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第五百五十八話:異空間からの脱出

 スキルの取得は無事にうまく行ったようだ。

 試しに、この世界の適当な場所にテレポートしてみようということでやってみた結果、確かに俺もクーリャもその場所にテレポートすることができた。

 本当にきちんと機能するのかどうか不安だったから、無事に使えるようで何よりだ。


「凄いですね。これなら確かにこの世界から抜け出せるかも?」


『コストは大丈夫そうですか?』


「こすと? ああ、魔力の消費なら大丈夫ですよ。これでも神なので!」


『まあ、それならいいんですけど』


 【マルチテレポート】だけど、ただ単に複数人で移動するだけでも、通常の【テレポート】とは比べ物にならないくらいのMPを消費することになる。

 だけど、コストが増える条件は他にもあって、それが距離の問題だ。

 距離が長ければ長いほど、その長さに応じて消費するMPは上がっていく。

 これは、【テレポート】にも同じような特性があったので、それを引き継いだ形なのだろう。

 これも変更しようと思えばできるのかもしれないけど、それだとおそらく自分しか覚えることができないという風になると思う。

 今現在、自分は魂だけの状態であり、キャラとして存在しているわけではないので、そもそもスキルを覚えられない。だから、その制限がついてしまうと、作っただけ無駄になってしまう。

 このスキルを今有効活用させるためには、クーリャが使える形にしないといけないわけで、そうなってくると、コストが重いという問題が突き刺さってくる。

 果たして、クーリャのMPってどのくらいなんだろうか?


『多分、現実世界に戻るためには、さっきとは比べ物にならないくらいの魔力を消費することになると思いますけど、それでも足りますか?』


「比べ物にならないというと、どのくらい?」


『うーん、正確な距離がわからないので何とも言えませんが、恐らく数百倍、数千倍はかかるかと』


 ここが現実世界と同じ物質界だというのなら、もう少し抑えられると思うけど、仮にも神様が作った異空間なわけだし、その壁を突破するだけでも膨大な距離が必要になるだろう。

 『スターダストファンタジー』では、簡単な指標として、コスト1で同じ町内を、コスト10で同じ国内を、コスト100で同じ大陸内を、と言う風に大雑把に決められている。

 では、この世界はどうかと言うと、まず世界が違う。

 『スターダストファンタジー』にも、人々が住む物質界、いわゆる地上の他にも、神界や幻獣界と言った、別世界が存在する。

 ここがそのどれに属するかはわからないけど、神が作った異空間だというなら、どれにも当てはまらない、あるいは、あっても神界と言うことになるだろう。

 大陸内を【テレポート】するだけでも通常の百倍かかるのに、世界が違うなんて言ったらいったいどれほどのコストがかかるのか、想像もできない。


「うーん、仮にさっきの数千倍? かかるとしたら、ちょっと難しいかも?」


『ですよね』


 一応、神であるという点を考えれば、膨大なMPを持っていてもおかしくはない。

 と言うか、さっきやった短距離の転移でも、最低でもレベル10は必要になるような代物である。

 それを使って置いて、全く問題ないと言っているのだから、実際MPは多いんだろう。

 本当なら、【無限の魔力】とか持っててくれたらよかったんだけど……いや、待てよ?


『クーリャ、ちょっとスキルを覗かせてもらってもいいですか?』


「私のスキルですか? 別に構いませんけど、何かするんですか?」


『ちょっと、気になることがありまして』


 クーリャに許可を貰い、キャラシを開く。

 流石、神様と言うだけあって、そのステータスはめちゃくちゃ高い。

 レベルは1になっているけど、ステータスを見れば、多分粛正の魔王と大差ないくらいの能力値になっていると思う。

 で、スキルだけど、案の定、大量のスキルが眠っていた。

 【状態異常無効】や【HP自動回復】など、とりあえず強敵ならつけとくか、って言うNPCスキルがごろごろしている。

 そして、その中には、【無限の魔力】の存在もあった。


『やっぱり』


 『スターダストファンタジー』においては、神様はデータが存在しない存在だった。

 言うなれば、誰も絶対に敵わない存在、と言う風に描かれていたのである。

 それが、この世界ではきちんとステータスが存在している。

 まあ、もしかしたら、この姿の時限定でステータスが存在する、と言う可能性もなくはないが、だとしても強い存在と言うことに変わりはない。

 そんな強い存在が、固有のスキルを持っているとはいえ、NPCスキルを全く覚えていないなんてことはありえないだろう。

 であるなら、一通り強いNPCスキルを持っていると思ったのだ。


『ただ、見てみる限り、これ全部オフになってる?』


 そのタイミングに宣言して発動するアクティブスキルはともかく、取得したら常時発動しているパッシブスキルは意図的にオンオフを切り替えることができる。

 例えば、皆取得している【手加減】のスキルは、攻撃しても相手のHPが必ず1は残るというスキルだけど、これがずっと発動していると、どんなに攻撃しても相手は死なないということになる。

 もちろん、それは処理上の話であって、現実となったこの世界なら出血で死亡、とか、ショックで死亡とかもあるかもしれないけど、まあ理論上はそうなる。

 だから、相手を苦しませず、一撃で倒したいってなった時には邪魔なスキルなわけだ。

 そんな時、このスキルをオフにすると、その効果が発動しなくなる。つまり、相手のHPを残すことなく、そのまま倒すことができるようになるわけだ。

 まあ、普通に冒険している限り、パッシブスキルを意図的にオフにするタイミングなんてそうそうないけど、なぜかクーリャのスキルは全部オフになっていた。

 封印されていたから? それとも、無意識にオフにしていた? よくわからないけど、これをオンにすれば、MPの問題はなくなる。

 【無限の魔力】はコストをゼロにするスキルだからね。


『クーリャ、スキルをオンにしてくれませんか?』


「? すきるを、おん?」


『使える状態にするってことです』


「んー? ……ああ、そういうこと。ちょっとうっかりしてましたね」


 そう言った瞬間、クーリャのスキルがすべてオンになった。

 もしかして、忘れてたのかな?

 確かに、力を奪われて、ここに閉じ込められて、三千年もの間何もできなかったんだから、使い方を忘れても仕方ない気はする。

 素のMPも多いから何とかなっていたけど、抑えられるならとことん抑えた方がいいよね。


「なるほどなるほど。いや、忘れてました」


『オフにしたまま忘れてたんですか?』


「そこまで使う機会がないですからね。地上に降りる時も、こちらの方が怪しまれませんし」


『それで本来の力を使えなかったら本末転倒ですよ』


 今まではそれで何とかなっていたのかもしれないが、今は緊急事態である。

 一刻も早く、現実世界に戻らなければならないのだ。


「さて、これなら魔力問題は関係ないですよね?」


『はい。さっさと転移しちゃいましょう』


「わかりました! では、【マルチテレポート】!」


 クーリャがスキルを発動させた瞬間、目の前の景色が一変する。

 さて、無事に現実世界に戻れただろうか?

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 首を跳ねられる直前だったりするのかなぁ
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