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第五百八十五話:魔王の出現

 第二十章開始です。

 それからしばらくして、とうとう魔王出現の報告が舞い込んできた。

 現れたのは、ヘスティアから北に行ったところにあるとある国である。

 アフラーク王国に行く際に通過した国の一つではあるが、そこまで接点はない国だった。

 一つの予想として、俺がよく現れた場所に出現するのではないかと言うのがあったけど、これを見る限り、そういうわけでもないんだろうか。

 まあ、そこまで信憑性のある予想でもなかったし、こればっかりは仕方ない。


「状況は?」


『魔王は山間部に出現し、その後配下を引き連れて近くにある村を襲撃、そのまま王都の方に向かって侵攻中だそうです』


『今は、現地にセンカとエンズが向かってる。住人達のレベルもそこそこ上がってるし、十分対処できると思うぜ』


 今回出現した魔王は、魔王の中で考えるとそんなにレベルは高くない。

 もちろん、魔王と言うだけでネームド級の強さは持っているわけだし、ネームドは『スターダストファンタジー』の世界で考えて、最低でもレベル10は欲しいことを考えると、強敵ではあるんだけど、一体だけだったらそこまで脅威ではない。

 なにせ、こちらはレベル600越えなんだからね。今回は大事を取って二人向かっているようだけど、本来なら一人でも軽く捻れる存在だろう。

 うまい具合に出現時期が被らなければ、プレイヤーの戦力だけで魔王を倒し続けることも可能かもしれない。

 現地住人も、俺がせっせとレベル上げをしたおかげで十分戦える水準になってきているし、後は下手に動いて犠牲者を出さなければ、今のところは大丈夫だと思う。


『報告だよ。サラエット王国で魔王出現だってさ』


「了解なの。送れる戦力はあるの?」


『連絡したら、ノクトさんが行ってくれるって。一人で大丈夫かな?』


「まあ、多分大丈夫なの。ノクトさんなら、万が一があっても問題ないだろうし」


 フェニックスであるノクトさんには【転生の炎】という復活スキルがある。

 よほどのことがなければ、HPがゼロになっても死なないだろうし、単騎で挑むには最も適した人材だろう。


「本格的に魔王の出現が始まってきたっぽいの」


 グレンが示したタイムリミットはつい先日突破した。

 時期を考えると、本当にぴったり合っていたってことなんだろう。

 その察知能力は一体何なんだと問い詰めたいが、味方であるうちは心強いことに変わりはないし、今は頼りにさせてもらおう。

 と言っても、今グレンは別のことで手が離せないみたいだけど。


「私もレベル上げを急がないと」


 現地住人のレベル上げに関しては、そこそこ進んできたとはいっても、まだまだ手を付けていない人は多い。

 もちろん、そもそも戦っていない人や、戦う気がない人のレベルを上げる必要はないし、上げようとしたところで経験値は入っていないだろうからそこらへんは省けるけど、戦う人だけに絞っても相当数がいる。

 ヘスティアだって、兵士だけでも数千人規模いるわけだしね。

 それを全世界分やってたらいくら時間があっても足りない。

 でも、だからと言ってやめるわけにはいかないし、今日も地道にやっていくしかないね。


『アリスさん、よければ武器の供給もお願いできますか?』


「ああ、それもやらなきゃいけないの。武器はあるの?」


『すでにラズリー殿に頼んであります。私達の方でも配布はしていますが、人手は多い方がいいでしょう』


 カインの言葉に、そう言えばその問題もあったなと思い出す。

 いくらレベルが高くても、武器がなければ戦うことはできない。

 もちろん、中には【格闘術】とかの素手で戦う人もいるかもしれないけど、そんなのは少数派だろうし、武器は必要になるだろう。

 元から兵士とか冒険者の人だったら、自前の武器を持っているかもしれないけど、これだけ大規模な戦いになれば、武器の消耗は避けられない。

 であるなら、予備の武器を配布するのは何も間違ってはいないはず。

 ラズリーさんであれば、ミスリル武器を作ってくれているだろうし、これなら全体的な攻撃力も上がって、殲滅速度も上がるはずだ。

 俺はすぐさまラズリーさんの下へと向かう。ポータルをくぐると、目の前には武器や防具の山が築き上げられていた。


「あ、アリス様、いいところに来たでち」


「ラズリーさん、これまた随分と作ったの」


「世界の危機と聞きまちたからね。大盤振る舞いでち」


 ラズリーさんの鍛冶の腕は相当なものだ。

 もちろん、それは【ブラックスミス】という鍛冶師のクラスを持っているからと言うのはあるだろうが、レベル3と言う低さに対して、品質は相当高い。

 恐らくだけど、数をこなしてきたせいで、自然と技術が磨かれて行っているのではないだろうか?

 ただハンマーを振り下ろす動作をするだけのどこに技術を磨く余地があるのかは知らないけど、そうでもなければ説明がつかない。

 これでレベルが上がったら、どんな武器を作ってくれるんだろうか。


「そこにあるのは全部持っていっていいでち。もちろん、お代はいらないでちよ」


「感謝するの」


 俺はひとまず、そこにある武器の山を片っ端から回収していく。

 ほとんどは剣のようだけど、いくつか別の武器種も混ざっているから、愛武器が決まっている人でも多分大丈夫だろう。


「ひとまず、素材が尽きない限りは作り続けるつもりでち。使い潰してくれてもいいから、なるべく多くの人に渡してあげて欲しいでち」


「わかったの。でも、あんまり無理はしないでほしいの」


「今までさぼって来たんでちから、ここでくらいは仕事させてほしいでち」


 なんだかちょっと思いつめたような顔していた気もするけど、なぜだろうか。

 まあ、ここが無事な限り、武器の生産は止まらないことがわかったので、後は配りに行くだけである。

 俺はラズリーさんに礼を言い、再び世界各地へ飛んだ。


「嬢ちゃん、この武器は一体……」


「説明は後なの。とにかく、武器がない人はこれを使って戦ってほしいの」


 とりあえず、魔王が出現している地点を重点的にやっていくことにする。

 魔王自体の相手は、プレイヤーのみんながやってくれるとは思うけど、その間にも魔王の配下である魔物や魔族は攻めてくる。

 今のプレイヤーのレベルなら、魔王を相手にしつつ、それらに対処することもできるかもしれないが、どっちが簡単かと言われたらわかり切ったことだろう。

 だから、なるべく現地人で倒せる魔物は自分で倒してほしい。そうすれば、再び経験値が入って、さらに強くなってくれる。

 強くなってくれたら、今まで上げられていなかった攻撃系のスキルも与えることができるし、より一層盤石な体制になるだろう。

 まあ、その場合、一回教えてあげないといけないかもしれないけど……そこらへんはどうにかしてもらうしかないね。

 人々は、俺のような子供が持ってくるミスリル武器に目を白黒させていたが、非常事態だということもあって、とりあえず手に取ってくれた。

 中には、自分の武器を信じると言って取ってくれない人もいたが、まあそれくらいは問題ない。

 一応、そうやって余った武器は近くに置いてきたから、誰か必要な人がいたら使ってくれるだろう。

 さて、この調子で迎撃し続けられたらいいんだけど。

 感想ありがとうございます。

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