第五百七十八話:示された場所
謎は多いけど、こうして場所を示す内容が残されていたってことは、あの夢の人物は、この場所に向かってほしいんだろう。
それが何のためなのかはわからないけど、わざわざ夢に出てきてまで伝えてきたんだから、何か意味があるのに違いはない。
この内容の筆跡が、ファーラーのものと言うのが気になるけど……まあ、そうだとしても、こうして隠していたんだから、何かをそこに隠して、場所を忘れないようにメモしておいた、とも考えられるし、ワンチャンファーラーにとって見つかってほしくないものと言う可能性もなくはない。
もちろん、罠の可能性もあるっちゃあるけど、今は一つでも情報が欲しい。特にファーラーに関しては、謎が増えてきたし。
そういうわけで、そのメモを基に、その場所に向かってみることにした。
「クーリャ、この降臨の地って、どこだかわかるの?」
「それは私達神が地上に降りる際の場所ですね。その気になれば、どこへだって降りられますけど、特に設定しない場合はそこに降りることになります」
「なるほど」
最初に書かれている、この場所についてがよくわからなかったけど、神様に関わる場所と言うなら納得である。
そして、その影響で、これを書いたのが間違いなく神様関連の何かだということが確定した。
クーリャが言うには、これはファーラーの筆跡らしいんだけど、どうにもよくわからない。
ファーラーが書いたってだけなら、さっきも言ったように隠し場所のメモ、って可能性もなくはないけど、だったらそれを示してきた夢の人物は誰なのか。
ファーラー本人でないとするなら、ファーラーに付き従っている別の神様ってことになりそうだけど、裏切ったってことなのかな?
で、悟られないようにそっと伝えてきたとか。
それならありえなくはなさそうだけど……信憑性が薄いよな。
やっぱり、まずはその隠された何かを見つけないことには始まらないかもしれない。
「なら、まずはそこに向かうの」
一度地上へと戻り、クーリャを伴って、まずは最初の地点へと向かう。
降臨の地と呼ばれる場所は、どうやら山奥にある、開かれた場所のようだ。
基本的に、神様の降臨は誰かに見られてはならないようで、だからこそこうして山奥が選ばれているらしい。
まあ、ばれちゃいけない割には演出を考えるとかよくわからないことしてる気もするけど、多分そこまで重要なことではないんだろう。
幸いにも、それがあるのはこの大陸だったようなので、移動に関しては最小限で済んだ。
スキルを付与しに行っていた関係で、世界各地にポータルが繋がっているからね。クーリャの浮遊もあるし、そこまで苦ではない。
「おおー……」
降臨の地を訪れると、なんとなく、神聖な空気が流れているのがわかる。
どことなく、周囲の木々も元気だし、空気も澄んでいるように感じる。
恐らくだけど、神様の魔力が影響しているとかじゃないだろうか。
神様の近くは、常に浄化されていそうだし、依り代に降りる直前なら、そう言った力がふりまかれていてもおかしくはない。
ちょっと近寄りがたい雰囲気ではあるけど、まあ、別にそこまで気にすることじゃないか。
「えーと、ここから東に進めばいいの?」
メモの内容は、すべて書き写してある。
それを基に、最終地点を目指すことにした。
基本的に、方角しか書かれていないから、どれくらい進んだかどうかは勘に頼るしかない。
一応、クーリャはそれなりに距離感覚があるのか、ある程度の目印さえあればなんとなくはわかるようだけど、これがなかったらいちいち距離を測りながら進むことになっていた。
「日が暮れて来そうなの」
しばらくメモを頼りに進んでいったが、かなりの距離があるようで、気が付けば日が暮れ始めていた。
みんなが頑張っている中、あんまり時間をかけたくはないんだけど、これは調べておかないといけない気がするし、早めに見つかってくれると嬉しいんだけど。
「どうします? いったん戻ります?」
「うーん、多分、距離的にあと少しだし、ここはごり押すの」
すでに徹夜しまくったせいで倒れてしまった前科があるので、あんまり夜更かしはしたくないんだけど、あと少しだし、せめて最終地点まで到達してから帰りたい。
そう思って進んでいくと、気が付けば霧が立ち込める沼地へとやってきていた。
「ここが、目的地なの?」
「メモを見る限りはそうですね」
あっちこっち動き回ったので、ここがどこなのかは正確には把握していないが、見るからにやばそうな場所である。
ちょっと鑑定で覗いてみただけでも、霧には毒が含まれているようで、【状態異常無効】がなければまともに歩くことは厳しそうだ。
沼に至ってはそれに加えて呪いが込められているようで、ちょっと触れるだけでも呪いに侵されてしまうような場所である。
出てくる魔物も、アンデッド系ばかりで、しかもそれなりに強い。
シナリオで出すとしたら、かなり終盤のレベルじゃないだろうか。
「こんな場所に何があるって言うの?」
「さあ……」
以前に行った、霊峰スタルと似たような何かを感じる。
あそこも、山頂には祭壇があったわけだし、ここにも超えた先にはそう言ったものがあるのかもしれないけど、雰囲気としてはミスマッチすぎる。
いやでも、霊峰スタルだって、出てくる魔物はスケルトンばかりだったし、そういう意味では繋がりがあるのかな?
とにかく、さっさと何が隠されているのかを見つけて帰ろう。いつまでもいたい場所じゃない。
「さて、ざっと調べてみたけど……」
霧に覆われた毒々しい沼地。一応ざっと見て回ってみたけど、これと言って気になるものは見つからなかった。
いや、まったくなかったわけではないか。
と言うのも、沼地のあちらこちらに、火のついてない灯篭のようなものがいくつか見受けられたのだ。
某緑の勇者のゲームなら、火をつければ何か起こるかもと思って、火をつけて見たりもしたが、ついた炎が青色だってこと以外は特に変化もなく、結局わからずじまいだった。
もしかしたら、その灯篭に何かしたら、気になるものが現れる可能性もなくはないけど、今のところどういう謎なのかがわかっていない。
まあ、ゲーム的に考えるなら、時間内にすべてに火をつけるだとか、つける順番があるだとか、そういうものかもしれないけど、今はもう夜だし、そこまでやっている時間がない。
どうせだったら今日中に謎を明らかにしておきたかったけど、ここはいったん戻った方がいいか。
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