルスがポンと出来たら軽くホラーだけどな。


「どうなるかわからないけど、シリウスを見つけて、経験値も稼いで、それで取得できたら一番いいの」


 ルナサさんも大事だが、友達を探すことも大事である。

 シリウスが目撃されたのはもう何か月も前みたいだし、もしかしたらすでにヘスティア王国にはいないかもしれないけど、行かないわけにはいかない。

 できれば、まだ留まってくれているといいんだけど。そんなことを考えながら、歩くのを再開した。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点]  ネクロマンシーで小石に憑依させた雑霊(・Д・)読者は読んでて「こりゃ、喋る事も動く事も出来ないんじゃね?」と思ったら動くのは動いた!?イメージとしてはピョンピョン跳ね回る感じだろうか…
[一言] みんなも常識外れな速度で移動とかできそうだからなぁ
[一言] クリエイト系スキルは三分料理番組みたいに予め作りました というイメージが湧きました この世界だと、どんな原理で作れれているのでしょうか。不思議です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ